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合田玲英のフィールド・ノートVol.76 《 ゴウダレイの注目ワイン! 》

【ラ・ルネッサンス・デ・アペラシオンの伝えたいこと】

 毎年2月の第一週末にロワール県の街アンジェで、ワイン生産者たちの組織《ラ・ルネッサンス・デ・アペラシオン》(以下ルネッサンス)グループによる、試飲会(サロン・サン・ジャン)が開かれている。サロン・サン・ジャンに加えて、毎年1度はフランス国外でも同じコンセプトのもとに試飲会が開かれ、東京でも今回で第3回の催しとなる。
 ラシーヌと取引のある生産者では、【ドメーヌ・ランドロン】、【ラ・フェルム・ド・ラ・サンソニエール】、【シャンパーニュ・フルーリー】が来日し、【ガイヤーホフ】はワインのみの出展となった。

 2月のロワールでは、少なくとも5つの団体が試飲会を開いているが、ルネッサンスが他と違うのは、
 ビオロジックまたはビオディナミック栽培を実践し、かつ認証を取得(ラベルへの表記は問わない)しているという点だろう。グループへ加入したい生産者は、まず認証を受けていることを証明し、その後ルネッサンス設立当初からの主要メンバー10生産者による官能検査をパスしなければならない。官能検査の審査方法は、加入申請した新規生産者と既存の生産者の、すべてのワインを併せて並べた、ブラインドテイスティングによる。だから、毎年、入る人もいれば、出ていく人もいる。

 繰り返し生産者たちが話していたことは、認証を取得することの大切さだ。ナチュラルワインの造り手とみなされていても、実際には、畑でビオロジック栽培では認可されていない農薬を散布し、醸造だけナチュラルっぽいワイン造りをしている造り手が、あまりにも多い。この事実に消費者が気づいていない状況に、ワイン生産地で生活をする彼らは危機感を抱いているのだ。

 今回の来日期間中、一週間一緒に行動をした生産者たちから、たくさんの話を聞いた。ナチュラルワインの定義の無いことや、ビオ認証の実際。ビオ認証を取らない造り手の言い分と、その言い分への反論。彼らルネッサンスグループの生産者が望む、インポーターや最終消費者の臨むべき態度など…。
次号以降のエッセイで少しずつ紹介したい。

 

ラ・フェルム・ド・ラ・サンソニエール

 マルク・アンジェリは今回で4回目の来日だが、息子のマルシャルは初来日。2018年から本格的にサンソニエールのワイン造りを継ぐべく働いているが、マルシャルが“家業の手伝い以上”の意味で、サンソニエールで働き始めたのは2014年ころから。しかし考えた末、ワイン造りを継がないことに決め、2016年にワイナリーを出た。父親のマルクは、自分自身の引退も視野に入れていたので、息子が継がないのならば、とサンソニエールでマルクの右腕となり、働いてくれる人物を探した。そこで、旧知の仲であるブルーノ・チョフィの名前が挙がった。ブルーノは、アルザスのピエール・フリックで10年以上のワイン造りの経験を積み、ジュラのドメーヌ・ド・ラ・パントで栽培、醸造責任者を6年間務めた。フリックとパントはともに久しくルネッサンスに名を連ねる、マルクにとっては信用のおけるワイナリーであり、ブルーノが個人的な理由(パートナーはニコラ・ジョリーの娘のヴィルジニー)のためロワールへの移住が決まっていたことからも、適任だった。
 2016年VTと、続く2017年VTは、マルクとブルーノの二人の体制で、ワイン造りをしていたが、2017年の年末にマルシャルが、サンソニエールへと戻ってきた。2018年に訪問した時のことをよく覚えているが、マルクも奥さんのクリスティンも口には出さずとも嬉しく思っている様子が、ありありと伝わってきた。マルシャルは、ちょうどルネッサンスの東京試飲会の当日が28歳の誕生日だったのだが、やはり家業を継ぐかどうかを決めるためには、一度家を出る必要があったのだろう。その辺はまた、今度じっくり聞いてみたいところだ。
 マルシャルは来日中に行った囲む会やセミナーでも、積極的にドメーヌやルネッサンスの考えを伝えていたが、父親のマルクとは異なる切り口の意見も自分の言葉で語ってくれた。
 ブルーノは彼自身のプロジェクトとして『ベレ・エ・コンパニ』という会社を設立し、地域のビオの造り手の栽培・醸造から販売までのコンサルタント業により力を入れて活動しており、現在は彼自身のアンジェのワインも造っている。

 ワインのエチケットを見ると、瓶詰め(Mis en bouteille)時点でのワイン製造者名が分かる。サンソニエールの場合は、各キュヴェ2VTほど、マルシャルの名前がぬけていたが、現在は“Mark & Martial Angeli et Bruno Ciofi”となっている。
 「今は、マルシャルが戻ってドメーヌを継ぐということを決め、ブルーノは週の半分だけサンソニエールで働いている。それでも、ブルーノがサンソニエールにとって大事なメンバーであることは確かだ。」とマルクは話す。

 

 

《 2019年12月販売開始ワイン pick up!! 》

ドメーヌ・モレル

 

 若くして、父親からポリニー村のワイナリーを継いだヴァランタン。アルザスでの醸造学校時代に、同級生の「ノー・コントロールのヴァンサン・マリー」に、ワイナリー巡りをつき合わされたおかげで、ずいぶんワイン造りの嗜好が変わってしまったと、話す。“les pieds sur terre”「大地に根差して」または「地に足をつけて」とも訳せる言葉をモットーに、ワインを造っている。今回の入荷の2018年VTは本当に久々に、質・量ともに良い年だったと、ヴァランタンは満足げに話していた。
 去年リリースされた、《Les Trouillots Semaine 16》は「2017年の第16週にLes Trouillotsの畑を襲った遅霜」の被害をかろうじて免れた、少量の赤をブレンドして造られたが、2018年VTはプールサール、トゥルソー、ピノ・ノワールの3品種とも、単一品種でリリースされた。プールサールについては、マセレーションなしのアルビノもリリースされる。2014年という、日照時間が少なくて、赤が作れるほどしっかりとプールサールが熟さなかったVTに、苦肉の策として造られたアルビノだが、2018年VTは成熟したプールサールを使い実験的に、造ってみた。

 

~プロフィール~


合田 玲英(ごうだ れい) 1986年生まれ。東京都出身。
2009 年~2012 年:ドメーヌ・レオン・バラル(フランス/ラングドック) で研修 
2012 年~2013 年:ドメーヌ・スクラヴォス(ギリシャ/ケファロニア島) で研修
2013 年~2016 年:イタリア/トリノ在住
2017 年~:日本在住


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