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『ラシーヌ便り』no. 126

公開日: : 最終更新日:2016/05/31 定番エッセイ, 合田 泰子のラシーヌ便り, ライブラリー

no.126

 4月14日と16日、熊本を中心に大地震がおこりました。激しい揺れが、10日以上も続いています。不安と困難がつづく被災地の方々、親しい方を失われた方々の悲しみは、はかりしれません。震災の収束と沈静化を心よりお祈りいたします。

La Porta di Vertine とのお別れ 
 とても残念なお知らせです。ラ・ポルタ・ディ・ヴェルティーネが経営破綻しました。アメリカ人オーナー夫妻の会社が倒産したため、2014年ごろからカンティーナは存続の道をさがしていたのですが、それが実ることなく、ついに終わりの時を迎えました。2006年創業し、最初の2年間に晩年の「天与の味覚をもつ偉大なエノロゴ」ジューリオ・ガンベッリの指導を受け、醸造責任者ジャコモ・マストレッタのおおらかな人柄と賢明なワイン造りの結果、キャンティ・クラッシコにおける一つの「理想というべき味わい」が誕生しました。
 セルジオ・マネッティ亡きあと、往時の(最盛期の)モンテヴェルティーネを懐かしむ、優雅で奥深い味わいのサンジョヴェーゼ・ファンにとって、寂しい思いの虚ろな中に突然現れた、「親しさと高貴さをあわせもった友」なのでした。私たちは狂喜し、感激の思いを日本のワイン・ファンに伝え、かくしてラ・ポルタ・ディ・ヴェルティーネは日本でも瞬く間にたくさんのファンと理解者を得ることができたのです。

ロゴ
 ラベルの文字は、ジューリオ・ガンベッリが手書きした貴重なサインです。このラベルが無くなってしまうこと自体が悲しくて、何とか別のオーナーによって、この名前とともにジャコモが醸造するワインが残る方法はないかと、私たちも世界中の熱心なファンも望みました。実際、資金力のあるファンの何人かは、カンティーナ経営の引き継ぎを申し出たのですが、様々な思惑が交錯するなかで管財人の認めるところとならず、ついに最期を迎えてしまいました。
 キャンティ・クラッシコのプロフェショナルの世界では、標高が高くて昼夜の寒暖差が大きい恵まれた環境、石灰岩(shale 頁岩)がひしめく地は、何としても手に入れたい宝物のような畑でした。土壌からミネラルに富んだ味わいが生まれ、味わいの底にある冷涼感、瑞々しく心地よい酸、これぞサンジョヴェーゼと叫びたくなる味わいが、口中に美しく広がりました。
 今となれば、2006年にこのカンティーナが、これほどまでに恵まれた畑で、ジャコモとジューリオ・ガンベッリ、農学者のルッジェーロ・マッツィーリ博士の黄金チームで出発したことが、未曽有の奇跡的な事件だったのですね。私たちが、理想とも思ったキャンティ・クラッシコは、短い命を閉じてしまいました。でも我らがジャコモは健在なので、新たなサンジョヴェーゼの畑を、ジャコモという素敵な魔術師が目覚めさせてくれるのを、待ち望んでいます。短い間ながらラ・ポルタ・ディ・ヴェルティーネを愛してくださった方々に、ジャコモと私たちはともに、心からお礼申し上げます。

Goodbye
from La Porta di Vertine  Ver. 1.0 –  established 2006
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ジャコモ・マストレッタの近況

 A big hug and a heartfelt thank you to all of our customers, collaborators, friends and all of those who have followed, supported, inspired, criticized and loved us, those who believed in us and helped contribute to the success of La Porta di Vertine.  …..  We did our best and we are very proud of our efforts. 

ジャコモからは、このようなメッセージが届きました。彼らが、この10年どれほど素晴らしい仕事をしてきたかと、あらためて、出会いから今日までのできごとを思い起こしました。
 ジャコモと今回のヴィニタリーの期間中に食事をしながら、今後の計画、ジャコモのサンジョヴェーゼ論、キャンティ・クラシコの最近の動向を聞きました。「ラ・ポルタ・ディ・ヴェルティーネが無くなってしまうことは、本当に残念だ。だけれど、精一杯つくして、世界中の素晴らしいインポーターや、ソムリエたちと知り合うことができた。素晴らしい時間だった。」少し、さびしそうでしたが、変わらず前向きで楽天的な様子に、安心しました。ジャコモの可能性を信じ、次のステップを楽しみに待ちましょう。

 
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