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社員リレー・エッセイ 田熊 大樹 (開発部)

「冬の空を遠回り」

 はじめまして、開発部の田熊です。
 2022年より本格的にラシーヌの一員になりました。私がやや特殊な点は、フランス常駐員という事でしょう。
 大学で写真を学んだ私は、2009年に渡仏。以来、その地でフリーランスのフォトグラファーを生業にしてまいりました。友人にも恵まれ、渡仏初年度からブルゴーニュの葡萄収穫に誘われ、季節労働をこれまで堪能してきました。幸運な事に2009年のコート・ドールは良年でしたので、お世話になったドメーヌでは連日古いマグナムボトルを気前良く空けてくれました。 
 渡仏した時は、ブルゴーニュ型・ボルドー型という瓶の形状の違いも知らない程のワイン素人だったので、その時に何を飲んだのやら皆目検討がつきませんでした。が、1週間あまりの貴重な経験がワインを味わう為の下準備になった事はたしかです。この収穫をきっかけに、ワインが撮影のテーマのひとつになり、食事への関心もより強くなりました。 
 当時、パリに住んでいた私は友人の紹介でラシーヌと出会い、年に数回、写真撮影の仕事に携わりました。時には出張に同行して畑を歩くだけでなく、一緒にテイスティングさせてもらい、生産者の話に耳を傾けていました。味わう行為にいやおうなく集中した結果、知らず知らずのうちにワインテイスティングのトレーニングになっていた事は、われながら驚きです。
 本来ですと、同行中のテイスティングは程々にして、本業の撮影を続けないといけないのでしょうが、非常に苦しい(楽しい?)決断でしたが、素晴らしいワインを目の前にしては撮影行為など小さなものでした。
 現在はパリからブルゴーニュ地方はボーヌへと引っ越し、ワイン造りの現場に身を置きながら、生産者やワインに関わる方たちの間近で新しい動きに接している日々です。もちろん、ブルゴーニュだけではなく他の生産地の動きにも関心を怠りません。こういった身近な現地情報を社内外の方々とも出来るだけ共有し、口幅ったいながらラシーヌに新鮮な魅力を加えていきたいと思っております。

 初めて寄稿する社員リレー・エッセイ、何が相応しいかと考えましたが、とても良い題材を飛行機が提供してくれました。 
 多くの人が、いつかオーロラを観てみたいと願っているかと思います。私もそんな一人です。それが航空機内で突然叶ってしまいました。高高度からの眺めの為か、カーテンの様な形状は少なかったのですが、オーロラを観られた喜びは大きく、カシオペア座とオーロラが一緒に見える。あぁ、なんて美しい空なのだろうか、やっぱりパイロットになりたかった・・・・・・なんて子供の頃の夢を思い出しました。

撮影 2022年12月30日 アラスカ上空 jal045便から

 たった10キロメートル夜空に上がると、本当はまだまだ遠いのに宇宙を近くに感じるのは驚きです。窓の外のオーロラを眺めながら、いま何を飲みたいか?と自問。 
 当然脳内では、午前0時の夜間飛行 ”ジェット・ストリーム”のオープニングが繰り返し再生されています。「*きらめく星座の物語も聞こえてくる、夜のしじまの、なんと饒舌な事でしょうか」の名フレーズも思い出されます。 *堀内茂雄 作 ナレーション一部を抜粋 
 撮影時は飛行機内でしたのでエビスビールをお願いしましたが、やはり気分はビールではない。これが地上の寒い屋外であれば何を飲むのだろうかと想像をしましたが、結論は出ずじまい。もっとも屋外はワインも凍るほど寒い日もあるでしょうし、蒸留酒一択になるかもしれません。それとも、神秘さが強くて何も飲めないなんて事もあるかもしれませんね。 
 来年にはオーロラを観に何処か旅をしてみたいと思いました。その時は三脚とカメラ、赤白ワインとウィスキー、準備万端で鑑賞しよう。
 以前よりも時間が掛かる日本-フランス間ですが、変則空路も悪くない。そう思わせてくれる旅路でありました。

 
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