*

『ラシーヌ便り』no. 184 「ヴェット・エ・ソルベ/ ベルトラン・ゴトローからの手紙」

 週末にはじめて函館を訪ねました。海岸を歩きながら、フランス・ノルマンディー地方Honfleur オンフルールの街に泊まって、ルアーヴルのドックで開かれたDive Bouteille ディーヴ・ブテイユの試飲会を訪れた時のことを思い出しました。2月初旬で風が強く、飛ばされそうになりながら、造り手たちと一群となって歩きました。
 オンフルールは、エリック・サティが生まれ、印象派の舞台になった、美しい街です。
 ディーヴ・ブテイユの前夜祭の食事会がオンフルールで開かれ、造り手が持ち寄った互いのワインを深夜まで楽しみました。このような私たちワイン人の日常は、パンデミックのせいでこの一年、まったく途切れてしまったことが悔やまれます。 





 海外に出ることも、国内移動も少なくなり、行動だけでなく心の働きもいつの間にか制約を受けていたのでしょう。函館は、人々の優しく美しい心をひとしお感じる街でした。コロナが強いてきた緊張のせいで、心の伸びやかさやしなやかさがどうやら損なわれていたらしいことに、この街を訪れて気づきました。つくづく旅を重ねてきたわが人生だったことに思いあたりました。函館というユニークな食材の宝庫のなかで、ワインの経験を重ねてきた方々とゆったりと流れる時間を楽しみました。心の静養ができました。函館の皆さま、ありがとうございました。 

ヴェット・エ・ソルベ / ベルトラン・ゴトローからの手紙】
ーーーーーーー
 「昨年は大変な1年でしたが、私の暮らす小さな村では、穏やかに日々が過ぎていきました。確かに、試飲の機会もなく、レストランで食事をすることも、お祝い事、催などがなく賑わいには欠けましたが、田舎での生活を200%満喫することが出来ました。

 2020年は忘れられない年になることでしょう。記録的な気温は今起きている気候変動を決定づけるものです。私たちはすでに畑仕事において、さまざまな調整を試みてきました。今回は≪(ブドウを育てる)環境を考慮≫しなければならず、あらゆる決断が必要でした。私たちはすでに畑の周りに木や低木を植え替え、実践している農法のお陰で地中の炭素を増やしてきました。剪定や収穫の日を変え、ブドウ樹の葉の扱い方に関する技術を改善するなど、さまざまな試みをしましたが、それだけでなく、娘のエロイーズと共に実行していかなければならないことがまだまだ沢山あります。

 ささやかではありますが、2020年はドキュメンタリー映画『Le champagne à rendez-vous avec la lune』が配給開始となったことは嬉しい驚きです。映画館での上映は延期になりましたので、よろしければネットの動画配信サイトVimeoで予告編をご覧になってください。

 52分間の本編の視聴はもうしばらくお待ちください。この素晴らしいドキュメンタリーは、90%がヴェット・エ・ソルベで撮影されたのですが、世界中のいくつかの映画祭にノミネートされています。皆さんプロモーションをお願いしますね! (注: ラシーヌではスタッフの井原摩耶が翻訳と字幕の作成にあたりました。公開方法については、フランスの制作陣と相談中です。)

 2020年は、4月初頭から8月に収穫を開始するまで(また収穫は8月に始まりました!)、あっという間でした。10日間、畑で40℃以上が続いた2度目の熱波来襲までは、特に不測の事態には見舞われませんでした。収穫は豊作になると予測され、ブドウの酸も適切な度数を保ち(22年間のビオディナミ栽培の成果でしょうか?)、その糖度は急激に上がりました。8月19日に収穫が始まり、9月14日に終了するまで、各丘陵ごとに最もよいタイミングを探ったため、4度中断しました。
 家族は皆元気であることを、皆さんにお伝えせねばなりませんね。レオ・ポールは収穫に精を出し、マルタンはプレス、エロイーズはコンロの前に立ち、収穫祭名物の「アリゴ」(マッシュポテトとチーズをねった料理)をどっさり作る。エレーヌとその姉妹たちは料理を各自担当し、ベルトランはお昼寝! といった具合だね。
 果汁は非常に味わい豊かで、ワインの仕上がりが速いので、ビン詰を1か月早めました。 

今年は、木箱入りのコフレ « In Finé » がリリースされます。 

 2009年にティラージュした『アンフィネ』は、木箱入りの2本組ワインセットです。ともにフードルで仕込んだピノ・ノワールとシャルドネから造られ、2005年から2007年のヴィンテッジをブレンドしたもので、ビアウヌの区画で採れたブドウを使っています。この区画のブドウについては、畑でも醸造所でも未だかつて化学薬品を一切使用していません。
「今回のこの試み(の趣旨、結果など)は、2本を同時に味わうことで明らかになります。キンメリジャン土壌とピノ・ノワール、キンメリジャン土壌とシャルドネ、この2組の(ブドウと土壌の)真の関係性を発見することになるでしょう。
 20年来、ビオディナミを実践していると、結果として表れ出た特徴があります。コート・デ・バールのワインは、強い酸に支えられた塩気を帯びたニュアンスがあります。ピノ・ノワールを密植すると、そのイメージに反して味わいには広がりが生まれ、骨格のあるシャンパーニュとなりうるのです。この2本のシャンパーニュは、その事実をはっきりと示してくれていることを確信しました。」
ーーーーーーーー

 このほど無事に到着したベルトランの貴重なワインについては、熟成年月など造り手が内心望んでいるような最上のリリース法をしたいと思います。


 
PAGE TOP ↑