合田玲英のフィールド・ノートVol.78 《 ゴウダレイの注目ワイン! 》
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《 イ・クストーディ:新規取り扱い生産者 》
エトナ山から、新たな生産者のご紹介です。【イ・クストーディ】は2007年に設立されたワイナリーで、オーナーのマリオ・パオルーツィは、サルヴォ・フォーティとは20年来の親交があり、サルヴォにワイン造りを一任した。去年末日本で開催されたスローワインの試飲会には、【イ・クストーディ】からマッシモ・ルッフィーノが来日。上記試飲会のほかにとりたててイベントは行わなかったが、日本滞在中に面白い話を聞かせてくれた。エトナ山の南の町、ラグーザ出身のマッシモは、ワイン造りにはかかわってこなかったが、1980年代から、ノート市にある名店カフェ・シチリアで働き、その後は地元の食材にこだわったレストランを経営し、シチリア東部の食文化にどっぷりと浸りながら生きてきた。“最初のうちワインはよく分からなかったが、レストランの評判が高まるにつれ、いろいろなワインが集まるようになり、いつのまにかネレッロ・マスカレーゼの虜になっていたが、サルヴォとそのワインに出会った時は衝撃をうけた”と、マッシモ。ワイン生産者以外の目線から見た、カステッラーダやコーネリッセンがワインを造り始めた頃のエピソードなど、なかなか聞けない話ばかりであった。
エトナワインへの世界的な需要の高まりに伴って、年々大企業型ワイナリーの参入が加速しているだけでなく、これまでの地元の活動をないがしろにするような動きも目立つ。小規模生産者を無視し、大ワイナリーの需要に合わせるかのような、ワイン法の改正。また、耕作地を増やすためのDOCエリアの拡大や、高額な近代的な設備の整ったワイナリーでないと醸造所として認可されにくい仕組みなど、きりがない。にもかかわらず、サルヴォやマリオたちのように、エトナの伝統を踏まえた着実なワイン造りをしてくれる生産者がいることは有り難いので、応援し続けたいと思う。
※ワイナリー詳細については、今月号の合田泰子のラシーヌ便りをご覧ください!
《 2月新着アイテムPick Up 》
【プリンチピアーノ・フェルディナンド】
イタリア/ピエモンテ/モンフォルテ・ダルバ
フェルディナンドのワイン造りは、ビオロジック栽培に転換した2004年以降、畑とセラー、規模やキュヴェ数など、毎年少しずつ変化している。数年前の、ボルドー瓶からブルゴーニュ瓶への転換も、視覚的にかなり大きな変化だったが、今VTからはエチケットも激変する。バローロで昔からワインのエチケットとして、しばしば使われてきたフォントと、ポップな色遣いのエチケットに一新した。デザイナーのジャンルーカ・カンニーツォは、イギリスのナチュラルワイン・インポーター「カーヴ・ド・ピレン」のHPや、イタリアのワイナリーのエチケットなどで注目された人物。
ワインの味わいもさらに進化を遂げ、フェルディナンドの考える“体に負担を感じさせない“ワインへと更に練られている。過度の果実の成熟はさせず、完全発酵させたワインの味わいは、大げさでなく、落ち着いている。フェルディナンドは、いろいろな品種でワインを造っているが、ネッビオーロを飲むたびに、この人はやはりネッビオーロの造り手だなあと思う。同地域のどの生産者とも違う、テクスチャーとキャラクターなのだが、確かにネッビオーロが香るのだ。
~プロフィール~
合田 玲英(ごうだ れい) 1986年生まれ。東京都出身。
2009 年~2012 年:ドメーヌ・レオン・バラル(フランス/ラングドック) で研修
2012 年~2013 年:ドメーヌ・スクラヴォス(ギリシャ/ケファロニア島) で研修
2013 年~2016 年:イタリア/トリノ在住
2017 年~:日本在住