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社員リレー・エッセイ 17 齊藤 誠也(営業部)

「ぶどうの気持ち」

 皆さま初めまして。6月に入社した、齊藤 誠也(モトナリ)と申します。
 営業部に配属となりましたので、これまでソムリエとして培った経験をふまえて、できるだけ早く皆さまのお役に立てるよう精進してまいります。
 さて、今回早くもラシーヌ便りのバトンがまわってきましたので、一つエピソードを紹介しながら自己紹介をさせていただきます。
  “ワインと旅”というテーマで、人生のしばらくの間を無我夢中で生きた時期があり、どでかいリュック一つでワイン産地を転々としていました。
 その中で、「最もぶどうの気持ちを理解しようとした1日」をお話したいと思います。
 5年前程、私はパリに住んでいました。8月に手に入れた2週間のバカンスを利用して、初めて一人でボルドーへ行ったときのことです。
 ボルドー駅(サン・ジャン)についたその日が、巡礼の旅の始まりです。4日という短期間でボルドーを知るには、休んでる暇はありません。あらゆる手段で生産者へ訪問のアポイントメントをとって、胸に期待をふくらませシャトーを目指して突き進むわけです。
 もちろん全てが限られていますので、交通費も極力削ります。バスでボルドー市からマルゴー村の生産者のもとへ訪れ、そのあと空いた時間の移動は全て徒歩です。次の約束は、サン・ジュリアンのCH.ラグランジュ。3時間程度歩くことに全くの抵抗はありません。そして同日最後のアポイントメントは、ポイヤックのCH.ポンテ・カネ。ちょうど彼らがアンフォーラを使い始めた直後で、美しい土器があたり一面を埋めていたことを覚えています。
 そうこうしているうちに、気がつけば夕刻。ボルドー市に帰り宿を取ろうかと、交通手段を探したのですが、なんとまあ、バスも列車も18時を過ぎるとほとんどない。ポイヤックの村で宿を探すんですが、夏の観光シーズンで空き部屋も少なく・・というか宿が非常に少なく、見つけたところでも150ユーロと望外に高い値段で借りられる部屋しかありません。
 ジロンド川の河原でフランスパンをほう張りながら、今晩のなりゆきの熟考を迫られました。
 そうですね。答えは一つしかない。野宿です。
 そして物事はなんでもポジティブに捉えたがる性分ゆえ、その時の言い訳としては、“ぶどうの気持ちが一番わかるやん”。
 でも、我ながら甘すぎました。
 真夏で明るいですし、野外でも夕刻はそこそこ暖かい。シャトーでは宴が行われており、賑やかで寂しさはありません。9時頃まで待って、とりあえず持っていたジャンパーを敷いて畑の真ん中、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルローに挟まれながら寝床を作ったものですが、やはり考えが甘かった。
 1時間毎に目が覚める、眠れない…それはよそ者に対する虫たちの強襲や野犬の遠吠え、時間とともになんだろう。野犬の遠吠えが威嚇のワンになり、近づいてくる。畑でガサゴソ、何かがいるんだろう。しかし、私には関係がない。耐え忍び、数十分。次に、ひと時の睡眠を遮るものは、…寒さだった。
 8月のボルドーって暖かいイメージはあるんですが、夜は違います、2013年8月某日、最高気温は29-30℃、最低気温は15℃。朝の3時まで耐えましたが、最後は眠ることを諦めました。
 少しばかりブドウの気持ちを共感できたことに、感謝するしかありません。
 以上に書き連ねたようなとぼけたストーリーから、私の人間性(キャラクター)をくみとって頂ければ幸いです。
 まだまだ不慣れではありますが、情熱を持ってワインをオススメしがてら、“旅のススメ”をも伝導して参りたいと思っておりますので、ご鞭撻のほどをお願いもうしあげます。

※写真は一夜の思い出の場所、Ch. Lynch Bagesの畑のクロスです。


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