*

『ラシーヌ便り』no. 132

 10月29日から、フランスに来ています。
今日、10月31日は、アルザスのピエール・フリックとブルーノ・シュレールを訪問します。
セップ・ムスターさんの来日に続いての出張で書く時間がなく、今月のラシーヌ便りは、お許しいただいて、
スタッフが苦労して訳しましたジェローム・プレヴォーからの手紙をご紹介させていただきます。

 

Jerome Prevostからのメッセージ
翻訳 by 仕入部 高橋・馬場/ 監訳塚原 正章

image002

Jour de pluie Printemps/Eté 2016 Les Béguines
春の雨の日/レ・べギーヌ2016年夏

やれやれ、もう終わったけれども。
今年の栽培は苦痛そのもので、息つく暇もなかった。
春は、霜のストレス。1週間ものあいだ0.1℃ が続く。
毎朝私は神経がいらつき、ひたすら植物の生育の成り行きを思い悩むばかり。
雨量は通常の2~3倍もあり、常よりもブドウの葉の表面湿度を高める。
4月14日以降は、ベト病の猛攻を避けられず、その卵菌(胞子)は増えまくる。
片時も目が離せられない。(居ても立っても居られない)
自分に問う。
良かれと思う選択をする。
出来るかぎり土壌に働きかけ、雑草との闘いに勝つ。
機械が壊れないでくれと願い、いっそうの注意をこめて扱う。
だが、やんぬるかな。トラクターの使用はあきらめた。
全霊でわが身を投じる。仕事道具を背にして、ブドウ畑に踏み入る。
悪戦苦闘し、くるぶしまで泥沼に浸かる。
ふだんより長い時間を費やした。
月曜日も日曜日も、あるものか。年がら年中、ブドウの樹に仕える。
ブドウ樹のために生き、ブドウ樹から命を享ける。
天気予報なんか、クソクラエ!
硫黄スプレー・タンクの皮ひもを肩に食い込ませながら、その重みに耐える。
硫黄の粉末が風向きを変えて襲いかかり、目を痛みが襲う。
が、ブドウを守る作業を終えて、ひと満足。
快晴の望みはアワと消え、またしても待つを繰り返すうち、月日は無駄に経つばかり。
いまいましさのあまり、笑いかえってしまう(フィガロじゃないが、不条理ゆえに笑いそう、だ)。
畑の端っこで同業のヴィニュロンと語り、共通の「天」敵に立ち向かう気力をとり戻す。
不安を吹き飛ばせ。

7月は束の間の休息で、ほっと一息。
収穫2ヵ月前、まだ青いブドウ果にカビが生えた。
とどめの一撃か。
前代未聞のできごとだ。
毎日が驚きの連続。
もう、なるようになれ、さ。
その後は?
その後は8月で、状況は一転。輝かしい日光と心地よい気温がとり戻され、日に日を継いで、根気よく、頑固に続き、8月を覆って9月中を浸した。
ブドウの房は、地中の水分と強い陽射しを二つながら享受。成熟のさなかのごく早期に、信じられないほど素晴らしい色合い帯びる。
とどのつまり、糖度が上がり、2003年を上回った。
2016年は、かくも困難な年だったからでなく、客観的にみて最上ではないにしても、私のこれまでの収穫で最上の一つとなるだろう。
何年かたって、Les Beguines 2016を味わった時に、間違いなく、この年がひどい作柄であったかなどとは、思いもしないだろう。しかし、悪天候にみまわれた成育の跡は、ワインの中に紛れもなくきざまれているのです。

 

Pinots Gris, Pinots Meuniers, Petits Mesliers   vendanges 2016 Les Béguines

image003

C’est entendu.
L’année viticole fût à la peine.
Sans répit.
Au printemps l’angoisse du gel-plus d’une semaine à 0,1 °Celsius- qui vous propulse d’emblée chaque matin les nerfs à vif dans le cycle végétatif.
Des trombes d’eau (2 à 3 fois la normale) provoquant des taux d’humectation des feuilles de vignes de plusieurs jours !
Des attaques de mildiou virulentes, inévitables avec des œufs murs depuis le 14 avril.
Se mobiliser à chaque instant.
Se questionner.
Faire les bons choix.
Travailler les sols dés qu’on le peut. Gagner la bataille de l’herbe.
Espérer ne pas casser les machines. Redoubler d’attention.
Abandonner le tracteur.
S’engager physiquement. Rentrer à dos dans les vignes.
Etre à la peine les chevilles enfoncées dans la terre.
Donner plus de temps.
Ni lundi, ni dimanche : omniprésence pour la plante.
On ne vit que pour/par elle.
Pester contre les prévisions météo.

Supporter la charge à dos  des bouillies, les épaules coupées par les satanées lanières de l’engin.
Les brûlures du souffre d’un retour de vent dans les yeux.
Etre heureux du travail protecteur accompli.
Espérer le retour du beau temps qui ne vient finalement pas et recommencer méthodiquement, résigné sur plusieurs mois.
En rire parfois de dépit.
Echanger en bout de vigne avec un collègue vigneron : revivre avec lui les difficultés partagées. Délivrer ses angoisses.
Une accalmie en juillet : on respire.
Arrivée de la pourriture sur grappe verte à deux mois des vendanges.
Le coup de grâce ?
Du jamais vu.
Chaque jour apportant une surprise .
Advienne que pourra !
Et puis
et puis Août qui inverse tout : arrivée d’un soleil radieux, de températures confortables qui jour après jour, patiemment, obstinément gagnent tout Août et basculent en persévérant sur tout Septembre…
Des grappes qui profitent à la fois de l’eau accumulée dans le sol et de l’intensité lumineuse : des colorations incroyables très tôt dans le cycle de la maturité.
In fine de haute richesse en sucre, mieux que 2003 !

Ce sera l’une de nos plus belles vendanges sinon la plus belle non pas en réaction à l’année difficile écoulée mais en objectivité.
Dans plusieurs années- lorsque vous dégusterez Les Béguines 2016 en extra brut nature -de tout cela (du dur labeur) vous n’entreverrez rien mais tout y sera, assurément.

 

 ジェロームのこの手紙は、2016年が、かつて経験したことがない過酷な栽培環境だったことを、物語っています。シャンパーニュだけでなく、アルザス、ボジョレー、ブルゴーニュ、ロワール、ラングドック他、ヨーロッパ中のブドウ畑は、困難な栽培を強いられました。

 「温暖化で、気温が高くなり、空気中の水分が多く、そこに山からの寒気団がぶつかった時に雹が襲ってくる。2009年までは、雹など経験しなかった。野球ボールのような雹が降って、雹にあたって、森ではたくさんの動物が死に、木でできたセラーと我が家の屋根は穴だらけとなって、今修復しているんだ」と来日時のセップ・ムスターから聞きました。セップのところでは、収穫量は例年の20%のみ、気の毒で言葉がありません。でも、収穫時にも雨にたたられた年と違って、2016年は、8月から好天が続き、傷んだブドウの実は房から落ちて、残った実は健全に熟し、収穫量は極端に少ないながら糖度があがり、いい収穫はできたことは、せめてもの救いです。

 ラシーヌでは、10月の売り上げから、「” Vendange Solidaire”一致団結ワイン収穫運動」の寄付運動に参加します。来年のカレンダーは” Vendange Solidaire ” のデザインで作成し、日本からの寄付を募り、届けたいと思っています。「連帯してワイン醸造家を応援しよう」という運動、” Vendange Solidaire ” について、最終的な寄付金の分け方など、確認しなければならないことがたくさんありますが、作り手の方々の困難と痛みを気持ちの上だけでも分かち、支え合うことの一端を担えればと願います。どうか、来年は、これほどひどい気候が、おさまりますようにと祈らずにおれません。

 

合田 泰子


PAGE TOP ↑