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『ラシーヌ便り』no. 120

公開日: : 最終更新日:2015/11/05 定番エッセイ, 合田 泰子のラシーヌ便り, ライブラリー

no. 120

 10月23日からフランスに来ています。当地ではすでに紅葉が始まり、朝晩は寒いほどです。24日の早朝マコンに向かい、新しく取引を始めましたRobert Denogent ロベール・ドゥノジャンを訪問しました。振り返れば、明治大学の言語学教授で、飛び抜けて優れた味覚の持ちぬしだったジョン・ヴィサーザさんが、20数年前にマルセル・ラピエールを日本に紹介。それがきっかけで、マルセルと親交のあったドゥノジャンも輸入されるようになりました。ヴィサーザさんが亡くなられたのち、輸入元が定まらなく、このたび弊社にご縁をいただきました。20年以上前にわたしがジャン=マリー・ギュファンスと仕事をしていた時に、頻繁に訪れたフュイッセ村。懐かしさと、つくづく時が経たことを感じながら、ヴェルジッソンとソリュトレの丘を眺めました。時にふれドゥノジャンのワインはテイスティングしてきましたが、今回味わった瞬間の印象は、「ブルゴーニュ南部の味わいでなく、コート・ドールの、それも特別なクラスに属している」というものでした。優れた栽培と賢明な醸造の結果、多くのコート・ドールのワインが失ってしまっていた”上質なワインに求められる基本的な味わい”を、あますところなく表現しているのです。”神経質な点がなく、伸びやかで、仕上がりが美しい”という、マコネ地区のワインの固定概念内に収まりきれるような、やわなワインではありません。優れたワインに共通する、独立した世界がここにあります。

ドゥノジャン兄弟 IMG_0247

 

「歴史について」

 1988年に現当主のジャン=ジャックが、祖父から5haの畑を継ぎました。多くのワイナリーが協同組合にブドウを売っていた最後の時期ですが、あたかもジャン=マリー・ギュファスやダニエル・バローが登場した時期に重なります。また、近隣のジュール・ショヴェに教えを受けたマルセル・ラピエールと、少数のボジョレの造り手たちが起こし始めた、初期ヴァン・ナチュールの流れをつぶさに見ながら、自らの進むべき道を確立していきました。ドゥノジャン一家の畑は、点在する極めて樹齢の高い小さな区画からなりますが、彼はすぐにそれぞれの畑のミクロクリマの違いがもたらす、繊細な個性の表現に夢中になります。プイィ=フュイッセ・ラ・クロワ (ブルーシスト) 2ha 樹齢88年、プイィ=フュイッセ・レ・レッス (粘土質)0.6ha 樹齢90年、プイィ=フュイッセ・レ・カロン (石灰岩) 0.47ha 樹齢100年 、他に花崗岩、砂利質という具合に、現在は8.5haの畑が9つの区画からなります。2012年にはジュール・ショヴェの畑の一部である1haを借り、ボジョレが加わりました。言うまでもなく収穫量は大変低く、樽での熟成は最低18ヶ月。バトナージュをせず、静かにゆっくりと、ワインが自らまとまっていくのを待ちます。亜硫酸は、ヴァン・ナチュールの考え方からはやや多いですが、コート・ドールの常識と比べれば、トータル値70mgとぎりぎり許容範囲内。最近では、ビン詰が早くなり生っぽさが気になるワインが多いのですが、ドゥノジャンのワインは長い熟成のみが得ることができる、落ちつきと求心力をもつまとまりがあります。南にあって極端なほど遅い収穫にもかかわらず、酸の美しさが際立って見事なバランスがあり、細身の味わい。樹齢100年を越えるCarron カロンは、スパイシーで高貴さが溢れるシャルドネです。ファイン・ワインはかくあるべしと、心から絶賛しました。今回は年度の途中のため、3種類(Mâcon-Villages – LesSardines2013、Saint-Véran – Les Pommards 2013、 Pouilly-Fuissé – La Croix 2013)のみの入荷ですが、来年5月に入荷予定の2014年ヴィンテッジからは、ドゥノジャンの全容をご覧いただけます。

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