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『ラシーヌ便り』no. 205

①《ゲルノート・コルマン》 初来日

 5月14日にモーゼルはイミッヒ・バッテリーベルクの醸造家、Gernot Kollemanゲルノート・コルマン氏が来日し、初夏の心地よい気候のなか5日間にわたって試飲会を催しました。 ラシーヌでは2019年からイミッヒ・バッテリーベルクの輸入を始めましたが、あらためてゲルノートとそのワインの素晴らしさを確認できました。個人的には、「ドイツのリースリングは、ゲルノート・コルマンが登場して、別次元の世界が開けたのではないか」と認識しています。ゲルノート自身が保有・経営し醸造する当ワイナリーの誕生と稀有な味わいは、それほど歴史的に重要なできごとと思います。 詳しくは、別稿のレポートをお読みください。

 

②《ギィ・ボサール》、逝く 

 ミュスカデ造りの名手ギィ・ボサールさんが5月12日に亡くなられました。ル・テロワール時代(1998年)から氏の引退された2015年まで、お取引をしていただきました。第1回ラ・ルネッサンス・デ・アペラシオン開催時と、そのあと2015年にもマルク・アンジェリと来日され、日本のワイナリーの方々との勉強会が開かれました。20年ほど前の日本ワインの造り手たちとの交流は、ワイン史上に残る大きな足跡となったのではないかと信じております。ギィのワインは、まるで柱がそびえ立つかのような堂々とした酸を感じ、味わいは澄み切り、それぞれの要素が豊かで、美しいハーモニーのワインでした。過去形になってしまって本当に残念です。兵役同窓生で無二の仲良しナディ・フーコーさん(クロ・ルジャール)のところに連れて行っていただいたことも、大切な思い出です。

 ギィは、私たちがヴァン・ナチュールを広めていく中で、ビオディナミ栽培が表現するファインワインのあるべき姿を示し続けてくれました。今の時代に、もし彼のワインがあったなら、どれほど大切なガストロノミーの場で、楽しまれたことでしょうか。たくさんのことを教えて頂き本当にありがとうございました。合掌

 

③ ヴィニタリー訪問記・続篇 《モンテ・ダッローラ
Carlo Venturini & Alessandra Zantedeschi  / カルロ・ヴェントリーニ &アレッサンドラ・ザンテデスキ夫妻

 2003年春にヴェローナの試飲会でお二人とそのワインに出会い、取引をお願いしました。二人には英語がほとんど通じず、でもワインがあまりに素敵で、とにかくこれから自分たちのワインを作っていくのだという、その意気込みに魅了されました。試飲会翌日にタクシーに乗って訪問したのが、つい昨日のことのようです。その頃の話をすると皆で大笑いをします。「ラシーヌチームがイタリア語を話してくれるようになってよかったよ」
 この間、コロナ禍の2020年と2021年を除けば毎年訪問を続けてきましたが、訪問の度にどんどん味わいが澄んでいき、近年のワインには、ヴァルポリチェッラというリパッソ由来の甘さがあるにもかかわらず、味わいの清らかさに驚かされます。このようなワインが生まれる背景には、「理想の味わいの実現のために何をしなければならないか」を徹底的に考え抜いてきたことがあげられます。具体的には、手間をおしまずに弛まぬ努力を続けてきた栽培、新たな畑の購入、醸造環境を変えてきたこと、などです。私見では、特に2017年以降、彼らの仕事ぶりを映す素晴らしいワインがうまれています。すべてのワインが、2017年から飲み心地の感覚が大きく変化したように思います。

カルロ談: 

 昨夜(4月5日)は春になって初めての満月の夜、ここの地下水を使って水晶水を作った。水晶は波動や満月のエネルギーの記憶を吸収して、溜めて水に伝える。昔のHzで調音された楽器演奏、モーツァルトなどのクラシック音楽をかけて、銅の散布に使う。この水を使うと銅の散布量を減すことができ、バランス、様々な記憶とエネルギーを得られる。基本的に大事なことは振動とエネルギーが受けとめられてワインに伝わること。私は飲んだ時にバイブレーションを感じる。この4年間、葉っぱの大きさとか開き方が異なり、より光と情報を受け止めているように思う。
 この作業をどのように醸造に繋げていくかが肝心で、エモーショナルなワインを作るには、醸造のすべての段階で注意が大切。ご近所さんが農薬を撒いている隣接する2列分のブドウは売り払い、ドメーヌには使わない。

《 San Giorgio di Valpolicella 》の畑
 カンティーナのあるSan Pietro in Cariano 村から車で20分ほど山を登る。「ずっと周りに他の人の畑のない、隔離された場所を探していた。ここをもっていたおばあちゃんが白ワインを作っていたけれど、私たちはヴァルポリチェッラ用に植え変えた。ここは標高500m あり、気温がセラーのある村よりも5度低い。鉄分を多くふくむ深い石灰岩が隆起した。美しい泉は枯れたことがない。水が豊かで昔から有名な場所。ブドウ果汁は㏗が低くポリフェノールが多い。問題があるとしたら猪だね。畑にトマトとタマネギを一緒に植えるとトマトが美味しくなるように、ブドウの周りにプリュンヌやサクランボなど他の果樹を混植することが大切。互いに良い影響をもたらす。森の近くは森のエネルギーがブドウにポジティブ・エネルギーをもたらす。山の向こう側にある深い谷のおかげで風が吹くが、これが大事。川はアルト・アディジェから、ヴェローナに流れる」

《 Camporenzo 》の畑
 畑の持ち主のおばあちゃんが2006年、「ずっと畑を世話してきたロレンツォが年をとったので、ここを借りないか」と言ってきた。カンポレンツォの名は、ここでずっと牛を飼っていたそのロレンツォの名に由来するが、これからも20年長く借りられるので、長期計画で仕事している。カンポレンツォ産のワインは、活き活きとしていて、エネルギーに満ちていて、果実はよく熟れ、飲み心地がいい。

《 SASETI 2022 》
 暑い年。収穫の後雨降ったが、その後雨降らず。2023も難しい年になるだろう。「クオーツ(水晶)の効果を感じると言っていいのかわからないけれど、口に入るものが自分の体になると実感する、飲んでいるとバイブレーションを感じて、リラックス、いい意味で緊張感がない」とカルロ。アルコール度数は高いが、ハーモニーが美しい。

《 Camporenzo 2020 》

 デリケートな香り。色調は淡くて酸が高いが、酸っぱくない、優しく、静かに、心が落ち着く味わい。「このような控えめな美しさのワインを、マーケットはどのように思っているのだろう」と聞く。カルロいわく「このようなワインをいいと思う人が他にもいて幸せだ。多くはないけれど日本も、いろいろな国の人々と共感できる」。アレッサンドラいわく「2020は天候の変化が大きい年、良い時もあれば、嵐に見舞われたり、極端。要素が必ずしも全てが整っているわけではないけれど、結果は調和が取れてダイナミックな感じが好き」。じつにこの二人らしい答えが返ってきた。

《 San Giorgio Alto 2017 》
 ちょっと燻した特徴が熟成途中で現れる。削ぎ落とした、余計な味がない。ミネラル、タニンを少し感じるが、これは特徴的な個性で、数年後どのような味わいが現れるだろうか?
 熟成による味わいの変化も素晴らしいが、近年の純粋さが貫かれた気高さに心打たれる。是非最上の保管で味わってください。

 

 
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