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合田玲英の フィールド・ノートVol.96 《 イ・ヴィニェーリ新着入荷 》

 【イ・ヴィニェーリ】の新VTは、11月15日に出荷開始します。今年の4月に入港していましたが、その品質の高さと静かな凄みのあるポテンシャルを感じ、半年間しっかりと落ち着かせ切ってから出荷することになりました。

・ヴィヌペトラ 2018 (ネレッロ・マスカレーゼ主体の赤)
・イ・ヴィニェーリ 2019 (ネレッロ・マスカレーゼ主体の赤、パルメントで醸造)
・ヴィヌディリーチェ 2019 (アリカンテ主体のロゼ)
・アウロラ 2019 (カッリカンテ主体の白) 

【サルヴォ・フォーティ】
 1962年にカターニアに生まれ、1981年からアグリジェント、ラグーサ、トラパニなどシチリア各地でエノロゴとしてのキャリアをスタート。特に彼の祖父母が生活をしていたエトナ山でのワイン造りの復興に全身全霊を傾けてきました。自身の思い描くワイン造りの実現だけでなく、現在ではエトナのワイン市場で重要生産者となったいくつかのワイナリー立ち上げにも深くかかわってきたのです。
 なぜ、サルヴォにそれが可能だったのかは、幼少期に祖父母の農作業を手伝い、農業学校に進学しながらワインの仲買人の手伝いをしてきたことが原体験となっているのでしょう。樽単位でのワインの仕入れに、エトナ方言の通訳として立ち会いながら、村ごとの特徴、優れた畑の存在と栽培に習熟していったのでした。
 自身のワインであるヴィヌペトラの初醸造は2001年のことで、それ以降もワイン造りを任されているワイナリーの設備を借りながらのワイン造りでした。
 2013年にエトナ東斜面のミロ村に、拡張の余地のあるパルメント(エトナの伝統的醸造施設付き農園)を購入しました。パルメントではキュヴェ:イ・ヴィニェーリ用の石造りの発酵槽と木製のプレスしかないため、白(アウロラ、ヴィーニャ・ディ・ミーロ)やロゼ(ヴィヌディリーチェ、同スプマンテ)、ヴィヌペトラの発酵・熟成用のステンレスタンクの並ぶ醗酵室、赤ワインの熟成室、瓶詰後の保管スペースを、8年かけて拡張してきました。
 実現すべき最後のことは、瓶詰機械の購入で、この作業だけはまだ他のワイナリーで行っています。そのためには、輸送のための不必要なワインの移動をしなくてはなりません。数年前から、来年こそはと言っていましたが、醸造から瓶詰めまですべてワインの余計な輸送なしに、同じところで完結させるということは、ワインの品質においても最重要ポイントの一つで、インポーターとしても待ち遠しい限りです。 

 サルヴォが醸造家としてキャリアをスタートしてから今年、2021年で40年。畑の確保とそれを管理する栽培家達の組織化、パルメントの購入と拡張など、重要な事業を厳しい資金繰りの中でなしとげてきました。しかし今年8月の訪問時に、サルヴォが口にしたのは「ワイナリーの所有権は今年ですべて二人の息子に譲った」ということでした。サルヴォは常々、次の世代にエトナの文化を残していくことの重要性を説いてきました。有言実行のサルヴォの信念が垣間見えました。 

 

2021年8月訪問時、前月の噴火の際の火山灰が、そこかしこに残っていました。葉の光合成の阻害要因にもなるようですが、風が落としてくれるのを待つようです。

 

発酵・熟成室。エトナでは新しいセラーの場合、天然の石材や壁材の使用に厳しい基準が設けられています。

 

半地下のボトル保管室。この部屋にボトル詰め機会が来る予定。

 

~プロフィール~


合田 玲英(ごうだ れい) 1986年生まれ。東京都出身。
2009 年~2012 年:ドメーヌ・レオン・バラル(フランス/ラングドック) で研修
2012 年~2013 年:ドメーヌ・スクラヴォス(ギリシャ/ケファロニア島) で研修
2013 年~2016 年:イタリア/トリノ在住
2017 年~:日本在住

 
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