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合田玲英の フィールド・ノートVol.92 《 ワイン : 発酵させたブドウジュース 》

公開日: : 最終更新日:2022/02/26 ライブラリー, 新・連載エッセイ, 合田 玲英のフィールドノート

 このポスターは、ナチュラルワインの情報発信を行う有志のHPと亜硫酸を含む添加不使用のワインを造る生産者団体Vin S.A.I.N.Sために、セドリック・メンドーサ氏が作成しました。このHP(https://www.vinsnaturels.fr/)は国を問わずナチュラルワインの飲める飲食店、買える酒屋、生産者や試飲会の開催地など、ナチュラルワインにかかわる情報のディレクトリ(保管場所)として利用されています。各国語にも訳されていますが、日本語版がなかったので翻訳してみました。

通常版(4MB):
 https://www.vinsnaturels.fr/design/visuels/jp_2021_vins_sains.jpg
 https://www.vinsnaturels.fr/design/visuels/jp_2022_le_vin_naturel_v2.jpg
 (2022/2/26 リンク切れのため修正)

印刷用高画質版(11MB):
 https://www.vinsnaturels.fr/design/visuels/jp_2021_vins_sains_HD.jpg
 https://www.vinsnaturels.fr/design/visuels/jp_2022_le_vin_naturel_v2_HD.jpg
 (2022/2/26 リンク切れのため修正)

Web上や、印刷して自由に使用してください!とのことです。 

 また、同ポスターについては、ワインライター寺下光彦さんの弊社HPエッセイでも、深く考察されていますので、併せてごらん下さい。→http://racines.co.jp/?p=16353

 ワインを発酵させたブドウジュースというのは、見も蓋もない言い方ですが、定義としては確かにその通り。現代のワイン造り及び販売の方法は、造り手の思想やライフスタイルによりさまざまありますが、このポスターはワインを製造するとき法律で使用が認められている、醸造時の添加物と醸造技術のテクニカルな側面を分かりやすく一覧にしてあります。栽培時の使用製品や技術については言及されていません。

◆慣行製法ワイン
 Vin Conventionnelle(仏語)。特に認証を要する製法分類ではない一般名称のため、特定の認証機関はありませんが、定義づけるとするのならば、ワイン法で使用が認可されている、あらゆる添加物と醸造技術を使える、ということでしょうか。このポスターに全てを表示できているのかどうかは分かりませんが、一つ重要なポイントは、表示されている全ての物や技術が必ずしも使われているわけではない、という点です。自然酵母発酵という項目も含まれてはいますが、同様に必ずしも酵母添加をせずに発酵がされているわけではありません。
 EUではワインは原材料名を書くことが義務付けられていない唯一の飲食物ですが、消費者には何が添加されているのか分からないため、このように表記せざるを得ないのでしょう。そうでなければ、添加物を義務付けするというのが、一番シンプルで公平なのでしょうか。

◆ビオ認証取得ワイン
 ビオロジック栽培されたブドウを原料として使い、一覧以外の添加物や醸造法の使用が禁止されており、それを第三者機関が審査し認証を与えたワイン。複数の認証団体があります。こちらも慣行製法ワインと同様に、表記されている物質や醸造法の使い方は生産者次第です。

◆ビオディナミ認証取得ワイン 
 ビオディナミ栽培されたブドウを原料として使い、一覧以外の添加物や醸造法の使用が禁止されており、それを第三者機関が審査し認証を与えたワイン。複数の認証団体があります。
 ディナミザシオンや惑星の位置といった、ビオディナミのより根本的な部分を、醸造に取り組もうという造り手たちもいますが、デメターなどの認証機関は原料ブドウの栽培方法を保証するという側面が強いでしょう。ただし慣行製法ワインやビオ認証取得ワインよりも、使用できる添加物や醸造法は限られています。

◆ナチュラルワイン / Vin S.A.I.N.S.
 ビオロジックないしビオディナミ栽培されたブドウが原料で、亜硫酸無添加または、このポスターに準拠すると赤ワインで最大20mg/L、白ワインで30 mg/Lとされています。第三者機関による審査はありません。
 Vin S.A.I.N.S.とは、”Sans Aucun Intrant Ni Sulfite”(=亜硫酸塩などの添加物を含まない)の頭文字です。原材料をブドウ100%で造る(つまり亜硫酸無添加である)ことをポリシーとしています。AVN(http://avn.vin/)もVin S.A.I.N.S.(https://vins-sains.org/)も任意の生産者団体ですので、外部の審査はありませんが、やはり亜硫酸の添加と無添加は議論を呼ぶところですね。
 昨年INAOが公式なナチュラルワインの定義を認可したことで、話題になった「ヴァン・メトード・ナチュール」(https://vinmethodenature.org/)認証の中でも、亜硫酸添加有と無添加でロゴを分けています。そろそろ、2020年VTのワインが市場に出始めるころなので、この認証マークの付いたワインが出回るころでしょう。こちらの認証についても寺下さんが、エッセイの中で解説されています。→http://racines.co.jp/?p=15625

 以上、簡単なご紹介でした。ナチュラルワインの考え方や定義については、国内外で多くの方が発信されていますので、とりあえず今回はそちらにお任せ。認可された亜硫酸が30mg/Lやフィルトレーション(濾過機の使用)がNGとなると、ラシーヌの取り扱いのワインで厳密にナチュラルワインと呼べるものは、手の指、足の指で数えられる程度でしょうか。
 個人的にはテクニカルな面では、亜硫酸が相対的に低め、ビオないしビオディナミ栽培のブドウが原料で、小規模の造り手のワインに惹かれる傾向にはあるようです。造り手の思想や、原始的でロマンチックな醸造法の話に強く惹かれることも頻繁にありますが、それが味覚的な幸福や肉体的な感動につながっているのかといわれると?が並ぶこともしょっちゅう。中間業者として顧客に伝える際には、話を誇張したり、ダブルスタンダードになったりしないように気を付けたいところです。
 輸入業に携わる者としては、ラシーヌの選ぶワインはおいしいと言っていただけたら嬉しいかぎりです。 

 

~プロフィール~


合田 玲英(ごうだ れい) 1986年生まれ。東京都出身。
2009 年~2012 年:ドメーヌ・レオン・バラル(フランス/ラングドック) で研修 
2012 年~2013 年:ドメーヌ・スクラヴォス(ギリシャ/ケファロニア島) で研修
2013 年~2016 年:イタリア/トリノ在住
2017 年~:日本在住

 
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