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合田玲英の フィールド・ノートVol.89 《 アリバス・ワイン・カンパニーと、ギリシャのハチミツ 》

 ポルトガルの生産者【アリバス・ワイン・カンパニー】ワインを、新規に取り扱いします。リリース予定は、3月12日です。じつのところ、僕はまだ造り手、フレデリコ・マチャドとリカルド・アルヴェスの2人には会ったことがありません。彼らのワインとラシーヌの出会いは、2020年2月5日。例によって合田泰子と塚原が出張先、今度はパリのワインバーで探しあてて飲んだのが最初でした。ラシーヌの二人はその味わいに狂喜したのですが、時間の都合がつかずに訪問を諦めました。が、その時すでに新型コロナヴィールスがヨーロッパ全土をひそかに襲いかけていました。というわけでその後は出張など、狂気の沙汰。まして、交通の便の悪い山の中に醸造所を構える彼らの元を訪問することなど、諦めざるをえません。
 本来ならば試飲会シーズンのあと、すぐにでもポルトガルへの再訪の出張を組みたいところでしたが、訪問はできなくとも造り手の2人には熱心にコンタクトを取り続けました。自分たちの地域のワイン文化を紹介したいと彼らのレスポンスも良く、無事に2019年VTをご紹介できることになりました。
 高品質なブドウの出来るポテンシャルを備えた地域に、外のワイン文化を経験した新世代の造り手が出会い生まれた“オーセンティック”なワインの好例です。

 それからもう一つ、個人的に嬉しい再入荷情報です。2016年の入荷が最後だった、ケファロニア島のハチミツです。アタナサキス夫婦は島に自生するタイムのハチミツを、手作業の少量生産し、無濾過と非加熱で瓶詰めしています。同島でワインを造るスクラヴォスとも旧知の仲で、僕のスクラヴォス・ワイナリー滞在中にも、朝食にはよく出てきたものでした。会社名を《ディアス・オーガニック・ビーキーピング》と改めましたが、生産は変わらずアタナサキス夫婦の2人です。じつは、美味しいハチミツにも目がないラシーヌは、その後いろいろ買っては試してみたものの、彼らのハチミツの味が忘れられず、再度輸入することになりました。ぜひ一口食べてほしい味です。

《 アリバス・ワイン・カンパニー 》
 ポルトガル北東部、スペイン国境に近いベンポスタ村に、フレデリコとリカルドの二人組が設立。両人とも旧世界、新世界を問わず多くの地域でワイン醸造を経験するのと同時進行で、情熱を注ぎこむ地を探していた。リカルドはトラズ・ウズ・モンティシュの出身で、そしてフレデリコの祖父母も同地域のベンポスタ村の出身で、2人にとってゆかりの地ではあるのだが、村周辺に広がる畑の写真を見た瞬間に、そのファインワイン生産をする上でのポテンシャルを2人は見抜いていた。
 2017年初醸造のワインは「サロト」と名付けた。それは「しっぽを切り落とされた動物を意味する現地での呼び名」であるが、トカゲは再生能力の象徴でもあり、そのポテンシャルを認識されぬまま、消え去りそうなベンポスタのワイン文化を復興させたいという意志が込められている。現在所有している2haの畑は全て赤品種と白品種が混植されており、赤ワインにも30%ほど白品種が混醸される。

  

◆DOCトラズ・ウズ・モンティシュ

©Wines of Portugal / ViniPortugal

 「山の後ろ側」を意味するトラズ・ウズ・モンティシュ地域は、ポルトガル最北東の地域だ。西隣にあり、海岸線を有するヴィーニョ・ヴェルデとは異なって、全域が山岳地帯であり、北部と東部でスペインと接している。ブドウ畑の多くは標高500m~700mに分布。土壌は主に花崗岩土壌に片岩の土壌が点々と存在する。大陸性気候のスペインと同様、「九ヶ月の冬、三ヶ月の地獄」と呼ばれるほど寒さの厳しい地域。夏でも夜間の温度がいちじるしく下がるため、出来上がるワインのアルコール度は総じて低い。
 地球温暖化以前は、もっと寒さの厳しい地域だったことだろう。土地も痩せているため収量も低く、高地と気候も手伝い、決して優良産地としてみなされてきたわけではない。が、ブドウは歴史的にも確かに栽培されてきたが、この地の畑には必ずしも単一品種が栽培されていたわけではなく、耕作放棄された高樹齢のブドウ樹が混植されていた頃のまま残っている。品種は主に、ティンタ・ゴルダ、バスタルド、セラーナ、ヴェルデーリョ・ヴェルメーリョなどの赤品種。ヴェルデーリョ、マルヴァジーア、ポスト・ブランコ、バスタルド・ブランコなどの白品種が栽培されている。

 アリバス・ワイン・カンパニーの生産地域は、トラズ・ウズ・モンティシュ地域のサブリージョンである、プラナルト・ミランデスに区分される。しかしドウロ川中流の、ポルトガルとスペインの国境を成すエリアは、スペイン側ではアリベス・デル・ドゥエロ(DOアリベス)と呼ばれ、自然公園として保護されている。そしてドウロ川を挟んだポルトガル側のベンポスタ村周辺も、気候や土壌、畑の環境において、DOCトラズ・ウズ・モンティシュよりも、DOアリベスによりつながりを感じることから、アリバスの名を冠するワイナリー名をつけた。
注)アリバス、ドウロ=ポルトガル語
  アリベス、ドゥエロ=スペイン語

《 ディアス・オーガニック・ビーキーピング 》
 ディアスは家族経営の養蜂場で、1988年から養蜂に取り組んできた。ケファロニア島に生息する固有種のタイムを主に、モミノキ、ヒース、ストロベリー・トリー(ツツジ科アルゴトゥス属。赤い実をつける)などの茂みを移動して、ミツバチを“遊牧”させている。ハチミツとその副産物(ロイヤルゼリー、プロポリス、医薬品など)の生産量はごく少量なので、主に個人顧客と友人にだけ案内をし、豊富に採れた時だけセレクトショップなどで販売。1995年からはミツバチの天敵の害虫に対しても殺虫剤を使用せず、熱を利用したシステムを用い、2002年にはオーガニック認証も取得した。
 同じケファロニア島でワインを造るドメーヌ・スクラヴォスのヴラディスとも親交が深く、ラシーヌがディアスのことを知ったのも、ヴラディス・スクラヴォスを通じてだった。気候変動により、ミツバチ達の行動も以前とは違っているようで、生産量は以前のよう多くはない。しかし無理な増産はせず品質を重視し、近年は国際的な品評会でも、同社のハチミツは高く評価されている。

◆Dias Organic Thyme Honey
 ディアス・オーガニック・タイム・ハニー
 原材料:ハチミツ 容量:290g
 希望小売価格:3,000円(税抜き)
 容器のデザインが変わり、容量が少し増えました。 

   

《 農薬などの心配のない山の中を選び巣箱を設置する 》

《 とれたての蜂の巣を、遠心分離機にかける 》 

 

~プロフィール~


合田 玲英(ごうだ れい) 1986年生まれ。東京都出身。
2009 年~2012 年:ドメーヌ・レオン・バラル(フランス/ラングドック) で研修 
2012 年~2013 年:ドメーヌ・スクラヴォス(ギリシャ/ケファロニア島) で研修
2013 年~2016 年:イタリア/トリノ在住
2017 年~:日本在住


 
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