『ラシーヌ便り』no. 183 「ワインセラーあるいは同等以上の環境での保管について、Raphaël Bartucci / Bugey Cerdon!」
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定番エッセイ, 合田 泰子のラシーヌ便り, ライブラリー
【ワインセラーあるいは同等以上の環境での保管について】
オフィスにあるユーロカーヴには、10年以上眠っているワインがあります。2005年にラシーヌが輸入したNicolas Maillart のFranc de Pied, 古いJose Michel、ヨーロッパから持ち帰ったJacques Selosse の古いSubstance、Chartogne Taillet、いろいろなバローロ、ボーヌでワイン商に頼んで蔵出しで買ってもらって、そのままラシーヌのコンテナもいれて運んだPrieure Roch、、、、これらを味わうのは年に2-3回ほどですが、素晴らしいです。
古くからお取引いただいている方がある日「合田さん、SelosseのMillesime 1989 Le Terroir輸入を飲んだんだけれど、凄かった。今まで飲んだセロスで一番素晴らしかった」と言ってくださいました。ユーロカーヴにずっと保管していたそうです。
ユーロカーヴは、業務用としては収蔵量にも限界があって、必ずしも理想的ではないかもしれませんが、これまで数台使ってきた経験からしても信頼性は抜群。個人用の楽しみのために、ワインをとても良い状態で保管することができます。どうやら、室内や狭い空間のエアコン調整による温度管理には難しい点がいくつもあり、ほかに合理的な数々の工夫をこらさないかぎり、長期保管にはむかないようです。もし長期保管しようとするなら、ユーロカーヴか、それと同等以上の環境で保管が必要です。それができないばあいには、保管期間を短くして劣化の可能性を最小限にするため、ワインの入手後ただちに販売すべきではないでしょうか。ご自分の領域でもって少しでも劣化を防がないと、それまでの努力を水の泡にしてしまうのですから、造り手と本人を含めワインを味わう方への責任は重大です。希少なワインであるほど、責任は重いのです。
「冬の寒い間を選んで運んだものだから、蔵出しではないけれど大丈夫」と言われて飲んでみたら、「何故こんな味わいになるのかしら」と、悲しくなることがあります。どこで問題があったのかはわかりませんが、なかなかいいコンディションのワインを味わえることは難しいことなのです。多くのワインは、リーファーで輸送されていると思いますが、それだけでは十分ではありません。11月中旬から2月中を除くと、ワイナリーでの集荷作業、現地トラック輸送、集荷倉庫、コンテナ組み、船から降ろして通関までなど、すべてのプロセスでもって瑕瑾のない温度管理を貫くことは、残念ながら世界のプロをもってしても至難の業のようです。なぜなら、飲み味わった時のワインの風味と味わいのなかに、劣化の傷跡や痕跡がとどめられているケースが少なからずあるから、そう言えるのです。
クレタ島他ギリシャの島々、カナリヤ諸島、スペイン、ポルトガル、シチリア、ジョージアでは、苦労続きです。最近のように5、6月ですでに高温になってくると、5月終わりから6月にかけてビン詰めされるワインの輸送は、少しでも気を抜くと、何がおきても不思議ではありません。昨年は、6月にコンテナがみつからず、ポルトガルのある造り手に10月の船積みを依頼したら、どうやら、すでにパッキングしてあったパレットを、冷たい場所に移動せずにそのまま置いてあったらしいのです。結果、ワインは残念ながら廃棄となりました。
これからも、できる限り良い輸送ができますように、ラシーヌは努力してまいります。
【Raphaël Bartucci / Bugey Cerdon!】
春を届けてくれる ラファエル・バルトゥッチのビュジェ・セルドンの到着が待ち遠しいですね。サヴォワの澄み切った空気が思い浮かぶような素敵な味わいです。1998年にパリのジャン・ロビノーの店で知って、仕入れることとなりましたが、あの時はこれほどまで多くの方々に楽しんでいただけるとは思いませんでした。オンリスト楽しみにお待ちください。