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『ラシーヌ便り』no. 177 「シャンパーニュをデイリーに!ロッソ・ラシーヌ/トリンケーロ復活」

 朝晩、だいぶ凌ぎやすくなってきましたが、まだまだ日中の日差しは強いですね。まずは、COVID-19の収束を念じながら、大きな台風の被害なしに穏やかな秋を迎えられることを願い、皆さまのご無事とご健康をお祈り申し上げます。

≪シャンパーニュをデイリーに!≫

 涼しさの到来とともに、赤ワインの季節が楽しみになります。が、みなさま、この秋は是非スタンダード・シャンパーニュを日常で楽しみませんか? 
 ご存じのとおり、シャンパーニュとブルゴーニュとでは面白いことに、シャルドネとピノ・ノワールの二品種が重なっています。ブルゴーニュ・ワインが高騰した今、なかなかお手頃な価格のブルゴーニュ・ワインに出会えなくなってしまいました。
 他方でシャンパーニュは、準備のための熟成期間が長いだけでなく、優れた造り手のシャンパーニュは、10年~20年と時間をかけて美しく瓶熟成し、別次元の味わいへと誘ってくれる、時間の芸術作品でもあります。
 ラシーヌが取り扱うスタンダード・シャンパーニュの双璧は、ジョゼ・ミシェルと、リシャール・シュルランです。ジョゼ・ミシェルは「ムニエの名人」と謳われ、片や「いぶし銀の職人芸」シュルランは、1970年代末に元詰めクオリティ・シャンパーニュを提唱し、オーブのレコルタン・マニピュランをリードしてきました。滋味と実力にあふれる両者は日本でも、長年グラス・シャンパーニュとしてレストランで楽しまれてきました。もともと優れたシャンパーニュは、食前酒に絶好なだけでなく、食中酒としても和食や中華料理の友として抜群の相性を発揮してくれます。

ジョゼ・ミシェル
ブリュット・トラディション

 

リシャール・シュルラン
ブリュット カルト・ドール

 なお今後、秋から冬にかけて、様々な企画をご案内させていただく予定ですので、是非ご利用ください。

* ピノ・ムニエの伝説 ジョゼ・ミシェル

ジョゼ・ミシェル氏 2018年7月

 ジョゼ・ミシェルさんが2019年11月に88歳で亡くなられました。私たちとのお付き合いは、1997年、シャンパーニュのスペシャリストであるマイケル・エドワードさんにご案内いただき、お取り引きいただくようになりました。ムニエの理想郷、ムッシー村で1952年以来長きにわたって、シャンパーニュ造りに携わってこられました。
 ジェローム・プレヴォー、シャルトーニュ・タイエの造る100%ピノ・ムニエは現在、世界的に高く評価されるようになりました。が、20年以上前のピノ・ムニエ種は、ベースワインのクオリティを落とす単調な劣等品種だとみなされてきました。しかしながら、ジョゼさんが造った1950年代と1960年代の100%ピノ・ムニエは、時間をかけて複雑で美しく熟成します。多くの人はその偉大さんに驚き、ピノ・ムニエ種の素晴らしさを初めて知ることになりました。
 ジョゼさんとは長くお付き合いいただいたおかげで、幸いにも訪問の都度、「私が、すべて醸造した最初のヴィンテージです」と言いながら、私の誕生年1955年をあけていただきました。静かな語り口で、日本から多くのプロフェショナルが訪ねてくださることをとても喜んでおられました。60年を越えるシャンパーニュ造りの知見を盤石の土台として踏まえる諸作品は、まさに匠の技そのものでした。ジョゼ氏の最後のヴィンテッジとなった2019年は、孫のアントナンも加わり、現在ではアントナンがメゾンの運営とシャンパーニュの醸造を担っています。

 そのアントナンは次のように語ります。
 「2019年VTで祖父と一緒に醸造をすることができたのは、本当に最高の思い出だった。僕の父親は歯医者、叔父が弁護士でワイナリーの共同経営者ではあったが、実際は全て祖父が取り仕切っていた。僕自身は、4年間ワインビジネスも含めて、栽培・醸造を勉強した後、メキシコでルイ・ロデレールの営業として2年間働いた。そのあとフランスにもどってから、サン・ロマンの造り手のもとで1年間修行。そのワイナリーではシルヴァン・パタイユがコンサルタントをしていて、彼の考え方にはとても影響を受けた。その後、ルクレール・ブリアンでも半年間修行をしたので、もちろんエルヴェ・ジェスタンのことも知っている。」

アントナン・ミシェル

 「祖父は除草剤を使用していたが、2019年からは全く撒かないことにした。完全にビオロジック栽培にするには、まだ時間と、更なる人手がかかるだろうが、オーレリアン・ラエルトなどの若手の生産者も助言をしてくれる。今年からは祖父もいないし、その傍らで45年働いてくれた、ティエリーも今年を最後に定年だから、正直心細さもある。でも、信用できるセラーワーカーも見つかったので、彼にティエリーの知識を少しでも残してもらえたら、と思うよ。」
 「祖父は、『セロスのようなシャンパーニュはもちろん素晴らしい。だが、私たちのような、瓶熟成と樽熟成に時間をかけつつも価格を抑え、多くの人の手に届くシャンパーニュも必要だ』と話していた。」

 ジョゼさんのご冥福をお祈りするとともに、アントナンの造る新生ジョゼ・ミシェルの今後に期待し、どうぞ暖かくご声援ください。

  

≪ロッソ・ラシーヌ/トリンケーロ 復活≫

 トリンケーロのロッソ・ラシーヌ(2016年VT)が、久々に入荷します!
 前回の2013年VTは2017年9月に入荷したので、3年ぶりのお目見えです。2017年の合田泰子のラシーヌ便りに書いてあるとおり(http://racines.co.jp/?p=9841)、ウイルス病の蔓延により、ロッソ・ラシーヌ用の若木のバルベーラは2014年、やむをえず引き抜かれてしまいました。その畑では引き抜いたあと消毒して数年間は畑を休ませるため、最近になってようやく、植え替え作業をしたそうです。収穫が出来るようになるのが、2022年か2023年。そこからワインを3年間熟成させるので、若木のバルベーラのロッソ・ラシーヌがリリースされるのは、早くても2026年頃でしょうか。

 今回のロッソ・ラシーヌ2016は、畑はそもそも「テッラ・デル・ノーチェ」用の畑です。もともとテッラ・デル・ノーチェには複数の畑のブドウが用いられていますが、その中でも、東向き斜面のより涼しい畑のブドウを使っています。樽での熟成期間も、テッラ・デル・ノーチェより短く、ステンレスタンクの熟成期間を長くして、よりフレッシュさを保っています。ブドウの品質としてはテッラ・デル・ノーチェとブレンド出来る品質ではありますが、ロッソ・ラシーヌという商品の性質を考え、手に取りやすい金額に抑えて値付けしました。新しいロッソ・ラシーヌが、これからも多くの方に楽しんでいただけますことを願っております。どうぞお楽しみに! 

 
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