合田玲英のフィールド・ノートVol.67 《 2019 年 2 月販売開始ワイン 》
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ライブラリー, 新・連載エッセイ, 合田 玲英のフィールドノート
【エンビナーテ・アルマンサ】スペイン/アルマンサ
エンビナーテは、いまやスペインが誇る新進気鋭の4人組。高樹齢で自根の地品種が多く残るスペイン各地で互いに協力しあいながら、高品質かつ個性的なワインを造り、いまや世界中で名声が鳴り響いている。
カスティーヤ・ラ・マンチャの南東端にあるゾーンDOアルマンサは、緩やかな丘や平野が続くが、中央台地(メセタ)に位置するため標高は800mと高く、大陸性気候の厳しい環境。今回入荷するアルバーニャは、ガルナッチャ・ティントレッラ主体。1枚の大きな畑から、1キュヴェだけを作っている。マイクロキュヴェを多く造っているエンビナーテのワイン群の中でも、生産本数は飛び抜けて多いが、侮るなかれ。その澄んだ味わいの中には、彼らの醸造精神がしっかりと感じられる。
NEW!【イルヒー・ヴィンヤーズ】アメリカ/オレゴン/ダラス
新規取り扱いのオレゴンワイン生産者です。1/21(大阪)、1/23(東京)で開かれた、[2019 ワシントン・オレゴン・ワイン・エクスペリエンス]試飲会の機会に、来日しました。自転車のペダルを動力にした(電気発生式ではない)ポンプの使用をはじめ、一切の近代醸造設備を排除した(亜硫酸は入っています!)ワイン造りを試みたり、ポートランドの酒屋には馬車と自転車とカヌーだけでワインの輸送を行っています。持続可能なワイン造りを考えるために行っていることで、深い意味は無いよ、と言う醸造家のブラッドは、自然体で力みが無い。ワインも軽やかな、後味の伸びやかさがある。イルヒーとは、ネイティブ・アメリカンの言葉で、“大地、場所、土壌”を意味する言葉だそうです。
【ケリー・フォックス・ワインズ】アメリカ/オレゴン/ガストン
2018年は、4月の来日後、大掛かりなセラーの引っ越しにくわえ、今まで使用していたマイサラワイナリーが有するモンタジ畑の契約が打ち切られ、ケリーにとってはめまぐるしい一年でした。2017VTで最後となるモンタジ・ヴィンヤードとアフラニの2キュヴェと、ケリーの本拠地である、マーシュ・ヴィンヤードを初めとするダンディー・ヒルズのワインが入荷します。どれも際立った透明感と鮮烈な輪郭をもつ、ケリーらしいワインです。アルコールが高く、大柄なワインの出来やすい土地にあって、この透明感はケリーならでは。
【モンティノア・エステイト】アメリカ/オレゴン/フォレスト・グローヴ
斜面にある80haの畑を所有する、ワイナリー。所有する畑全てで、バイオダイナミック農法を実践。抽出はしっかりされていて味わいは濃いけれど、後味の真っ直ぐさは、ブドウの状態の良さを感じさせる。適度に森林に囲まれた畑の環境は、手作業の畑に比べると、手が行き届いているとまでは言えないかもしれなくい。けれども、草が生い茂り、茎の先を切らないようにしているので、鬱蒼としていて、林の中に入ったような雰囲気があります。
【H. コトゥーリ&サンズ】アメリカ/カリフォルニア/グレン・エレン
父親のトニー・コトゥーリがカリフォルニアで始めた、ドライ・ファーミングと亜硫酸無添加のワイン造りを受け継ぎながらも、ニックならではのソノマを解釈しつつ、ワイン造りをしている。父親同士の風貌や生き方から、しばしばクルトワ家と比べられるコトゥーリ家。木造の醸造所兼居宅の簡素さは、クルトワにも負けていない。一概に暑く乾燥とは言えないカリフォルニア州の気候だが、アルコールの高さ、抽出の濃さと飲み心地の良さは必ずしも比例しないと、感じさせてくれる骨太なワインです。