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Sac a vinのひとり言 其の十四「Difference」

ほとんどの方はご存知だと思うが、こちらのコラムに執筆を始めたころ、私はフランスでソムリエとして 職務を全うしていたのだが、故あって昨年日本に戻ることとなり、現在は日本でソムリエとして糊口をし のいでいる。日本での Sommelier の経験は皆無に等しかったので、当初は少なからず戸惑いや違いを感じ たものであるが、殊更大きな問題もなく現状に馴染みつつあると言って良いだろう。

海外でソムリエに従事していた人間ということで、いろいろなことを従業員や同業者に聞かれるのだが、 中でも多い質問が、「実際のところ、レストランにおいてフランスと日本の Sommelier は何が違うのか?」 ということだった。 私もこちらに帰ってきて1年近く経つ。良い機会なので、過去の振り返りと現状を見つめなおす為に、双 方を簡単に比較してみるのも良いのかもしれない。
On va voir ensemble. なお、ここでは給与体系や労働時間、社会的地位などにはあまり触れない事とする。

 

①役割

日本
 お客様が選んだ料理に対してソムリエがワインを選択し提案する。
 ソムリエ主導で飲み物のマネージメントが行われる。
 テーブルにおける満足度の責任はソムリエ側にある。

フランス
 ソムリエ側からの提案ももちろんあるが、かなりの割合でお客様自身が ワインの選択を行う。
 飽くまで顧客主導。
 この場合、ソムリエは品質やサービスなどには責任を負うが、
 満足度に関しては、お客様自身の責任も大きい

 

② 重視されるもの

日本
 ソムリエによる説明や独創的な提案。
 「その人だから、」という キャラクターやオリジナリティが求められる。
 どちらかというと、発信者や教育者的な側面が強く見られる。

フランス
 お客様自身が醸造元の旧来の知己である場合があるし、
 長年直接購買している場合が多く見受けられるため、
 ソムリエに問われるのが的確さと正確さ。
 そしてあまり出しゃばらない事。
 ボーヌの醸造学校にて教授にソムリエとして一番重要なことは何か?
 という問いに「(サーヴィスマンとして)控え目であること。」
 と答えを頂いたことはいまだに忘れられない。

 

③ワインと料理の組み合わせ

日本
 基本的には、そのお店のコンセプトや料理の源流に沿ったワインがメイン。
 ただ、昨今のペアリングの隆盛により、単独の国や地域のみのお店は減少傾向
 にあり、コストパフォーマンスと料理との相性が重視される。
 例を挙げてみれば、天ぷらにマンサニージャや馬刺しにクシノマブロ

フランス
 基本的に、あまり新しい組み合わせは好かれない。
 というよりもフランスワイン以外があまりない。これはフランス人の
 保守的な性格が強く影響しており、むしろお客様が斬新なことや独自の
 提案を忌避する。フォアグラに sauternes、シャルキュトリーに Gamay、
 ハラミに Cabernet Franc などの王道がお客様に好まれる。
 もし、新しい提案をする場合も、これらのロジックに基づいたものでなければ
 基本受け入れられない。

 例)フォアグラに Sauternes→フォアグラに Gewurtztraminer SGN、
 ドーバーソールに樽の利いた良昨年の Meursault
 →ドーバーソールに樽の利いた肉付きのいい Châteauneuf du pape

 

④ワインの購買

日本
 酒屋やインポーターから買うことになる間接的な購買。もちろん一部には直接取引されている方たちもいるが、全体から見たら極々僅かである。
 付き合いや値段交渉も取引先との関係性や力関係などで変わってくるが、基本的に様々なバランスを考えながら購買を行う〃日本的〃な仕事と言える。
 決められた日時に決められた商品が来るので非常にやりやすい。

フランス
 店舗のサイズにもよるが、ソムリエのいる店なら、かなりの割合で生産者から直接購入する。
 ただ一部の醸造元が様々な理由で中間業者を介した取引のみ行う場合があるので、ここらと の取引は日本とはあまり変わらない。
 もちろん、酒屋から買う場合もあるのだが、それはどちらかというと特別なワインの購入や 昔からの付き合いで仕方なく、人員不足で、などという側面が強い。

※中間業者を使う理由
会社のタイプや規模により異なる
❶限られた本数しかないので、その割り振りを中間業者に任せることにより、人員の削減と断りの際の軋 轢を減らすことが出来る。
❷家族経営の醸造元などは、販売や試飲会の為に都市部に人員を人手不足や経営的な理由で頻繁に送るこ とが難しい場合があるため、手数料を払ってでも委託する場合がある。
❸単純に試飲会や販売などの人づきあいが苦手な人や、畑から離れたくない生産者の場合。
直接かけても電話に出ない、メールの返事もしないのである意味ありがたい。

 

⑤他民族とのコミュニケーション

 日本

 基本的に顧客が日本人、同一民族であるため言語的障壁や文化間における
 ディスコミュニケーションが生じづらい。若い世代を中心に多言語を用いている
 ソムリエも増えてきてはいるが未だ少数と言わざるを得ない。 

フランス
 地方による格差があるため、ここでは私が職務を全うしていたパリに限定する。
 基本的に 40 歳未満のソムリエは、英語を話せることが最低ラインになる。
 (上の世代も話すことが出来ないわけではない。)また世界最大の観光地の
 一つであるため異文化コミュニケーションのスキルは非常に高いと言って良い。
 また、相手のバックグラウンドを理解していない場合のケアなどにも優れている。

 

⑥余暇の過ごし方

日本
 全体的に非常に勉強熱心。元々ヨーロッパと違いワイン自体が
 生活に根差しているものではないため、自身から進んで学ぶ姿勢が無いと
 向上することが難しいという要因も大きいが、
 ここに関しては民族的な性格やスタンスの違いだろう。

フランス
 これはソムリエに限ったことではないのだが労働者の権利が可成り
 手厚く保護されている為、どんなソムリエでもそこそこ生活できてしまう。
 そのためモチベーションのある人間とない人間の差が激しい。
 唯勉強したいと思えば直接生産者にコンタクトを取り話を聞いたり、
 生産地に行って土地の構成を観察出来るしならブドウの収穫にも参加可能。
 貪欲な人間にはかなりいい環境であろう。

 

⑦ワイン以外のアルコール飲料

日本
 ワインに対する造詣は高いレベルにあると言ってもいい。
 ただ食後酒や食前酒に対する取り組みがあまりアグレッシブでないというか
 軽んじられているニュアンスが感じられる。これに関してはニーズや体質的な
 問題、また日仏の営業時間の違いや Bar の存在などもあるのだろうが、
 若干残念である。

フランス
 アペリティフとディジェスティフ、この二つをしっかりと用意していないと
 顧客の満足度は容易には上がらない。また売り上げの中で重要なファクターである。
 ソムリエの仕事の中でもかなり重要と言って良い。

※日仏の営業時間の違いと Bar の存在
日本
 大体 18 時ごろから 21 時 30 分ごろラストオーダー、23 時ごろ閉店の場合が多い(レストランの場合)。そのため、腰を据えてしっかりと飲む場合は、大体2件目に行くパターンが多い。また Bar が市街地には豊富にあるため選択は容易である。

フランス
 営業開始が 19 時から 19 時半、ラストオーダーが 22 時ごろになる。
 また、基本的に 24 時以降の飲食店の営業は禁止されているため(特殊なライセンスが必要)
 1件目で食後酒まで飲むパターンが殆ど。
 夜中に空いているのは Boîte、ディスコくらいしかないのである。

今回はこのくらいにしておいて、次回はもう少し突っ込んだことにも触れてみたい。

 

~プロフィール~

建部 洋平(たてべ ようへい) 
北海道出身で1983年生まれ。調理士の専門教育をへて、国内で各種料理に携わる。
ブルゴーニュで調理師の研修中、ワインに魅せられてソムリエに転身。
ボーヌのソムリエコース(BP)を2010年に修了、パリ6区の「Relais Louis XIII」にて
シェフ・ソムリエを勤める。現在フリー


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