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合田玲英のフィールド・ノートVol.56《 プレヴォー夫妻来日/ドメーヌ・ダンドリオン 》

公開日: : 最終更新日:2018/02/01 ライブラリー, 新・連載エッセイ, 合田 玲英のフィールドノート

《 プレヴォー夫妻来日 》
昨年末、プレヴォ―夫妻から突然来日の知らせがありました。年が明けて早々、韓国経由で大阪に。非公式の小さな催しに迎えられたジェロームは、質問攻めに合っていました。長旅で疲れているはずなのに、一つ一つ、得意の皮肉とジョークを交え答えてくれていました。通訳をした竹原社員が、ジェローム語録をまとめましたので、ご紹介します。

Q. その日サーヴした各ヴィンテージについて。
A. ‘08年:珍しく中欧からの乾いた大陸風が吹いた。この風で木が揺さぶられ、果実内の水分が蒸発した結果、凝縮感のあるワインに仕上がった。この風は昔の記録にも稀に記されているが、この風が吹くとワインの出来が良いようだ。
‘12年:(詳しいことはあまり覚えていないが)とにかくいい年だった。
‘14年:スズキ(ショウジョウバエ)の害がひどく、そのせいでワインに揮発酸が生じた。選果が大変だった。
‘15年:いい年。シャンパーニュ全体でも良年(シャンパーニュ委員会はしょっちゅう良年といっているけれどね)。
・ミレジム(ヴィンテージ)はワインに印をつけているといえる。その印は必ずしも美しいものではなく、ときに傷跡のようでもある。
・その年の味というのが如実に出ることがある。アペラシオンの味よりも前面にその年の味が出る。特に良年といわれる年はそういうことが起こる。2011年のあるワインをブラインドテイスティングしたときに、アペラシオンは当てられなかったのに、これは2011年だ!と当てたことがあるよ。

Q. 趣味は?
A. う~ん、散歩か、寝ること、かなぁ。

Q. どんなワインが好きですか?
A. ・ただピュアさだけをひたすら追求していたり、完璧すぎるワインはあまり好きじゃない。私が好きなワインには輪郭にどこか奇妙で不可思議なところがある。ワインをつくる前から私の好きだったワインの一つにフェルム・ド・ラ・サンソニエールのマルク・アンジェリのワインがあるが、彼のワインにもそういうところがある。
・生産者がワインを作るのではない。ブドウがワインを作るのだ。ワインの全てはブドウの果実が持っており、私にとってヴィニュロンの仕事というのは、その果実を健全に成熟させることである。もっと言えば、醗酵によってワインがテロワールを表現できるように導くというのが役割なのである。
・果実のしっかりと成熟することを常に目指しているが、皮まで熟すことがあっても種まで熟すというのは難しい。種まで完熟した果実を味わったことがあるのはディディエ・バラルのところぐらいだ。ディディエのワインのすごいところは完熟感もあるのに酸を失っていないこと。

Q. ジェロームのシャンパーニュには、グランメゾンのシャンパーニュのさらに先にあるような個性を感じるが、その秘訣はあるのか?
A. ない。しいて言えば、私はレ・ベギーヌの区画のすぐそばで育ったので、この地域に根着いたエスプリ(精神性)がワインにもこもるのかもしれない。故郷への愛着はあるだろう??そういうものだ。

Q. あなたのシャンパーニュは、どのように飲むのが一番おいしいでしょうか?
A. ・シャンパーニュも他のワインと同じようにグラスの中でどんどん変化するのに、ありがちなのが、みな開けてすぐに飲み終えてしまう。とても残念なことだ。もっと時間をかけて飲んでほしい。
・フルートグラスは泡を飲むために発明されたもので、シャンパーニュを味わうためのものではない!
・レ・ベギーヌを飲むにはブルゴーニュグラスのように広口で丸底のほうがいい。小さいグラスは酸が立ちすぎる。

 

《 ドメーヌ・ダンドリオン 》

 コート・ドールの新規の造り手の紹介です。世界各地に優れた造り手がいると言っても、やはりブルゴーニュのワインと、その動向は気になるものです。フランス在住の友人から、「面白いカップルがいるよ」と教えていただき、初めて訪れたのが去年の春でした。モルガンとクリスチャンの二人はオート・コート・ド・ボーヌのムロワジー村(Meloisey)に本拠地を置き、畑もまだ買ったばかり。設備も充実していませんが、足りない部分は若さで補いながら、ワイン造りをしています。ブルゴーニュのあり方と未来像の一つを指し示しているかのようで、元気づけられました。

 思えば、ブルゴーニュへ行くときは、高速道路を降りて、ボーヌへ行き、コート・ド・ボーヌやコート・ド・ニュイに行くことはあっても、さらに西のオート・コートに行くことはありませんでした。たった5kmもないほど、西へ行くだけですが、森がたくさん残っていて、どこか忘れ去られた雰囲気のある素朴な街並みに、放牧されている家畜。ブドウ樹も、むやみに植え替えられることがなかったためか、樹齢の高いものがまだあります。

 ブルゴーニュで生まれた、モルガンと、オーストラリア出身のクリスチャン。二人ともまだ20代で、この世代らしく、北半球、南半球どちらでも醸造の経験をし、ムロワジーの地にたどり着きました。そんな自分たちの人生をタンポポ(ダンドリオン)の綿毛にたとえ、ドメーヌ名にしました。

 栽培や醸造において保守的なブルゴーニュの地にあって、モルガンとクリスチャンの2人の造るワインは、近代醸造の確かさを持ちながら亜硫酸無添加であることをはじめ、自然なアプローチを感じます。

 10月に再訪問した時に足でピジャージュをしている2人の姿はとても楽しそうで、こちらも思わず、照れ笑い。初VTの2016年から続く2017年、難しい年からのスタートとなり、いろんな国へ売れる量となるとまだ少量ずつですが、彼女たちのように楽しくワインを造る姿を見ると応援したくなります。

 

クリスチャン・ノット(左)とモルガン・スイヨー(右)

飼っている豚は何とマンガニッツァ

田園風景が広がる

 

~プロフィール~

合田 玲英(ごうだ れい) 1986年生まれ。東京都出身。
2007年、2009年:
フランスの造り手(ドメーヌ・レオン・バラル:写真左)で収穫
2009年秋~2012年2月: レオン・バラルのもとで研修
2012年2月~2013年2月:ギリシャ・ケファロニア島の造り手 (ドメーヌ・スクラヴォス)のもとで研修
2013年2月~2015年6月:イタリア・トリノ在住
2017年現在、フランス在住


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