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Sac a vinのひとり言 其の十「固定観念、 守破離、 型破りか糸切れ凧か」

やりいかの刺身生姜醤油と
ネレッロマスカレーゼ

柚子塩とvermentino

たまり醤油と甕発酵のgalnacha

黄味酢とsoave classico superiore

橙のポン酢とpineau d’Aunis

牛フィレ肉のステーキ胡椒ソースと
暑い年の Saint Estèphe

赤ワインソースとBandol

若目のロックフォールと熟成したCahors

ペリグーとグルナッシュ割合が高いChâteauneuf du Pape 90年代初頭位

ベアルネーズと安いカベルネフラン

フライドポテトケチャップと
アメリカンオークzinfandel

マヨネーズとcrémant de Jura

タルタルとnero d’avora

チリソースとManzanilla

ハーブソルトとchasselas

 ・・・と、 つらつらと在り来たりなマリアージュを書いてみる。

 そんな時にふと頭をよぎるのは、「新しい調理法や画期的なソースを思いついた人はどんな気分だったのかしらん?」「自分でcomté にvin jaune、pigeonneau にGrand Echézeaux、bavette にSaint Nicolas de Bourgueilのやうな、問答無用の組み合わせが考案出来るのだろうか?」等という取り留めの無い事達。
 改めて考えてみる。
 果たして新しい組み合わせを考案するというのは、どのやうな事なのだろうか? と。
 お客様や知り合いには「斬新な組み合わせ」とか「そう来たか!?」等と御褒め頂くことは良くあるのだが、実際のところ他のマリアージュの理屈を産地や色を代替したものであったりソースと素材の組み合わせを落とし込んだりしているだけで、新しい組み合わせを生み出せた‼ と思えたことは一度も無い。(新しいと思っても大体先人がやりつくしている。)
 今までに無かった、というのは往々にして先人が、
 ”分かっていてやらなかった” 場合が殆どで有る。
 正味の話、 大体のマリアージュが何らかの組み合わせのチューンアップ又はデチューンで構成されている、と言っても過言では無いと思っている。
(私の場合だけかも知れませんが...)
 まあ 是は、ワインと料理のマリアージュに限った事ではなくて、現在の様に高度に情報が共有化された社会においては、あらゆるジャンルで斬新なモノや概念を生み出すのは至極困難である。パッチワークの如くに組み合わせの妙味やキャラクターを表す(顕す)事は可能であるが、まっさらな状態からのオリジナリティを生み出すとなると...極めて難しいと言わざるを得ない。(何故なら其れは、今現在に至るまでのその文化に対して新たなるモノを生み出す、という挑戦に他ならないのだから)
 だからこそ頭は柔らかくしなくてはならない。
 以前も書いたと思うが、他の組み合わせをそのまま落とし込むというのは非常に有用であり、ここまでの文脈からも理解出来るかとは思うが、大体の組み合わせはやり尽くされている。
 と、いう事はだ。例えどんなに組み合わせるのが難しいと考えられる素材や料理でも、十中八九何らかの参考になる組み合わせが存在する、と言っても過言では無いだろう。ヒントはそこら中に散らばり、転がっているのである。
 例えば寿司にはサモロドニ、イカには甕発酵のガルナッチャ、あんこうにチャレッロetc
 彼らは待って居る、我々が見つけ出し掘り出されるのを。
 見つけ出すには食わず嫌いをせず、他文化にもアンテナを張って居なければならず、何より従来の味わいとは全く違ったアプローチを受け入れる柔らかな思考回路が必要になってくる。
 その際には、Aに対してはB, Cに対してはDでなくてはならないと言った類の固定観念は、可能な限り取り払わなければならない。
 固定観念から脱却するのに最も有効だと考えられるのが、クラシックを学び、肌に馴染ませることである。
 クラシックに親しみ、その理屈や意味を理解、消化、吸収することにより、其れらのエッセンスを抜き出して転用する。遠回りでは有るが一番効率的な方法である、と私は考える。
 一言で言えば 守破離 である。
教えに親しみ、
教えの枠を破り
教えから離れて新たな教えを興す

 漢字で書き記すと僅か3文字でしかないが、 込められた意味と読み取れる意味は果てしない。

 

~プロフィール~

建部 洋平(たてべ ようへい) 
北海道出身で1983年生まれ。調理士の専門教育をへて、国内で各種料理に携わる。
ブルゴーニュで調理師の研修中、ワインに魅せられてソムリエに転身。
ボーヌのソムリエコース(BP)を2010年に修了、パリ6区の「Relais Louis XIII」にて
シェフ・ソムリエを勤める。現在フリー


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