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『ラシーヌ便り』no. 139 「2015年VTの到着と霜害/生産者訪問記ラルコ」

 新緑の美しい季節となりました。5月は、ギリシャとスペインの各大使館が主催する試飲会と、例年のリースリング・リングにラシーヌも参加いたしました。ラシーヌ主催の試飲会とは違って、ふだんはお目にかからない方々に試飲いただく機会となりました。ギリシャワインは、ラシーヌが紹介しはじめて早や8年目。昨年来幅広くお扱いただけるようになってきたと、手ごたえを感じています。現代のギリシャを代表する画家アレコス・ファシアノスのリトグラフを、広告物に使用する許可を得て、ポスターを作成しました。ギリシャワインをご注文いただきました酒販店様とレストラン様に、お送りさせていただきます。

 期  間 : 2017年6月1日(木)~2017年6月30日(金) 納品分まで
 条  件 : スクラヴォス ヴァン・ルージュ・ド・ターブル アルシミスト以外のギリシャのワインを12本以上ご購入いただいた酒販店様、レストラン様にお送りさせていただきます。
 配布時期 : 2017年7月上旬
  ※数に限りがございますので、なくなり次第終了とさせていただきます。

1)2015年ヴィンテッジの到着と、ヨーロッパの連続霜害
 2015年ヴィンテッジのワインが、続々と入荷してきています。2015年は、夏から収穫期にかけて天候に恵まれたものの、逆に気温が高すぎて乾燥したため、手放しで「偉大なヴィンテッジ」とはいえない作柄でした。それでも優れた造り手たちは、次々と素晴らしい仕上がりのワインを届けてくれました。一口味わって、完成度の高さにあらためて驚かされます。オフィスの試飲会でも、大変ご好評いただき、明るい雰囲気の試飲のひと時だったと思います。
 しかし、2016/17年と2年続きの遅霜により、ヨーロッパはまたしても大打撃を被りました。特にシャブリとシャンパーニュ地方の恐るべき被害には慰める言葉もなく、胸がいたみます。それでも2016年の収穫時には、醸造中の2015年の素晴らしい仕上がりは、きっと大きな励みとなったでしょう。が、2017年にまたもやひどい霜害にみまわれ、ドメーヌは経営の根幹にかかわる深刻な状況のさなかにあります。また2017年はフランス北部だけでなく、ローヌ、ラングドック、北イタリア、ドイツ、オーストリアまでも霜害にみまわれてしまいました。それらの地で息をひそめている生産者の方々を思い浮かべては、その無念の想いを噛みしめるばかりです。
 せめて、この夏から秋にかけて無事に過ぎるように、と願う毎日です。 

 

2) イタリア生産者訪問記 -2

L’Arco di Az. Agricola Fedrigo Luca
【ラルコ・ディ・アズィエンダ・アグリコラ・フェドリゴ・ルーカ】

 ラシーヌが紹介するイタリアワインの中で、もっとも人気の高いワインの一つ、ラルコ。2010年の初入荷から、早やくも7年になります。 ロッソ・デル・ヴェロネーゼ2012には、鮮やかな輪郭と、バランスよく活き活きとした味わいがあり、一段抜けた印象があります。ヴァルポリチェッラ・クラッシコ・スペリオーレ、パリオ、ルベオ、アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・クラッシコ、ピエトルスは、 礎になるアマローネの質が向上したために、いずれも全体にレベルが高くなってきました。

 「毎年、質の向上だけを考え、工夫している。2012と2015 はともに暑くて、特に上級キュヴェはバランスがとりにくかった。が、どちらもわかりやすい美味しさがある。暑い年は葉を多く残し、成育中の傷んだブドウを取り除き、一房あたりの水分量を増やすように調節する。最近の年では2012が好きだ。2016は理想的な作柄だった。2007と2009 はとても良いヴィンテージだ。2012 と2015、2011と2016が、似てるかな。 2011、2016 はバランスがとてもいい。2008と2010は収穫の途中に雨が降った。先に収穫したカベルネ・フランは良いけれど、リパッソとレチョートは難しい。9月中旬は季節の変わり目で、雨がちだから、難しいね。2013と2014 は難しい年だったので、アマローネとレチョートを作れなかった。ロッソ・デル・ヴェロネーゼとヴァルポリチェッラはいい仕上がりになった。」
 「グラッパは、トレンティーノのフランチェスキーニに蒸留してもらっている。彼らは羽のついた緑の帽子をかぶり、アルピネーゼと呼ばれる。フリウリとトレンティーノのような寒い地域に住む人たちにとってグラッパは欠かせないもので、昔から戦争に行く時グラッパを胸に入れて出かけた。だからグラッパづくりは、彼らの伝統なんだ。」 クインタレッリで学んだ基礎を忠実に積み上げ、自分の世界を作り始めた、と感じた訪問でした。

 訪問後、ルーカからランチをご馳走になりました。ホワイトアスパラガスの前菜とカルチョーフィの古代米リゾットの、とても春らしいお料理とともに、ワインはもちろんクインタレッリ。ルーカから聞くジュゼッペ・クインタレッリの話は、いつも興味深い話ばかりです。
 たとえばクインタレッリのラベルは、ジュゼッペの手書きではありません。「自分のサインなんて書きたくないから、代わりに書いて」と、ヴェローナでレストランを経営する友人のジョルジョ・ジョコに書いてもらったのが、かの手書きのラベルの始まりらしい。今は娘さんが書いたラベルが使われています。

 1980年代半ば、突如クインタレッリの名前はアメリカでイタリアの最高峰として、評価され始めました。ニューヨーク・タイムズに「クインタレッリのワイン、ニューヨークに到着!」 と書かれるほどでした。しかし、ジュゼッペ自身は、派手なことを好まない、冗談が好きな人でした。

 モリナーラというワインを覚えている方もいると思います。1999年当時、前社ル・テロワールがビアンコ・ヴェロネーゼと共に輸入して大人気となった、クインタレッリのお手頃ワイン。このワインはモリナーラ種で作った、淡い色調の日常ワインでした。私たちも初めてこのワインを飲んだ時、「クインタレッリにこんなにチャーミングな親しみやすいワインがあるとは」と驚きました。とってもお手頃なワインが、クインタレッリの名前故、アメリカでは100ドルで売られていることを知り、ジュゼッペは作るのをやめてしまったそうです。なんと残念なこと。ワインに携わる者は、そのものの価値を誠実に消費者に届ける責任があると、あらためて感じたしだいでした。

 ジュゼッペさんの晩年の十数年を、あたかも家族のように過ごし、その脇でつきっきりで学んだルーカのワインを、今ラシーヌが輸入しています。そのことをルーカから聞き知っていたジュゼッペさんは、きっとわがことのように喜んでくださったことと思っています。 


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