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合田玲英のフィールド・ノートVol.23

公開日: : 最終更新日:2014/12/26 ライブラリー, 新・連載エッセイ, 合田 玲英のフィールドノート

Vol.23

《 インポーターのおしごと 》

 7月に一時帰国をしてちょうど2か月が過ぎようとしています。今回はラシーヌの事務所の仕事の一部をお伝えいたします。営業以外の業務の多くは、生産者とのやりとり、入港するワインのチェック、試飲会の準備などがありますが、そのなかの輸送に関わる部分を、ワインがどのように届くのかについて少しだけ詳しく書いてみようかと思います。

  ワイン生産者の一番の仕事はやはり、ブドウの栽培とワインの醸造です。しかし生産者の訪問をするとどこへ行っても、輸出にかかわる手続きなどのデスクワークもまた彼らの仕事量の多くを占めていることが分かります。

 ここでインポーター側の仕事としては、生産者とのやり取りの多くはメールですが、クロード・クルトワ、レオン・バラル、リヴェッラ・セラフィーノのように今でも電話とFaxしか使わない生産者も少しだけ残っています。

 また時期的なことを言いますと、8月に特にやり取りをしているのはヌーヴォーについてでしょうか。まず造ることができるのかどうか、造れるとしたら何千本造れるのか。それに合わせてヌーヴォーだけは航空機輸送なので、また別の輸送経路の手配をします。またそれ以外にも毎週のように様々な国、地方の生産者の元からワインが出荷されるので、それに合わせて輸送の手配を行います。

 名前を知っている方もおられると思いますが、たとえば委託先のJFヒレブラント社は、運送の手配(ワインを始めとする飲用目的の液体貨物を専門に)一手に引き受けている会社です。ヒレブラント社自体はトラックや船を持ってはいませんが、幅ひろく流通にかかわる実際の手段を持っている各会社、生産者のところへ積み荷を取りに行くトラックを持つ運送会社、各国の港にて積み荷をコンテナへとまとめるターミナル会社、海を渡り荷物を運ぶ船会社への手配を一括して行っています。インポーターがこれらの会社へ一つ一つ支持を出すことは出来ないので、当社はヒレブラントに生産者の元への集荷指示をだし、どこの港のコンテナへその他の商品と積んで欲しいといった依頼をします。ジョージアのワインに限っては、日本向け貨物輸送を手掛けている業者がそもそも少ないので、今のところ当社の輸入担当が現地の輸送会社と連絡を取りながら、現地輸送、ターミナル、船会社それぞれに直接指示をして手配を行っています。今回輸入分のジョージアのワインは、輸送用のリーファー・コンテナを使ってジョージア国内数か所で順次集荷を行いましたが、生産者が協力して幹線道路まで自分達のワインを運び、自分達の手でコンテナに積み込みしてくださいました。

 無事に生産国を出港したワインは約一か月強の航海を経て日本へ着きます。僕自身も前から気になっていたので航路を地図上に表してみました。航路は特に正確ではありませんが、だいたい図のようなルートを通っています。

world map

 久しぶりに世界地図を眺めるとヨーロッパと日本は小さいなと思いますが、それはおいておきまして。大西洋側の港を出発した船は、どれもジブラルタル海峡から地中海に入ってきます。海上輸送は陸上に比べ燃料費が安いので、トラックで南仏の港へ向かうよりは多少遠回りをしてでも船での輸送の方を取り、北フランスの生産者はル・アーヴルで、ドイツ、オーストリアの生産者はロッテルダムでコンテナを組んでいます。

 以下のことは以前のラシーヌ便りでも書きましたが、マルク・アンジェリによると、パリ南仏間の陸上輸送における二酸化炭素排出量よりもフランス日本間の海上輸送での排出量の方が少ないそうです。輸送船は排出量を少しでも減らすために以前の4分の3の速度で運航しているし、運送会社のホームページを見るとある航路間での一貨物に対する二酸化炭素排出量が計算できるようになっていて業界で強く意識していることが分かります。

 話を戻して、トルコとジョージアワインについてです。今回入荷したトルコワインは次回からはどうなるか分かりませんが、トラックでギリシャのピレウス港まで運び、ギリシャのワインとの混載となりました。イスタンブールでコンテナを組む方がシンプルかもしれませんが、コンテナを満載にしないと効率がすごく悪くなるので、どこかで他の便と混載する必要があります。ジョージアもトルコも今のところ輸出システムがヨーロッパのワイン生産国よりも整っていないので、毎回手探りでより良い方法を探している最中です。

 ジョージア便はポティ港から黒海を渡り、トルコのボスポラス海峡、マルマラ海、ダーダネルス海峡を通って、地中海へと出ます。その後、地中海から日本へ向けてのコンテナ船は、スエズ運河を通りインド洋へと出て、世界最大級のハブ港であるシンガポールでコンテナを積み替え、横浜または東京港へと到着します。細かいルートに関してはその時々のレートで一番安いルートで依頼をしているので、エジプトのダミエッタや、上海で積み替えを行う場合や、現地の港から東京から直接来る場合もあります。

 港へ到着したコンテナは倉庫管理会社の元へ届けられ、そこで始めてコンテナが開封されます。この開封作業をデバンニング(devanning)、略してデバンと言います。アイテム数が多い場合や、単純にケースの数が多い場合は倉庫会社の方たちだけでは大変なことがありますし、ケースをパッと見て発注通りの商品が来ているかどうかが分からない場合も多いので、立ち合いの必要があります。積み下ろし、の作業は冷房設備の整った作業場で行われます。

 コンテナももちろん冷蔵設備がついており、温度は14度に設定され、航海の間中の温度を記録する装置がついています。インドの南、シンガポールを通るときなど赤道近くを通るので、毎回荷がつくたびにパソコンでデータを読み取り、輸送中に大きな温度変化がなかったかを確認しています。

 倉庫に入ったワインはその後、通関を行い、検品作業を経て出荷されます。検品は業者の方々によって、一本一本行われ、ビン傷、ラベルの傷などのボトルの欠点、液漏れ、澱量などワインの状態によって区分されます。中にはボトル全体にカビが生えているものもあり、それらは検品業者に拭き取り依頼をするか、自分たちで拭き取ります。今の時期はほんの5分外気に触れているだけでボトルがうっすらと汗をかきますが、それもまたカビの原因となってしまいます。生産者の元へは冷蔵トラックが集荷に行くよう徹底されていますが、コンテナへ入る瞬間出る瞬間はどうしても外気に触れます。それもまたカビの発生原因かもしれません。フランスではボトルにカビが出ているということはセラーに湿度がある証拠でサービスの前に拭き取れば大丈夫だという人もいますが、なかなかそうはいきません。ラベルの貼り忘れなどもその都度生産者に問い合わせて、郵送するようお願いしています。

 ワインのケースは通常パレットに載せてコンテナへと積まれています。2アイテム以上載っている場合はそれぞれアイテムごとにパレットを分ける必要がありますが、これはそれほど大変ではありません。ごくまれに積載依頼量が多すぎて、コンテナ一杯に箱がバラで積まれていることがあり、この場合は倉庫の方も総動員で男性スタッフ女性スタッフ関係なく積み下ろしをします。

 ワインの輸入はデータの送受信、手配や指示ではなく実際のものを扱う仕事です。作業の大部分は肉体労働であって、だけれどもそれをすべて自分たちで行うことは出来ないので、各専門の業者にお願いしている。そしてそれに伴い多くの人が関わり、またその人たちが正確な仕事をしてくださっているおかげで、成り立っているのだと倉庫に行くたびに思います。

冷蔵設備付きのデバン所

冷蔵設備付きのデバン所

積み下ろしが楽なコンテナ

積み下ろしが楽なコンテナ

積み下ろしが大変なコンテナ

積み下ろしが大変なコンテナ

検品の様子。光に当てて細かい傷や澱の状態などを入念にチェックしています。初めて検品作業をしているのを見たときは目を疑いました。通関にかかわる仕事をしている人にしたら当たり前のことかもしれませんが、日本に輸入されるすべての商品の箱を開けて一本一本状態をチェックしているとは想像もしていませんでした。

検品の様子。光に当てて細かい傷や澱の状態などを入念にチェックしています。初めて検品作業をしているのを見たときは目を疑いました。通関にかかわる仕事をしている人にしたら当たり前のことかもしれませんが、日本に輸入されるすべての商品の箱を開けて一本一本状態をチェックしているとは想像もしていませんでした。

コンテナ背面の冷房設備。温度は一括コンピューター管理でなく手動入力なので、ごくたまに間違いが起こることがあります。

コンテナ背面の冷房設備。温度は一括コンピューター管理でなく手動入力なので、ごくたまに間違いが起こることがあります。

ボトルにうっすらと出ているカビ。自分たちで拭いてしまおうか、お金を払って検品業者に検品と同時に拭いてもらうか悩ましいところ。

ボトルにうっすらと出ているカビ。自分たちで拭いてしまおうか、お金を払って検品業者に検品と同時に拭いてもらうか悩ましいところ。

 

合田 玲英(ごうだ れい)プロフィール
1986年生まれ。東京都出身。≪2007年、2009年≫フランスの造り手(ドメーヌ・レオン・バラル:写真左)で収穫≪2009年秋~2012年2月≫レオン・バラルのもとで研修 ≪2012年2月~2013年2月≫ギリシャ・ケファロニア島の造り手(ドメーヌ・スクラヴォス)のもとで研修 ≪2014年現在≫イタリア・トリノ在住

 
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