合田玲英の フィールド・ノートVol.91 《 アリゴテからみるシルヴァン・パタイユ 》
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気候変動への対応のためか、それとも流行によるものか?近代のワイン市場からは取り残されてきた品種が、いま注目されています。人間の選択によってブドウ品種が淘汰されてきた歴史の中で、なぜ現在シルヴァンがアリゴテに注力するのか、本人にインタビューしました。ブルゴーニュの中でのアリゴテにとどまる話ではなく、各地で広がる、地品種や人為的介入の少ないワイン造りについて、また高樹齢、セレクション・マサル、果実の成熟についての知識がちりばめられています。
今年で46歳となるシルヴァン・パタイユは、1999年にマルサネでドメーヌを興しました。一時期は教鞭をとり、コート・ドールの複数のワイナリーでは今なおコンサルティングを行いながら、自身のワインを造っています。というわけで、自分のワインに用いている醸造方法以外についても、深い知識を持っています。
そのシルヴァンが現在ブルゴーニュの品種の中で最も情熱を傾けている品種が、アリゴテなのです。ドメーヌの生産量の5%にも及びませんが、「アリゴトゥール」(https://bit.ly/3yyKvof)というアリゴテのみに絞った生産者団体を立ち上げるなど、精力的に啓蒙活動に努めています。
シルヴァン、語る
【アリゴテという品種】
アリゴテは、ピノ・ノワールとグエ・ブラン(生産量が多く酸味の強い白品種)の交配品種で、シャルドネと同じように各畑の個性を反映することが出来る品種です。私は5つの区画のキュヴェのアリゴテを造っていますが、まるでスポンジのようにテロワールの個性を吸収します。アリゴテという品種は全く流行から取り残された品種であって、20世紀にも新しく植樹されることがほとんどなかったので、ほとんどが1930~1960年の間に植えられた古樹ばかりです。
例えばシャン・フォレでは、現在はピノ・ノワールが大部分を占めています。本当はシャン・フォレには多くのアリゴテが植わっていましたが、ヴィニュロンの誰もその価値を信じることができませんでした。市場の興味も惹かず、地価もピノが植わっている方が高いので、80年の樹齢を超えるアリゴテの古樹が今もピノ・ノワールへと植え替えられています。だからこそ、アリゴテで高品質なワインが出来ることを示し続けることが大事なのです。
オーヴォンヌ・オ・ペペという畑には、じつはガメも植わっていますが、あまりよい働きぶりとはいえません。ガメは石灰質土壌の、少なくとも自分の持っている、斜面の畑には向かないようで、斜面の下側で表土が分厚い方がいいようです。
このようにマルサネには昔から、現在ではほとんど見かけない品種が植わっていたので、私の若い頃には1960年代のアリゴテを飲む機会に恵まれました。特別な醸造法ではなかったかもしれませんが、どれも一口ごとに唸らされるワインでした。そのような素晴らしいアリゴテが優れた斜面畑から姿を消してしまったため、僕らが現在飲むことが出来ないのは本当に残念なことです。
【アリゴテ・ヴェールとアリゴテ・ドレ】
アリゴテには、アリゴテ・ドレ(「黄金色」)とアリゴテ・ヴェール(「緑色」)と呼ばれる品種がありますが、この2つの品種が実際に存在しているという説には正直懐疑的です。アリゴテ・ドレでも若木の時や収量が多い場合、完全に熟成するまでは緑色をしていますが、収穫量を落としてしっかりと熟させれば黄金色へと変化します。収量に応じて色合いも変わるという風に考えるのが、自然なのです。どんなアリゴテのクローンでも、150hl/haもの大収量をめざす栽培をすれば、緑色で大粒の水っぽい果実をつけるでしょう。一方、短く剪定をして収穫量を抑えて果実味を凝縮させれば、黄金色になります。
つまるところ、造り手がどのようなワインを造りたいか、そしてどのようにブドウを栽培するかによるのです。収穫量の多いクローンや少ないクローン、繊細な味わいのクローンがあるのは事実ですが、収穫すべきタイミングのアリゴテは全て黄金色、ほとんどオレンジ色に近い色をしている、と私は考えます。
多産型クローンが選別された結果、現在アリゴテという品種は緑色で大粒などと説明されたあげく、“アリゴテは大した品種じゃあない“などと貶されることもあります。しかし、どんなブドウの栽培にも向かない土地で、150hl/haもの収穫をするとしたら、どうすれば良いワインが出来るでしょうか? 平地に植えられたシャルドネからは偉大なモンラッシェはできないし、平地のピノ・ノワールからは、ロマネ・コンティはできません。なぜアリゴテだけが、水はけが悪い平地で樹勢が強くなりすぎる畑をあてがわれることに安住しなければいけないのでしょうか。
私が畑を購入した畑でも、以前の栽培家は収穫量が非常に多く、果実は常に緑色でした。私の現在の収量は高くても30hl/haですが、どれも収穫前には黄金色へと変化します。それから2021年4月、初めて自分でアリゴテの植樹をしましたが、ゴブレで仕立てるつもりです。セレクション・マサルの若木のアリゴテがどんな色で、どんな味のワインができるのか、4年後が楽しみです。
【収穫のタイミングについて】
毎年収穫期が近づくと、何度も畑に行って味見をします。分析機器は使わず、果皮の色や様子、実や房がすぐ取れるか、果汁や果皮の味を自分の感覚で判断します。糖度は気にせず、ブドウが熟れているのかどうかです。なにもブドウに限った話ではありませんが、どんな果実だって、熟れていないと固いし、苦くて酸っぱいわけで、成熟の盛りにある果実の芳醇な香りは持ちあわせません。
シャルドネやピノ・ノワールと比べて、また、ほかの生産者と比べて、自分のアリゴテの収穫時期が大きく違うことはありません。ちなみに、年々気候が暖かくなり、いわゆる気候の温暖化と呼ばれる中で、アリゴテは存在感を増していくと思います。なぜならアリゴテは成熟した後に収穫できる期間が長いからです。シャルドネは成熟するとすぐに酸が落ちてしまうので、収穫のタイミングがとても正確でなければいけません。
コート・ド・ボーヌとコート・ド・ニュイでは、収穫時期にほぼ1週間の時差があります。収穫期になると私は、コンサルタント先のコート・ド・ボーヌのワイナリーにも通います。そこで例えば、シャサーニュのシャルドネに過熟の兆候が見られると、数日後にはマルサネでも同様の変化が起こり始めるだろうと、用心しなくてはなりません。2020年は週末にサン・トーバンのワイナリーの様子を見にいって、腐敗の始まる兆候を見つけたので、翌週の水曜日には何とか40人の収穫人を手配しました。大変でした・・・。
収穫前のアリゴテは、最低でも黄金色やオレンジ色になっていなければなりませんが、更に成熟がすすんで紫色がかったブドウも気にせず使います。最近はあまり濃いワインは好まれませんが、より濃厚なワインができます。紫色は腐敗の最初の段階ではありますが、マコンのヴィレ・クレッセのブドウもしばしばこのような熟度での収穫がされます。高樹齢やセレクション・マサルであることから、成熟度にもバラつきが生じ、熟す手前、ちょうどよい熟度、かなり熟した状態となります。これらのブドウを一緒に醸造することで、ワインに複雑味をもたらします。
2013年VTは遅熟な年で、紫色の白ブドウが醸造前にはじかれていたのを目にしましたが、私にとっては適切な成熟の範疇でした。ちょっとボトリティスもついていましたが、不快な香りは与えず、果実を凝縮させるように働きました。
遅熟な年で言えば、2006年もそれに当たり、成熟を待ちすぎて多くのブドウを駄目にしてしまいました。次が2010年、2度は間違えまいと幾分早く収穫しましたが、それでもまだ、少し過熟気味のブドウが多かったように思います。そして2013年は良いタイミングで収穫ができました。
成熟後の収穫期間が比較的長いアリゴテですが、年によっては成熟自体が遅く、成熟したと思ったらすぐに腐れが始まる年もあるので、気をつけなければいけません。
【栽培について】
ビオロジック栽培を試したのは2007年のことで、まずはビオロジックの栽培によって何が変わるのかを見るために自社畑の半分で試しました。そして翌年にはすべての畑を切り替えました。と、同時にピエール・マッソン(2018年死去)の素晴らしいコンサルタントのもと、ビオディナミを2haの畑で試し始めました。ピエールが手取り足取り教えてくれ、今では彼の息子のヴァンサンが引き継いでくれています。2008年は5つの畑をそれぞれ2つに分け、ビオとビオディナミの管理の違いを観察しました。そして2013年にはすべての畑でビオディナミ栽培へと切り替えました。
栽培方法の違いは、最初の年からすぐに表れました。ワインからその違いを感じるには時間がかかるものですが、ビオディナミ栽培を導入した畑の表土は、ふかふかで土がべたつかなくなり、空気が多く含まれていました。土壌の構成が初年度からこれほどまでに大きく違いが出たことは驚きでした。
【仕立てについて】
他の多くの品種がそうであったように、アリゴテはゴブレで仕立てられてきましたが、ゴブレは機械による作業が難しいため80年代にほとんどがギュイヨ―に仕立て直されました。クロ・デュ・ロワやシャン・フォレの一部のように、ゴブレで残っているところもあります。今年は0.40haのアリゴテを植えましたが、セレクション・マサルで、ゴブレで植樹しました。また、ギュイヨ―を少しずつゴブレに仕立て直したりもしています。アリゴテは19世紀には、小石の多い丘の斜面に、ゴブレで植えられてきました。ゴブレのように短く剪定すると小さな房ができ、長く剪定すると大きな房ができます。短い剪定でのブドウ畑を残していくことはとても重要です。収穫量が落ちすぎることも正直ありますが、大きな問題ではありません。
【樹齢について】
良いワインを造るには、少なくとも樹齢が15年は必要でしょう。2009年にクロ・デュ・ロワという区画にシャルドネを植樹しました。初収穫をした2012年から美味しくはありましたが、それはマルサネ・ブランとしてはおいしいという意味です。決してマルサネ・ブラン・クロ・デュ・ロワではありませんでした。クロ・デュ・ロワの熱さを感じさせる鉱物感や、火薬のニュアンスがほんの少し現れたのは2019年VTのことです。なので、やはり15年もしくは20年は樹齢が必要だと思います。
【白の醸造について】
白の醸造に関しては、アリゴテ、シャルドネ、シャルドネ・ロゼ、ピノ・グリ(2017年に植樹)など、全ての品種において同じです。
ブドウは10kgの籠で収穫され、除梗せずにローラーで破砕され、主に垂直プレスで5~7時間かけて搾汁。よく絞れるように2回くらいフォークで入れ返しを行い、冷却とデブルバージュはせず、一度大きなタンクに入れます。そのタンクで醗酵が始まったら、樽へと移します。アリゴテは通常350Lの樽で醗酵を行います。
亜硫酸は、以前は醗酵や熟成の段階でいれていましたが、現在は瓶詰め時に入れるのみで、大体30mg/Lくらいでしょうか。
2018年のように醗酵が難しい年の場合は、添加量が少し多めです。2018年のように潜在アルコール度数が顕著に高い場合は、醗酵がうまく進まない場合が多いです。
亜硫酸無添加での醸造については、2013年に初めて試しました。醗酵前添加量を0、1、3、5g/Lの4つの樽を用意し、醸造がひと段落したところで、皆でブラインド試飲しました。結果は歴然としていて、個人的には1gも悪くはありませんでしたが、0gの表現力には驚かされました。その結果、2014年からは白赤全てのキュヴェにおいて、醸造中の亜硫酸添加を辞めました。
白については醸造後、最低1年間は熟成させて、2018年は18カ月以上熟成させたましたが、その後3~9カ月間タンクで寝かせておきます。コラージュはせず、フィルターもほとんどしないので、澱が沈殿しきるまで待ちます。タンクの底から10㎝くらいの澱の多い部分は、レンチキュラー・フィルターで大きな澱を取り除きます。私のワインはくぐもりが比較的ある方かもしれませんが、そもそもほんの少し生じる澱については、好意的にとらえています。瓶熟成をする上でも少量の澱は重要な要素であるし、澱を完全に取り除くことを目指していません。
【各畑の違い】
◆シャン・フォレ
熱さを感じるテロワールで、収穫が常に一番早い区画です。斜面の下の方にあり、茶色い表土は3-4mほどだが、小石を多く含んでいるので排水性があります。アプリコット、洋ナシのようなニュアンスが出やすいです。
◆シャルム・オー・プレートル
全体の収穫時期の最後の方に収穫。白いマルヌ(泥炭層)の、涼しい鉱物感。
◆クロ・デュ・ロワ
1932年植樹の、最も樹齢が高い区画の一つ。グレーズ・リテと呼ばれる小石の堆積層で、コート・ドール全体でもあまり見かけない土壌の種類。爪くらいの大きさの小石がたくさんあり、表土の色は赤みを帯びていて、下層土はマルヌ。味わいは熱さも感じるが、マルヌ由来の軽やかさも持ち合わせており、香りとアタックの瞬間までは、リッチで重いワインのようだが、非常に強い塩味が後味まで続く。
◆ブーズロン
2018年にビオロジック栽培をしている友人からブドウを購入できたが、生産量は1樽のみです。できれば畑を購入したいところです。味わいはまず、私のいるコード・ド・ニュイとは大きなコントラストがあります。温かみがあって、丸みを帯びたワインができるエリアで、白であっても芯が強くて構成力のあるワインができます。それはまるでダイヤモンドとでもいうべきで、コート・シャロネーズらしい、塩味があって、滑らかで、エレガントで、モンラッシェの中で比べるのならば、ピュリニーのような雰囲気をもっています。白っぽい土壌の、コート・ド・ニュイにはない美しさにあふれています。
もし、自分のコート・ド・ニュイの白ワインの後に飲んでしまうと、ただ、軽くて、弱弱しいように誤解される恐れすらあります。
◆レ・オーヴォンヌ・オ・ペペ
シャン・フォレと同じ構成の土壌だけれど、表土の厚さは50㎝ほどです。下層土には粘土を含んだマルヌがあり、ワインの味わいに、広がりとふくよかさを与えます。マルヌは石灰岩よりも冷たいので、収穫が比較的遅くなる傾向にあります。酸のもちもよいので、果実の成熟を待つことでより果皮の成分が熟し、タンニン、苦みや、厚みがでてきます。
オーヴォンヌは村に近い畑で、斜度もほとんどないですが、全ての区画の総括のようなテロワールで、クロ・デュ・ロワの熱い鉱物感、シャルム・オー・ブレートルの涼しい鉱物感、太陽を感じるシャン・フォレの様々な要素を垣間見ることが出来ます。
多くの場合、一番最後に父や子供たち、家族みんなで1時間30分ほどかけて収穫し、その後みんなでコート・ド・ブッフを食べます。
【アリゴテの熟成について】
私のアリゴテのように、収穫量を落とし、かなり熟してから収穫させる場合、瓶での熟成は比較的ゆっくりと進むでしょう。2013でもまだ若いと思います。特にグラスの中でも待つ必要があります。デキャンタをしてもよいのでしょうが、個人的には、ゆっくりとグラスの中の変化を楽しみたいところです。20年は容易に、30年以上でも問題なく持つと確信しています。
熟成の仕方については他の品種と比べてみても面白いかもしれません。シャブリのシャルドネの火打石の香りのような、もしくはロワールのプイィのソーヴィニョン・ブランの要素も出てきます。ソーヴィニョン・ブランらしい第一アロマが熟成によりがそがれていくような。30年経ったソーヴィニョン・ブランのように、ペトロール香、薫香、苦みと塩味が現れるでしょう。
【近年のVTの特徴】
◆2013
とても遅熟な年でした。春が来るのが遅かったので発芽も遅く来ました。夏も涼しく、雨も多く降りました。白の畑では、9月末から10月の初めに収穫が始まりましたが、遅く収穫するのは嫌いではありません。ミネラル、フローラル、まっすぐな味筋ですが、厚みが出てくるまでには時間がかかるでしょう。
2013年は果実が未熟のままの時間が長く、最後の瞬間に一気に成熟したとおもうと過熟になってしまう傾向があった。コンサルタントをしているおかげでコート・ドールの南部にもいくけれど、サン・トーバンのある造り手のシャルドネが過熟で紫色を帯びているのを見た時に、考えていたよりも1週間早く収穫をすることにしました。
◆2014
夏は暑かったのですが、6~7月には雨が多く、7月の時点から灰カビ病が見え始めました。貴腐菌も比較的早くつき初め、9/15頃には収穫を始めました。酸味とエネルギーを秘めたワインの出来た年だと思います。気品が備わり緊張感とバランスのある年で、古樹においては比較的収量も多かった。
◆2015
夏の乾燥がひどく、フェノール、タンニン、果実味が印象的で丸い味わいでした。白ワインでもよく色が出ました。幸運にも後味の酸味が残っていたので、酸の骨格が感じられる。少し2005年のようだと言えるでしょうか。丸みがあり、リッチで、グラスの中でも瓶熟成でも、ゆっくり飲んでいただきたいと思います。
◆2018
2018、19、20はほとんど同じような気候のプロフィールで、高い気温と渇水ストレスが顕著でした。高温よりも水不足の方が深刻な問題で、ブドウ樹もたくさんは実をつけず、果実の成熟もゆっくりで、葉も多く失いました。醗酵もここ最近の中では、一番ゆっくりとすすみました。
◆2019
2018~20の3つのVTの中では、2019が比較的早く飲めると思います。ある程度熟成も出来るし、すぐに飲んでもおいしい。熟成させるべき、早飲みワイン(Vin de garde à boire tout de suite.)というのは冗談ですが、悪くない年です。
◆2020
はなぶるいと、水不足が収量減の大きな理由でした。全体で10~20HL/haくらいの収量でしょうか。2020はコート・ド・ニュイ全体で収穫量の少ない年でしたが、特に白が良い年でした。赤はまだ閉じていますが、果皮の成分がのっていて、熟成させることもできる良い年だと思います。
◆2021
ご存じのように4月にひどい霜害がありました。シャルドネもアリゴテもほぼ同時に発芽しますが、ほとんどの芽が被害を受けました。これから夏に向けてどうなっていくか、祈るしかありません。
私の夢は、コルトン・シャルルマーニュやモンラッシェのように昔はたくさんのアリゴテが植わっていた畑にもう一度アリゴテを植えることです。アリゴトゥールというアリゴテを造る生産者の団体をつくったのですが、その内の一人が1927年のムルソー・アリゴテを見せてくれました。ムルソー・アリゴテと書いてあったのです。つまり、彼女のおじいさんはムルソーの、しかもアリゴテであるということに価値を見いだし、それを伝えたかったということなのです。
なにも私がグラン・クリュを所有して、そこにアリゴテを植えなくても、若い世代のヴィニュロンが続いてくれることを願っています。大ドメーヌがムルソーでアリゴテを造って、味と品質さえついてくれば、シャルドネよりも高く売ることだってできると思います。今は少しずつそういう風潮になってきました。巨大な資本を持ったワイナリーがグラン・クリュの畑をたとえば10ha持っていたとして、そこにシャルドネだけでなく、30aでもアリゴテを植えたとしたら、それは大きな一歩となるでしょう。
他にもピノ・グリ、ピノ・ブーロ、シャルドネ・ロゼのような素晴らしい品種がブルゴーニュはまだまだありますが、ピノ・ノワールやシャルドネ以外の品種を植えることへの機運は高まっているように感じます。ある若いヴィニュロンがコルトン・シャルルマーニュにアリゴテを植えたいと話していることも耳にしました。お金のかかる話だし、そこにアリゴテを植えるというのはただただ情熱の発露でしかありませんが、とても面白い取り組みだと思います。若い世代のヴィニュロンに期待しています。
~プロフィール~
合田 玲英(ごうだ れい) 1986年生まれ。東京都出身。
2009 年~2012 年:ドメーヌ・レオン・バラル(フランス/ラングドック) で研修
2012 年~2013 年:ドメーヌ・スクラヴォス(ギリシャ/ケファロニア島) で研修
2013 年~2016 年:イタリア/トリノ在住
2017 年~:日本在住
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