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合田玲英のフィールド・ノートVol.69 《 2019 年 4 月販売開始ワイン 》

公開日: : 最終更新日:2019/04/19 ライブラリー, 新・連載エッセイ, 合田 玲英のフィールドノート

【パゴ・デル・ナランフエス】スペイン/アンダルシア/グラナダ

 

 アンダルシア州は、ジブラルタル海峡を挟んでアフリカ大陸にも近いため、イスラム文化の影響を多く受けており、他の地域にはない独特な哀愁感が漂う。スペイン最南端の州であり、最も気温の高い地域であるが、シエラ・ネバダ山麓のグラナダは、町自体が標高700mにあり、伝統的なブドウ畑は標高1000mを超す。
 アントニオ・ビルチェスが造る亜硫酸無添加ワインの味わいは、時として長期ビン熟成の必要性を感じさせる。けれども、2015年VTからステンレスタンクでの熟成に切り替えたため、味わいはより安定している。しかし、その素朴な味わいは変わらず、栽培の見事さとアントニオの何とも言えない人柄の良さを感じさせる。新作であるピノ・ノワールのロゼは、優しい甘みが心地よい。

 

【デスセンディエンテス・デ・ホセ・パラシオス】スペイン/ビエルソ/コルヨン

 

 パラシオス家が追求する、「香気ゆたかで強烈な味わいがあるが、デリケートで独特な品質をそなえる」ワインを造るための条件は、急斜面・高樹齢のブドウ・顕著なテロワール。この3条件が、ビエルソには備わっている。2016年に完成した、4層に分かれる新しいセラー(2017年VTから醸造)は、アルバロとリカルドの叡智が結集した作品であり、人にとっても働きやすく、ワインにとって無駄なエネルギーがかからない設計となっている。設計者はスペインで主に活動し、ロサンゼルスの大聖堂の設計などで知られる、ホセ・ラファエル・モネオ。このような建築家に設計を頼める一族でありながら、ワインメーカーであるリカルドは、気のいいお兄ちゃんといった雰囲気。スペインの最も有名なワイナリーの一つであり、生産量も40万本と少なく無いにもかかわらず、その職人技と注意はベースのキュヴェにあたるペタロスでも薄まっていない。

 

【ドメーヌ・スクラヴォス】ギリシャ/ケファロニア島/リクスーリ

 

 ワインを作り出して20年、ようやくガレージではない、満足のいくセラーも手に入り(2016年)、父親の代では慣行農法だったブドウ畑も、バイオダイナミック農法なども取り入れた栽培を、家業に戻ってきてすぐに始める。そのおかげで畑は現在では活力にあふれている。ロボラを初めとする、樹齢の高い地品種から出来上がるワインには、他の地域のワインには無い、力強くも繊細なアロマを感じる。
 ギリシャでは、白ワインを熟成させる文化があまり無いようで、すっきりとしたスタイルのワインを翌年のVTが出てくる前に飲み切ってしまうそうだ。そして次のVTが出てくると以前のVTは全く売れなくなってしまうそうで、エフラノールの2016年VTの再度のオファーを受けた。こちらとしては、ミュスカ系品種の華やかなアロマが、落ち着いて飲み頃になってちょうどいいくらいなのだが、ギリシャの日差しの下で、キンキンに冷やして飲むには向かないのかもしれない。

 

【ドメーヌ・ティミオプロス】ギリシャ/ナウサ/トリロフォス

 

 現在ワインを造っている、アポストロス・ティミオプロスの父は、ナウサエリアで最も有名なブドウ栽培家として知られていた。2004年にアポストロスが醸造学校を卒業後に、栽培を引き継いで醸造を始め、徐々に近隣の畑を買っていきながら、現在では30haのブドウ畑を所有しており、彼のワイナリーのあるトリロフォス村の丘の畑全てを所有している。畑の周りには小川や森などの自然しかなく、獣害は悩ましい問題だが、オーガニックをしている畑と森しかないという環境は、ブドウ栽培にとっては最高だ。生産量にしてはあまりにも小さなセラーでカジュアルなものから、上級キュヴェまで、完成度の高いワインをつくっている。濃くて酸っぱいというイメージの強いクシノマヴロという品種だが、樹齢の若い樹のブドウから造られた、ロゼと、ジューヌ・ヴィーニュ・ド・クシノマヴロは、強いはずのクシノマヴロの酸が抑えられ、心地よいアフターテイストを与えてくれる。近年は、2017年の収穫中に亡くなった、ハリディモス・ハツィダキスの遺志を継ぎ、サントリーニ島での栽培・醸造指導にも力を入れている。

 

【レ・ドロミー】フランス/ジュラ

 

 園芸専門学校を卒業後、ジュラの名手、ジュリアン・ラベに師事したセリーヌ・ゴルマリーが2008年に創業したドメーヌ。初年度から全ての畑にビオディナミを適用している。2010年には銘醸地シャトー・シャロンのすぐ北になるパッスナン村とフロントネィ村に計3.8haに畑を拡張。所有する畑の半分以上が1939年、60年、70年植樹のシャルドネ、サヴァニャン、トゥルソーなどの古木であることが、彼女のワインの豊かな表現力の大きな鍵となっている。収量はわずか20hl/ha、亜硫酸総添加量も20mg/Lにとどめられるよう、細心の注意を払い醸造される。ドメーヌ名の由来は、イタリア・南チロル地方のドロミテ山塊、およびアルザス、ジュラにも局所的に見られるドロマイト(苦灰土)に由来。彼女の畑にも豊富でサヴァニャン、プルサール、トゥルソーを理想的に生育させるという。ボルドー液の散布を減らすことも重視し、有機飼料で育つ山羊の乳を使った煎じ薬も併用する。
 以前は住居に併設された、木造の半地下のセラーであったが、お世辞にも作業のしやすい環境ではなかった。2017年に小さいながらのセラーを増築し、少しずつ体制を整えている。

 

【ドメーヌ・ド・ラ・コンブ・オ・レーヴ】フランス/ジュラ

 

 樹齢100年を越えるプルサールの古木が、薄い表土の岩だらけの急斜面に残る0.4haの区画。“夢見る谷(=コンブ・オ・レーヴ)”と呼ばれる美しい名のついたこの谷の畑に、当主のグレゴワール・ペロンが巡り会い、2010年にドメーヌを立ち上げた。グレゴワールは当時既に、ジュラ自然派の名手ジャン・フランソワ・ガヌヴァで3年の研修後、ブルゴーニュ、アメリカ、ニュージーランドなどでも十全に醸造家としての経験を積んでいた。大半の畑は混植されており、新たに購入した畑には、あえて周囲と異なる品種を植えるなど、混植・混醸によるワインの表情の豊かさの追求でも、注目される存在である。冬は畑で家畜も放牧。一部はジュラ、アルボワ地区でビオディナミ栽培のブドウも購入し醸造する。この地方の固有品種で、アルプス特有の高山性辛口白ワインを生むジャケールのみ、100%この品種で造り、奥ゆかしく慎ましいフラワリーさを表現。所有する畑はわずか2.2ha。
 グレゴワールが、多くのワイナリーでの経験ののちにたどり着いたのは、亜硫酸無添加のワインであり、落ち着くのに時間のかかる時もあるが、時間をかければ、必ず答えてくれるエキスと底力を持っている。エチケット左上には、スタンプが押してあり、羊のスタンプは自社栽培のブドウ。トラックのスタンプは買いブドウであることを表している。

 

~プロフィール~

合田 玲英(ごうだ れい) 1986年生まれ。東京都出身。
2009 年~2012 年:ドメーヌ・レオン・バラル(フランス/ラングドック) で研修 
2012 年~2013 年:ドメーヌ・スクラヴォス(ギリシャ/ケファロニア島) で研修
2013 年~2016 年:イタリア/トリノ在住
2017 年~:日本在住


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