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ラチェーミ:プリミティーヴォの知られざる本質

2026年5月、プーリア州のワイナリー、ファタローネの当主パスクアーレ・ペトレーラが来日しました。滞在は3日間と短いものでしたが、日本の市場と飲み手を知り、同時にファタローネのワイン造りを伝えるため、各試飲会で熱心に説明をしてくれました。なかでも彼が特に力を込めて語り、来場者の関心を集めたのが、プリミティーヴォ種の二番果、ラチェーミについての話でした。本稿は、複数のイベントで語られた内容をもとに、ラチェーミの話題を中心に再構成したものです。

「プリミティーヴォという品種には、大きく2つの特徴があります。
1つ目は、果皮が薄いこと。
2つ目は、ラチェーミ(二番果)をたくさんつける品種だということです。

1つ目の特徴に加え、醸造前の完熟したプリミティーヴォは酸化に非常に敏感で、手作業での収穫が不可欠です。機械収穫によって果粒が傷つけば、酸化や望ましくない発酵のリスクが高まります。ファタローネでは現在12haのプリミティーヴォを栽培しており、収穫人は20人を超えますが、それでも収穫には2週間ほどかかります。そして収穫の間にもプリミティーヴォの成熟は進み、たちまち過熟してしまうことでしょう。

しかし、そこで2つ目の特徴であるラチェーミの存在が鍵となります。ラチェーミとは、一番果とは別に副梢に形成される果実のことです。プリミティーヴォは早熟な品種として知られていますが、それだけでなく、このラチェーミを多くつける性質を持っています。地中海周辺にはさまざまな品種がありますが、これほどまでに二番果をつける品種は確認されていません。

一番果が熟す頃、ラチェーミはまだ緑色で、収穫できる状態ではありません。しかしその時、ブドウ樹では何が起きているかというと、一番果が十分に成熟すると、ブドウ樹はそこへの養分供給を弱め、次にラチェーミへと栄養を送りはじめます。これにより、一番果が過熟することを防ぎ、酸と香りを保ったまま収穫することができるのです。ジョイア・デル・コッレでは、ラチェーミの収穫は早くとも10月に入ってからで、9月初めに行われる赤ワイン用の一番果の収穫量が45〜55hl/haであるのに対し、ラチェーミの収穫量は10hl/haほどです。

 

 

 

ファタローネではグレコから白ワインと1種と、プリミティーヴォからは以下の3種類のワインを生産しています。

・IGT Puglia – Teres
 IGTプーリア テレス

・Gioia del Colle – Primitivo
 ジョイア・デル・コッレ プリミティーヴォ

・Gioia del Colle – Primitivo Riserva
 ジョイア・デル・コッレ プリミティーヴォ・リゼルヴァ

1つ目のテレスは薄い色合いの、冷やして飲むこともできるロザートで、原料となるブドウにはラチェーミのみを使用しています。ロザートと言うには色が濃いのですが、ロザート・プリエーゼ(プーリア州のロゼ)と言えばこの色合いです。ですから実のところ、エチケットにもロザートとは表記していません。原産地呼称法上はプリミティーヴォ・ロザートと書くことも可能ですが、いわゆるプリミティーヴォ・ロザートは収穫量が赤ワイン用よりも多く、色合いも薄い。そして、ラチェーミを原料としていることまでが考慮された名称ではないため、プリミティーヴォ・ロザートという表記は好みません。

ラチェーミの収穫は10月に入ってから始まります。一番果が成熟するのは7月から9月初めにかけての暑い時期ですが、ラチェーミが成熟する頃には、夜間の気温がかなり下がります。よって、香りの構成はより酸が高くと清涼感のあるものとなります。その特徴を活かすために数日間のスキンコンタクトだけを行った、ロザートに仕上げます。

次に赤ワインについて。プリミティーヴォの一番果を原料とするのが、「ジョイア・デル・コッレ プリミティーヴォ」と「リゼルヴァ」です。最近は9月中旬から収穫を始めることが多いのですが、収穫には2〜3週間ほどかかり、醸造面では2〜3週間のマセレーションを行います。約10か月のタンク熟成の後、より熟成能力を感じるタンクを選び、12か月の樽熟成を行ってリゼルヴァとします。ジョイア・デル・コッレのプリミティーヴォにとって、また私たちファタローネにとって、赤ワインがただアルコール度数が高く、爆発するような果実味を持つだけでは十分ではありません。それでは5年以上熟成させることは難しいでしょう。高い酸を保ったブドウを収穫することが不可欠なのです。過熟したブドウを使わず、過度の抽出は行わず、樽のニュアンスも強すぎないこと。それこそが、その土地における品種の個性を表したワインだと考えています。

 

 

 

そして、ジョイア・デル・コッレのプリミティーヴォにおいては、ラチェーミの存在が品質を決定的に左右する鍵になるのです。一番果のより高い凝縮感を求めて、ラチェーミを落とす造り手もいます。しかし現在の気候では、そもそもその必要があるでしょうか。機械収穫の場合には、一番果とラチェーミを分けて収穫することができないため、ラチェーミは落とされます。そして、haあたり10hl(本収穫の1/5ほど)しか収穫できないブドウから、早飲みで軽快なスタイルの、価格も手頃なワインを造ることは、私たちの地域でももはやあまり見られません。季節労働者は、一番果の収穫が終わる頃には、他の地域や作物の作業へ行ってしまうからです。
このように収穫の終わりにもうひと手間かかりますが、ラチェーミを讃えこのテレスというワインを生産することは私たちにとってとても重要なのことなのです。」

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