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マリア&セップ・ムスターHP翻訳

 

 

 

物事を根本から変えるには自らの世界を新たに思い描く力と勇気が要る、そのとき手放すことは終わりではなく、始まりなのだ

 

 

一見単純なものへの希求の物語
More and more of less and less.

 

 

 

――― アプローチ

すべての始まり

新しい人生の始まりの日とは、かつての恐れがどこか奇妙なものに思えてくる日のことだ。私たちの場合それは、自分自身と私たちを取り巻く世界にもう少し近づきたいという、素朴な願いの中にあった。当時も今も変わらないのは、つながっていること、土との接点を失わないこと、そして振動するように生き生きとしたワインを造ることである。言い換えれば、自然の本質を見つけることにほかならない。この探求の終わりに私たちが得たのは、私たちは自然に身を委ねなければならない、という単純な気づきだった。

それはいつも簡単なことではないが、そのようにして生まれるワインは、この根源的な信頼を偽りなく映し出すものとなり、加えることよりも、むしろ取り除いていくことの結果として生まれるのだ。複雑でありながら、同時に純粋主義的でもあるワインである。

 

――― 回帰と帰郷

魂を宿すワイン

私たちは長年にわたり地球の半分を巡り、卓越した人々から学ぶことができた。そしてようやく幼少期を過ごした場所へと戻り、ついには自然という最大の師を見いだした。その明晰さと一貫性の前に、私たちは謙虚に頭を垂れ、自らの仕事をその手に委ねている。そこから生まれるのは、あるがままであることを許されたワインであり、多層的で、動き、変化していくものだ。整いすぎておらず、画一性もましてや無意味な均質さも存在しない。


 

大地と空、そしてそのあいだのワイン

私たちの世界は、あらゆるものにはそれぞれの秩序があるという観念に深く貫かれている。しかし、そのような秩序は実のところ存在せず、少なくとも常に正しい答えを示しているわけではない。私たちの友人であり芸術家であったベッポ・プリーム(Beppo Pliem)は亡くなる少し前に、余計なものを削ぎ落とし本質に向き合う中でその答えを地平の彼方に見いだした。「More and more of less and less.」という言葉によって、彼は自身の感覚を言葉とイメージに結びつけたのだ。それ以来、彼の作品は私たちのボトルを飾り、大地と空とブドウのあいだにある調和のあり方を、訴えかけ続けている。これらの関係性の中で生まれるワインは、私たちが思い描く自由と責任が、具体的なかたちとなって現れたものなのだ。

 

 

【ERDE】大地:私たちの歴史の土台であり、祖先の土地であり、修練の場でもある。そこから自然への信頼が芽生え、凝り固まった思考様式を手放し真に重要なものへと向かう勇気が生まれる。それは目覚めとともに始まり、やがて単なる受容から、理解と意識的な受け入れへと変わっていく過程である。

――― 土壌への誓い

未来への約束

地質学的に見れば、私たちの土壌は粘土質とシルト質の堆積物からなり、その下には、この地域で「オーポク」と呼ばれる石灰を含むマールの基盤が広がっている。それは、温かみがありながらも結晶のように澄んだワインの基礎となる土壌である。しかしそれ以上に、この土壌は私たちの未来であり、子どもたちの未来でもあるのだ。それを健全な状態のまま次の世代へ引き継ぐことこそ、私たちにとって最も大きな責任である。だからこそ私たちは、ブドウ畑を一つの生きた有機体として捉えている。私たちの行うすべては、土壌、植物、そして動物の生命力を保ち続けるためのものだ。

こうして年月を重ねるなかで、「多くを求めずとも成り立つ」ひとつの緊密なシステムが形づくられ、その中で私たちは自然からの道しるべを読み取ることを学んできた。私たちはインドやオーストラリアで過ごした日々を思い出す。そこで初めてバイオダイナミック農法に出会い、生命あるものを無条件に求め続ける探求を始めたのだった。それは土壌の中に、植物の中に、そして最終的にはワインの中にも現れる。それを育み、守り続けることこそが、私たちにとっては大切なことなのだ。そのために私たちは、自然のあらゆる変化を注意深く見つめ、それを支えながら、自らもまた動き続けている。
私たちは2003年からバイオダイナミック農法団体デメター(Demeter)のメンバーとなっている。

 

 

【REBE】ブドウ樹:私たちは、望みうるかぎり最も美しい場所のひとつに暮らしている。ブドウ樹は根を下ろし、年ごとに再び光へと向かって育っていくのだ。畑は私たちの住まいを四方から取り囲むように広がっている。まるで自然が、この特別な場所を、ワインが生まれていくための遊び場として私たちに託してくれたかのように。

――― 穏やかな仕立て

万物は移ろう。されど、変わらぬものもある

イリュリア気候(シュタイヤーマルクからスロベニアにまたがる地域の気候)の夏は暖かく、冬はほどよく冷涼だ。近くにそびえるコーラルペ連峰から吹き下ろす風が、夏季も涼しい夜をもたらし、私たちは十分に熟したブドウをゆっくり摘むことができる。私たちのブドウ樹の仕立ては、この土地の土壌と気候条件に完全に適応している。その知恵は、世代から世代へと受け継がれてきた。

私たちはこの仕立て方を「一本ワイヤー仕立て」、あるいは「反転仕立て」と呼んでいる。その本質は、かつてまだ木々に絡みつきながら上へと伸びていた原初のブドウ樹の生育のあり方を模したものであり、その枝は自由に垂れ下がりながら広がることができる。今日では、ブドウ樹は栗の木の支柱に沿って育ち、およそ1.80mの高さで一本のワイヤーに導かれている。この仕立て方は実績を重ねてきた。というのも、土壌の個性をこれほどまでに際立たせる仕立て方は、ほかにはほとんどないからである。私たちはバイオダイナミックの調剤や、植物・鉱物・動物由来の成分から作られた煎じ薬を畑に施すことで、ブドウ樹の生命力と成長を支えている。そうして自然は、小粒で芳香の高いブドウを私たちにもたらし、それが個性豊かで複雑なワインの基盤となるのだ。

 

 

【LUFT】風:私たちの仕事のあり方には大きな自由が宿るが、同時に大きな不確かさも伴う。自然は常に予測可能ではなく、独自の法則に従う。それでよいのだ。あまりに確実さが過ぎれば、可能性に目を向ける視野を狭め、変化を妨げてしまう。この不確かさの報いとして生まれるのが、個性と生命力、そして確かな表現力を備えたワインなのだ。

――― 忍耐と寛容

時間と時機について

ワインを造る者には、忍耐と、適切な瞬間を感じ取る感覚が必要である。それはセラーでの仕事にも、ブドウ畑での仕事にも同じように当てはまる。ブドウの果実を丁寧に扱うこと、果汁を自然発酵に委ねること、木製の容器を用いることを好むこと、そして長い樽熟成。これらはすべて一つの全体的な考え方の一部であり、その目的は、自然の働きを妨げず、ワインがワインへと成っていく過程に、自然が必要とするだけの時間を与えることである。

何かを加えるのではなく、むしろ取り除くこと。過度に介入するのではなく、やさしく寄り添うこと。それらは、私たちが求める熟成と調和の度合いへと導く要素であり、ワイン本来の味わいや香りを最もよく引き立てる。私たちのワインの生命は、瓶詰めによって終わるわけではない。瓶詰めの後もなおブドウの生命力は保たれ、ワインには発展、長い寿命、そして熟成のための十分な余地が残されている。その基礎はブドウ畑で築かれ、セラーでの慎重な仕事によって引き継がれてきた。だからこそワインもまた、人間と同じように、決して固定された存在ではなく、常に変化し続けるものなのである。


 

ワインについて
自由は自ら手にする

自然は引き出しの中には収まらず、予測できないものだ。だからこそ、常にすべてが手に入るとは限らないことを、ご理解いただきたい。とはいえ、私たちのそれぞれのワインの性質について知っておいてほしいことを、簡潔にまとめてみた。多すぎず、少なすぎず。あなた自身の視点の余白がきちんと残る程度に。


 

スガミネック
風の花嫁

スガミネッグという名は、石の多い土壌に由来するスラヴ語系の呼び名である。ブドウ樹は純粋なオーポクの岩盤土壌に植えられており、標高の高い場所にあるため、コーラルペ連峰から吹き下ろす冷たい風にさらされる。このやせた岩がちな土壌に深く根を張ることで、ブドウ樹は複雑な香りの形成を促され、それらは後にワインの中にも表れてくる。

スガミネック
 古樹(1984~1986年植樹)
 ソーヴィニヨン・ブランとモリヨンのブレンド


 

グラーフ
ほろ苦い美しさ

グラーフとはもともと私たちの農家の屋号でもあり、後にそれを私たちのワインの名前の一つにもした。この名はやせたオーポク土壌に植えられた古いブドウ樹を指しており、昔からツヴァイゲルト、モリヨン、ソーヴィニヨン・ブランが栽培されてきた。さらにグラーフ・シリーズは「中間」を象徴している。というのも、より高地にあるスガミネックの畑と、低地に広がるオーポク・シリーズとのあいだに位置しているからだ。

グラーフ・ソーヴィニヨン
グラーフ・モリヨン
 古樹(1984年植樹)、やせた土壌


 

オーポク
主役となる土壌

オーポクとは、この地域に特有の石灰質マール土壌のことだ。より粘土質を多く含む青いオーポクと、砂分を多く含む褐色のオーポクがある。このカテゴリーのワインには主に若いブドウ樹(2000年前後植樹)を用いている。樹勢がまだ強く、よりフレッシュな香りがワインに備わる。

ソーヴィニヨン・フォム・オーポク
ゲルバー・ムスカテラー・フォム・オーポク
ヴェルシュリースリング・フォム・オーポク
オーポク(複数品種)


 

ロート
冷ややかなエレガンス

私たちの赤(ロート)ワインに使われるブドウ樹は、すでに数十年前に植えられたものである。それは、シュタイヤーマルクがまだ赤ワインの産地として特に知られていなかった時代のことだ。その後の気候の変化は、ツヴァイゲルト、ブラウフレンキッシュ、ブロウアー・ヴィルトバッハーという品種から造られるこれらのワインに良い影響をもたらした。繊細で軽やかでありながら複雑さを備えたワインとなり、冷ややかな美しさを湛えている。また、古樹の抑えられた樹勢はこれらのワインに特別なかたちで寄与している。

グラーフ・ツヴァイゲルト
ロートヴァイン・フォン・オーポク(複数品種)
ツヴァイゲルト・フォン・オーポク
ロゼ・フォン・オーポク


 

オレンジ
果皮との接触

ここのタイプのワインについては、ありがたいことに、もはや多くを説明する必要はない。白ブドウから造られるワインで、ブドウの果皮、場合によっては果梗も含めた状態で発酵させる。マセレーションによって果皮や果梗から溶け出した色素が、ワインを「オレンジ色」に染める。これらのワインの質感は際立っており、凝縮感があり、香り高く、複雑である。

エアデ:ソーヴィニヨン・ブラン&モリヨンのブレンド
 12か月間マセレーション
グレーフィン:ソーヴィニヨン・ブラン
 2〜4週間マセレーション

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