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Valentini
 ヴァレンティーニ 

ワイナリー名 Valentini
ヴァレンティーニ
創業年 1632年
         
国・地域 アブルッツォ ・ イタリア
地区/村 ロレート・アプルティーノ
代表者 Francesco Valentini
フランチェスコ・ヴァレンティーニ
畑面積 64 ha
主要品種 モンテプルチアーノ(Montepulciano)
トレッビアーノ (Trebbiano)
平均生産量
生産者プロファイル

【ドメーヌについて】
   1632年に創立。自社ブランドでリリースするのは、収穫されたブドウのうちわずか10~20%程度という厳しさ。残りのほとんどは他の生産者へ売ってしまうし、いい年でなければ造られないことも。
   畑では一度も除草剤や防虫剤を用いていない、昔ながらの栽培方法。科学的なもの、合成されたものは畑でもカンティーナでも使わない。ブドウは他の植物(オリーブ、小麦、他の穀物、かいば)とともに栽培。また、環境と調和する真に自然な農業を現実には実行していない人も参加している、表面的なものであるとの考え方から、ビオロジックの認証を信じていない。
   比類のない個性を持つ、入手困難なイタリアワイン。

 出会い: 
 ~緊張にみちた初めての取材
  アブルッツォに籠もるエドアルド・ヴァレンティーニを最初に訪ねたのは、1999年の4月。ル・テロワール社を合田とともに創設・経営していた時代のこと。生産者とワインをより深く理解するための自主取材が目的で、おそるおそる「聖地」ロレート・アプルティーノにあるヴィッラの門をくぐった記憶が懐かしい。そもそも1995年、ヴァレンティーニのワインの素晴らしさを私たちに教えてくれたのは、バートン・アンダーソンであった。その経緯については、合田と共訳したバートンの『イタリア:味の原点をもとめて』(1997年、白水社)の後書きを参照されたい。例によって聞き取りにくい小声でバートンは、ぼそっとヴァレンティーニの名前を漏らしてくれた。以後機会さえあれば、イタリア各地と国内(エノーテカ・ピンキオーリ)で、モンテプルチアーノとトレッビアーノの両「ダブルッツォ」とチェラスオーロ(ロゼ)を好んで味わっては、いよいよ傾倒の度を深め、雑誌などのエッセイで紹介するまでになった。さて、面会は取材目的であったから、ビジネス上の話は一切おこなわず、エドアルドの哲学にひたすら聞き入った。書籍がとりまく知的雰囲気にみちた書斎のなかで、興がのるとエドアルドは、まるで朗誦するかのようにうねりのある節回しとよく響くバリトンで、語り続けた。同じトレッビアーノを2本開けてくれたのには恐縮したが、フルーティな味わいは、イタリアのレストランなどに出まわっていた当時のややドライな趣のものとは大違いで、スタイルの変化を窺わせた。また、オリーブオイルには、並々ならぬ情熱を注いでいることが伝わってきたので、本人言うところの「まだ試作途上品」を味わわせていただき、アブルッツォ料理のようにスパイシーで驚いた旨を話したところ、「オリーブオイルのほうがワインよりも、テロワールをよく伝えてくれる」と断言され、さらにビックリした。

 ~ヴァレンティーニ再訪
   2007年6月、9年ぶりにヴァレンティーニ邸に乗り込んだ。すでに2007年秋から、小社とのお取引が決定した直後のことである。エドアルドは惜しくも昨年に世を去っていたが、前回会った長男のフランチェスコ夫妻が迎えてくれた。髭をたくわえて眉の辺りが盛り上がり、今やすっかり父親似の顔立ちとなった長身のフランチェスコは、かつての童顔めいた面貌が影をひそめ、精神的な成長と刻苦の跡がうかがえた。前回と同じく書斎のなかで、父君が愛用していた椅子にすわったフランチェスコは、ワインを取り巻く状況について、分かりやすく説明してくれた。
  ヴァレンティーニにおいてすら、あまりの暑熱のため、ケミカルな処置をいっさいしない農法と醸造には困難がともない、モンテプルチアーノ・ダブルッツォでは2003年と2004年、チェラスオーロでは2005年に、製品化を見送ったとのことである。2007年のワインについては、開花こそ例年より1ヶ月早かったが難しい年で、前年の暖冬の後遺症による影響を免れないとか。つまり、ヴァレンティーニのワイン哲学は、温暖化という厳しい試練のなかで鍛えなおされつつある、という印象を受けた。(塚原正章)

   かつて塚原正章は、『料理王国』(1996年6月号)に寄せた記事のなかで、エドアルド・ヴァレンティーニのワインについて、イタリアを代表する「黄金の七人」(ゴールデン・セブン)が造るもっともイタリア的な作品のひとつとして、最大限の敬意を表しつつ、紹介したことがあります。 
   赤ワインのモンテプルチアーノ・ダブルッツォについては、「広大な畑から選び抜いたモンテプルチャーノ種のブドウから造る、おそらくはイタリア随一の赤。神韻縹渺(しんいんひょうびょう)とした味わいは、まさに神技」、白ワインのトレッビアーノ・ダブルッツォについては、「アブルッツォの圧巻。収量の抑制と自然な造りが、人為的な飾りのない、深い内面性の白をうむ」とまで絶賛いたしましたが、私たちの考え方は今でも変わりありません。ヴァレンティーニこそ、私たちの長いワイン探索の旅程で、「偉大な造り手が偉大なワインを生む」ということを最初に教えてくれた、貴重な存在でした。残念ながら、エドアルド・ヴァレンティーニ氏は2006年に亡くなりましたが、家業は長男夫婦によって立派に引き継がれています。(合田泰子)

 【畑について】
土壌:medio impasto(色々なものが混ざった土壌)
堆肥:動物由来 

【醸造について】
熟成:スラヴォニアオークの大樽

   
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