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Principiano Ferdinando
 プリンチピアーノ・フェルディナンド 

ワイナリー名 Principiano Ferdinando
プリンチピアーノ・フェルディナンド
創業年 1960年
         
国・地域 ピエモンテ ・ イタリア
地区/村 ランゲ/モンフォルテ・ダルバ
代表者 Ferdinando Principiano
フェルディナンド・プリンチピアーノ
畑面積 13 ha
主要品種 ドルチェット(Dolcetto)
ネッビオーロ(Nebbiolo)
バルベーラ (Barbera)
平均生産量 80,000本/年
生産者プロファイル

【ドメーヌについて】
 プリンチピアーノ家は、1900年代の初頭から、自分たちが所有する7haの畑でブドウ栽培にいそしんできた。カンティーナは、50年代に父アメリーコ・プリンチピアーノの手によって実現され、1993年から、息子である現当主、フェルディナンドが引き継いでいる。フェルディナンドはアメリーコから、畑でも、醸造面でも貴重な経験を得てきた。
 カヴィオラの指導のもと1993年から10年間、ロータリーファーメンターを使って、近代的なワインを造っていたが、伝統的なつくりのワインが持つ味わいの偉大さが理解できるようになるにつれ、2002年にまったく方向を変えることを決断した。2004年にロータリーファーメンターを売って大樽を購入し、その哲学と概念をあらためて定義しなおしている。醸造は、とりまく自然と地域環境の特徴を子細に反映させるためのものであると考え、そのために化学肥料や除草剤、殺虫剤、防カビ剤の使用を放棄するのを信条とした。2012年からは、最も重要な3haの畑ではボルドー液も硫黄も使用せず栽培している。

 高品質のワインを生み出すために、ブドウ畑が円熟していることが根本的な役割を果たす。プリンチピアーノ家が所有しているクリュのブドウの樹齢が40年から60年におよぶことを、誇りに思ってもいいのではないか。ブドウ樹1本あたりの収量を750gから最大でも1.5kgに抑えるため、間引きを進め、醸造もクラシックなスタイルとなった。サステイナブルで自然環境との調和をとるスタイルを実現するために、野生酵母で発酵することを好み、発酵時には温度管理も硫黄の添加も行わない。ルモンタージュはポンプを行わずに、手作業で行うことにした。SO2を使用するのはビン詰め時のみで、清澄も濾過も行わない。

 「幼いころ、家用に祖父が造っていたワインはタニックでなかった。私は、体に吸収されやすい、エキストラクトを強くしない、アルコール度数の低いかつてのスタイルを造りたい。美味しくて自然な味わいが信条だ。」「ワインはテイスティングするものでない。畑の中でバランスがとれていることが重要。今自分の信じる好きな方法で醸造でき、大変喜んでいる。昔はジャーナリストのために造っていたようなものだ。歴史を知れば知るほど、この地方の強い個性を理解できるようになった。」とは、フェルディナンドの言葉である。目指すスタイルは、骨格があり、優雅で、バランスよく、スムーズな口当たりで、飲み心地の良いワインと語る。(生産者HPから一部抜粋、合田によるインタビューで補足)

《フェルディナンド、恐るべし!》
―なぜ、ラシーヌはプリンチピアーノを扱うことにしたのでしょうか―
合田泰子/塚原正章(2013年6月)
  環境と自然、人間的な努力と叡智の産物であるワインは、詮ずるところ、自然の媒介役をする生産者次第です。
   フェルディナンド(と、スペイン人の良き伴侶ベレーナ)・プリンチピアーノは、重い歴史に縁どられたピエモンテにおいて、現代における伝統のあり方を模索しながら、過去や教義に囚われることなく、自由な思考力と柔軟な頭脳に裏打ちされた積極的な行動力のもとに、典雅な「自然派ワイン」(ヴァン・ナチュレル、ヴィーノ・ナトゥラーレ)を生みだしてきました。
 しかもフェルディナンドは、個性的なワインの生産者にありがちな、独善性やエキセントリックなところがありません。そのゆえに、ワインも彼の人格を体現して、〈まろやかで優雅で、かつ人懐っこい親しみやすさ〉を備えています。
 過去も現在も多くの著名な生産者に飾られたピエモンテのなかで、大胆で独自な方向転換を迷わずおこない、すでにして頭角を現して名生産者に数えられているプリンチピアーノは、「現代のクラシック」というべき高みに達しているにもかかわらず、常に進化の過程にあります。この地域でこれほどの将来性に富む生産者は、ほとんど思いつきません。
 しかも、あくまでも市場の受容性を考慮した価格は、品質からみると、とても良心的としか、言いようがありません。
 このような多面的な意味で、まさしく比類を絶するプリンチピアーノこそ、ラシーヌにとって理想的な生産者であるだけでなく、ラシーヌの品質管理によって、その〈繊細優美な味わい〉を特徴とするワインの実力と個性がますます発揮される、と私たちは考えています。

プリンチピアーノの位置づけについて

 ラシーヌは、プリンチピアーノの取り扱いを始めた理由は、「プリンチピアーノが造っているワインが、特別美味しいからだ」と、だけいって済ませられるような、単純な問題ではありません。ラシーヌが、プリンチピアーノをどのように位置づけているか、ということを、ぜひともご理解いただきたいのです。つまり、プリンチピアーノの取り扱いを決定することは、これまでいくつもの著名なピエモンテの生産者をご紹介してきた小社にとっては、大きな決断であるだけでなく、数あるピエモンテのワイナリーのなかで、プリンチピアーノがいかに重要な生産者であるのかという事実と、ラシーヌのプリンチピアーノに対する評価を鮮明にしておく必要があります。
 そのためには、ピエモンテにおける生産者市場の歴史的な流れや動きから説明しましょう。ピエモンテのワイン界の流れのなかで現状を評価しなおし、プリンチピアーノを位置づけることが必要なのです。
  ところで合田と塚原は、マルク・デ・グラツィア(愛称マルコ)およびバローロ・ボーイズ多数とも仕事で深くかかわってきただけでなく、ピエモンテの伝統派を形作ってきた巨匠や達人たちとも、仕事を超えたつながりがありました。そこで、やや個人的な視点を交えながら、マルコとバローロ・ボーイズたちの歴史的な役割をふまえつつ、伝統派との類比のなかで、ピエモンテワイン界の潮流をかいつまんで概観したいと思います。

① 戦後のネッビオーロ酒(特にバローロとバルバレスコ)の在り方を変えたのは、疑いもなく、巨人アンジェロ・ガヤと、マルク・デ・グラツィア/エリオ・アルターレが主導した「バローロ・ボーイズ」たちでした。ピエモンテ産ワインの「名声」と実力の落差が甚だしかった当時、後者バローロ・ボーイズはブルゴーニュから、オークの新樽(225Lのバレル)の用法、衛生・温度の管理、近代的な醸造方法・設備、適切な熟成期間などを学び、醸造法を一新して、ネッビオーロの特性を生かしながら、熟成不要の早飲み型でモダンな味わいのニュー・ウェイブ・ワインを築き上げました。彼らの成果は、伝統的に作られていた、〈果実味に乏しく、タニン過剰な長熟型ワイン〉とは正反対の、現代人の味覚に受け入れられる「近代派」ワインであると話題になり、評価され、90年代に隆盛をむかえたのです。しかし当初こそ両派の対照的な違いが強調されましたが、伝統派も近代派も互いに相手側から学びつつ、作り方を変えて歩み寄ってきたため、近年その対立点と差は薄れました。
② バローロ・ボーイズの分解。マルコの理論を実践面で支えてきた中心人物が、エリオ・アルターレと、実力および(アメリカでの)市場人気からして、ルチアーノ・サンドローネの両巨頭でした。が、まずルチアーノがマルク・デ・グラツィア・セレクションズから独立した後、数年前にマルコの盟友ともいうべきエリオもついにマルコのグループを去ったのです。彼ら以外にも有力な生産者がマルコの傘下を離れたため、いまや実質的に「マルコ主導のバローロ・ボーイズ」は解散とまではいかなくても変質し、盛名を失ったとみるべきです。近代派はいっとき隆盛を誇って拡大成長路線に走ったこともあり、近代派のワイン造りが登場時の勢いと品質水準、市場における評価を現在もなお維持しているかどうかは、議論の分かれるところでしょう。
③ バローロ伝統派の大御所の相次ぐ逝去。伝統派の中心人物ともいうべきジョヴァンニ・コンテルノ(ジャコモ・コンテルノ当主)、その弟で近代派にも一脈通じるところがあった「啓蒙派」アルド・コンテルノ、バルトロ・マスカレッロ、テオバルド・カッぺッラーノといった個性的な巨匠たちが、この10年のうちに続々と他界しました。むろん、長らくの共同作業者(家族)が引き継ぎ、醸造理念は変わらなくても、ワイナリーにおける陣容の変更が、ワイン自体の変容の可能性を招くことは否定できません。
④ ピエモンテにおける「自然派」の台頭のなかで、頭角を現した自然派ワインのクオリティあるいは実力はどのようなものか。有機農法やビオディナミ農法への関心は、ピエモンテでもこの数年で高くなったばかりでなく、一部では昔から実践されてきました。また、SO2の(極端な)使用抑制など、ヴァン・ナチュレルへの志向性は、むろん当地でも認められます。が、哲学や方法の是非ではなく、崇高な味わいの実現という観点からすると、禁欲的な手段とハードワークだけでは、その実現は困難です。自然派生産者のワインが、味わいのレヴェルで、過去の伝統派の巨匠たちや、かつての近代派の名品が到達していた水準に、現在はたして達しているでしょうか。少なくとも一部の自然派生産者のワインが、高い敬意に価することだけは確かです。
 そこで、プリンチピアーノの位置づけです。
 ワインは単に畑と醸造所の産物ではなく、造り手の人格と識見を現すという点が、肝心です。これまでの情報を整理して、要点をのべます。
1. 家系。現当主は、フェルディナンド・プリンチピアーノ。祖父は、1900年代初頭から、モンフォルテ・ダルバにブドウ畑の区画を購入しはじめた。が、フェルディナンドの父アメリーコが小さなカンティーナを創立したのは、1950年代のこと。したがって、自社畑のブドウによる自社ワインを造り始めて、フェルディナンドはその二代目に当たる、比較的若いカンティーナである。
2. 立地。たとえばボスカレートの区画は、カシーナ・フランチャのすぐ下にあるなど、立地に恵まれた畑が多かった。ために当初は、カンティーナは良質なブドウを、名だたるバローロ生産者(チェレット、プルノット、スカヴィーノ、アルターレなど)に売って、生計を立てていた。
3. 自家醸造・販売。ピエモンテのいくつかのワイナリーで修業した若きフェルディナンドは、1997年に売りブドウをすべて中止し、100%自身のカンティーナでの醸造とビン詰め・販売に切り替えた。が、バローロ・ボーイズの全盛期にあたる当初は、彼ら流の近代的なワイン造りでしかなかった。
4. 自然派への方向転換。モダンワインを10年間つくったあと、フェルディナンドは旧来の伝統的なワイン造りの良さを再認識して、2002年から大樽醸造だけでなく、大胆な方向転換をおこない、ビオロジック農法/ビオディナミ農法、はては自然な造りへと転換を果たした。もちろん、濾過やファイニング(清澄)をおこなわず、人工酵母を使用せず、畑の支柱も木製である。2012年からは、重要な畑ではボルドー液やSO2を不使用と、常に進化をとげている。
5. 味わい。いずれのキュヴェも、やや薄めの色調だが、複雑でのびやかな風味をたたえ、テクスチュアが柔らかくて、バランスとのど越しがよく、モダン派に特有な濃くて不自然な味わいとは無縁。多くのキュヴェは、(いまのところステンレス槽を用いているにもかかわらず)表面的な味わいがしないのは、畑の位置や手入れ法のせいだけでなく、フェルディナンドの味覚のデリケートさを確証している。とりわけ、バローロの上級キュヴェ2種は、ビロードのような肌理と、澄んで魅惑的な香気に溢れている。すでにして、かつての伝統派の巨匠が達した個性的なバローロの優品に劣らず、「現代のクラシック」バローロというべき高みに達している。しかも、その価格は、品質からみると、とても良心的(あるいは合理的)です。そのうえ、えてして個性的な自然派ワインの生産者にありがちな「野暮ったい独善性」が皆無なのです。ゆえに、ワインも彼の人格を体現して〈まろやかで優雅なのに親しみやすい〉ので、ピエモンテに比類を絶した生産者である、と断言してはばかりません。(塚原正章)

【畑について】
栽培:化学肥料や除草剤、殺虫剤や防カビ剤を不使用
土壌:石灰質

【醸造について】
醗酵:ステンレスタンク
熟成:ステンレスタンク、スロヴァニアン・オークの大樽(2,000~4,000L)

   
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