Christian Tschida
クリスチャン・チダ
造り手: |
Christian Tschida クリスチャン・チダ |
国・地域: |
Illmiz オーストリア / ノイジードラーゼー / イルミッツ |
主要な使用品種: |
グリューナー・ヴェルトリーナー(Grüner Veltliner) ブラウフレンキッシュ(Blaufränkisch) カベルネ・フラン(Cabernet Franc) ピノ・ノワール (Pinot Noir) |
ホームページ: | http://www.tschidaillmitz.at/ |
ワイナリー詳細: | ダウンロード(PDF) |
取扱いワイン詳細: | ダウンロード(PDF) |
クリスチャン・チダについて
オーナー醸造家のクリスチャン・チダは、実験的な醸造に積極的なオーストリアの醸造界の中でも異端児と呼びたくなる存在。醸造学校へ通ったこともなく、グラフィック・デザイナーだったが2007年に父親から醸造所を継ぐと、一年で全く新しい独自のスタイルに切り替えてしまった。ワイン造りは祖父と父、そしてロワールとブルゴーニュの生産者達から見よう見まねで学んだというが、様々な大きさの木樽(225~2000ℓ)を自在に使いこなしている。醸し発酵を含めた醸造方法を直感的に決めて、一度決めたらあとは極力手出しせずに樽の中のブドウがワインになるのをただ見守る。モットーは「レッセ・フェール」。放置して、自ずから調和に至らせる自由放任主義だ。亜硫酸は添加しないか、してもごく微量。そしてノンフィルターで瓶詰めする。イルミッツのごくなだらかな土地に約8haのブドウ畑と、それ以外の農地を約14ha所有していて、羊やアヒル、ガチョウなどを飼っている。栽培はビオロジックで堆肥には近郊の国立公園に住む牛糞を使う。25に分かれた区画で栽培しているのは白はショイレーベ、ヴァイスブルグンダー、グリューナー・ヴェルトリーナー、ムスカート、赤はツヴァイゲルト、ブラウフレンキッシュ、カベルネ・フラン、シラー。ウィーンに住んでいた頃親交のあった画家アルフレート・フリドリチカ(2009年に他界)のエッチング作品『地上の楽園』Himmel auf Erdenをエティケットにした同名のワインの自由奔放さ、グリューナー・ヴェルトリーナーを醸し発酵した「ノン・トラディション」の底知れないスケールの大きさ、「ドームカピテル」のカベルネフランの端正で繊細な深み。彼の造るワインは、いずれもが独自の世界を構築している。
ノイジードラーゼーについて
ノイジードラー湖の北西部から湖の東岸のハンガリーとの国境までを含めたブルゲンラント最大のワイン生産地域。大きく三つに分かれ、①ライタベルクの北端にあたり、粘板岩や石灰質混じりの粘土、礫、砂があり冷涼な北西部。②湖北部のパンドルファー台地の裾野に帯状に連なる、高低差30mあまりの南西向きの、石灰質を含む砂利や粘土質土壌の斜面。③湖東岸のゼーヴィンケルと称される平野。年間日照時間は約2000時間でパンノニア平原からの熱風をもろに受け、遮るものがないので風が年間を通して吹くため風力発電用の風車が林立している。湖の周囲以外は黴が繁殖しにくいので有機栽培に向く。土壌は黒土と砂利と砂で池が多数あり、自然保護区となっている。③のゼーヴィンケルは1914年の運河開通で入植がはじまった地域で、かつてはとても貧しかった。1970年代から1985年までは貴腐ワインで潤ったが、1990年代には世界的な赤ワインブームの影響もあって赤ワイン用品種への植え替えが進んだ。1994年には高品質な赤ワインを目指す生産者団体パンノービレが結成され、高貴な甘口とともに優れた赤ワインの地域としても知られるようになる。現在は赤ワイン用品種が48.4%を占め、ツヴァイゲルトの栽培が最も盛んで24.0%(2017年)。次いでグリューナー・ヴェルトリーナーの10.4%、ヴェルシュリースリングの11.1%、ブラウフレンキッシュ9.3%、ザンクト・ラウレント4.2%と続く。
オーストリアについて
オーストリアのワイン生産地域は国土の東側周縁部に分布し、緯度はブルゴーニュのコート・ドールからアルザスのオー・ランに相当する。ワイン生産地域は大きく三つに分けることが出来る。①北部のアルプスの森林に囲まれドナウ川が横断するニーダーエスタライヒ。②パンノニア平原に接して大陸性気候の影響を強く受けるブルゲンラント。③スロヴェニアの山地と同様に起伏に富んだ地形で、地中海からの暖気とアルプスの冷気がぶつかるシュタイヤーマルク。いずれも暖気と寒気がぶつかりやすい立地条件のため、近年は遅霜や雹で深刻な被害を受けることが増えている。この国は歴史的にはハプスブルク家が君臨したオーストリア・ハンガリー帝国の中心地であったことがワインとそれをとりまく文化を育んできた。1985年にノイジードラーゼーの生産者による不凍液混入事件で甘口ワイン市場が壊滅するという逆境が、かえってオーストリアを、伝統に縛られずに高品質を目指す好奇心旺盛で個性的なワイン生産国へと変えた。ビオロジックで栽培されるブドウ畑も約12%とヨーロッパで最も普及し、生産量は世界の1%にも満たないが、ビオディナミや亜硫酸無添加醸造、オレンジワインなどに積極的に取り組む生産者も少なくない。