Adega do Vulcão
アデガ・ド・ヴルカォン
造り手: |
Cinzia Caiazzo & Gianni Mancassola チンツィア・カイアッツォ&ジャンニ・マンカッソラ |
国・地域: |
Ilha do Pico ポルトガル / アソーレス諸島 / ピコ島 |
主要な使用品種: |
アリント・ドシュ・アソーレス(Arinto dos Açores) ヴェルデーリョ(Verdelho) テランテス・ド・ピコ(Terrantez do Pico) |
ホームページ: | https://adegadovulcao.com/ |
ワイナリー詳細: | ダウンロード(PDF) |
取扱いワイン詳細: | ダウンロード(PDF) |
アデガ・ド・ヴルカォンについて
アデガ・ド・ヴルカォンは、アソーレス諸島に魅せられたフィレンツェ出身の夫婦が始めたプロジェクトで、ファイアル島のブドウ栽培エリアとしての可能性を感じたそうだ。2008年に植樹を開始し、品質の良いブドウが取れるようになるまで待ち、2017年より醸造を開始。ファイアル島は1957年の海中噴火により、火山から1年以上に渡り降り注いだ大量の砂と灰が土地を覆い、その後の数十年でユニークなテロワールが生み出された。現在ピコ島とファイアル島の2つの島で合計14haの畑を所有する。夫婦はコンサルタントのアルベルト・アントニーニ氏監修の元栽培を行い、家族2世代で生産に取り組む。生産工程全体を通してできるだけ不介入自然な方法を用いることで、2つの島の2つの異なる火山性テロワールを表現する。彼らの目標は「ワインが生まれる土地の真の姿を表現するワインを造ること」。
ピコ島について
ピコ島に行くと石壁(クライシュ)の入り組む海辺のブドウ畑の姿に圧倒される。石壁の長さは合計8万km、地球二周分の長さがあると言われ、2004年に「ピコ島のブドウ畑文化の景観」(987haの畑)がユネスコ世界遺産に登録された。しかし歴史を紐解くと、島外からのベト病やフィロキセラ禍の伝来により、20世紀初めにはピコ島のワイン産業は風前の灯だった。1949年に協同組合が設立はブドウ栽培文化の復活の第一歩と言うことができるだろうが島全体として大きくワイン生産量が増えたわけではない。しかしそれに合わせて行政が支援策を打ち出したことにより、島外からのワイン技術者の注目を集めるようになり、次第に生産量は増えていく。2011年時点で20万Lのワインが生産され、それ以降も着実に生産量は増加。2014年にはアントニオ・マンサニータを含む有志達によりアソーレス・ワイン・カンパニーが設立。その後も島内外からのピコ・ワインへの機運は高まりつづけ、2022年時点で70万Lの生産量となっている。 現在ピコ島には1000ha弱のブドウ畑が生産体制にあるそうで、さらに2000haの耕作放棄された畑が残っている。品種の多くはアリント・ドシュ・アソーレスが植えられており、よりマイナー品種であるヴェルデーリョやテランテシュなどの地品種の再興の動きも見られる。2010年代前半にはポルトガルワインの文脈にはついぞ見かけられなかったピコ島のワインだが、2020年代に入りその特異な歴史とワインに光が再び当たり始めた。
アソーレス諸島について
9つの島からなる北大西洋の火山島。1720年のピコ島、1957年のファイアル島での噴火が記録されている。14~15世紀頃に発見されたとされ、ブドウも同時期に栽培が開始された。アンドレ・ジュリアン(フランス人の最初のワインライター)の1812年の報告によると、9つの島から合わせて1340万Lのワインが生産され多くが輸出されていたという。多くのワイン産地同様、ベト病やフィロキセラ禍が島へと伝わり、諸島全体からブドウ畑が消えた。アメリカ台木を利用してのブドウ栽培はその後も続けられ、現在最もブドウ栽培が盛んなピコ島(2番目に大きな島)には1000ha弱のブドウ畑がある。ブドウ品種の多くはアリント・ドス・アソーレスが植えられており、よりマイナーなヴェルデーリョやテランテスなどの地品種の再興の動きも見られる。 最大の島はサン・ミゲル島で、人口の約半分の13万人が住んでいる。各島にそれぞれの特色はあるが、最大の産業は酪農であり諸島の総面積の半分が牧草地たちとなっている。その他トウモロコシやパイナップルの栽培も盛んだが、近年は観光業が島民の生活を大きく変えている。ワイン産業はピコ島が主要ではあるものの、テルセイラ島、グラシオーザ島、ファイアル島、サン・ミゲル島、などでもブドウ栽培はされており、諸島全体で2023年時点36のワイナリーがある。
ポルトガルについて
ポルトガルは大西洋、山脈や河川により地理的に隣国スペインから隔てられ、1986年にEUに加盟するまでは政治的にも孤立していた。そのため長い間イギリス向きに出荷されてきた、ポートワインやマデイラ酒を除くと、ポルトガルワインへの関心は市場でも高いとは言えなかった。しかしそれゆえ隠れたブドウ栽培地域や地品種の古樹が数多く残り、それらの要素への関心が世界的に高まる中で、2010年代頃からダイナミックな変化が起こっている。 ポルトガルが広くない国土にもかかわらず、多様な地形と土壌、ワイン文化を持つことは、ポートワインとヴィーニョ・ヴェルデという性質が相反するまったく別種のワインが、しかも隣接する地域から生産されることからも、良くわかる。それらの下地と、海外などで経験を積んだ若い造り手たちの熱意が、現在のポルトガルワインの原動力となっていると言えるだろう。 とかく情報過多に陥りがちな現在、ポルトガルには魚介類を使った素朴な料理が多く、その料理と合わせて飲まれてきたポルトガルワインは、一般に気取った味わいを感じさせないので、難しく考えずに飲んでいただきたい。