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トルコ

なぜ、トルコのワインを始めたのでしょうか?

 
 わたしたちは、トルコにワインを探したのではありません。
 わたしたちが心服するワインが、たまたまトルコにあったのです。
 ワインは出会いなのですね。いつ、どこで、どのようなワインに出会うかは、偶然のときもあれば、情報を探したあげくというばあいもあります。
 努力すれば出会えるというわけでは必ずしもありません。
ワインがわたしたちを選ぶときもあります。まるで、ワインから選ばれたとしかいいようがないような幸せな巡りあいも、ときにはあるのです。
 そして、出会いが必然であったとしか思えないようなワインと出会ったときほど、インポーターという仕事の冥利を味わうことはありません。
 そのいきさつを、ありのままに書いてみます。
 昨年春にジョージアをまわったさい、クヴェヴリワインの造り手から、トルコのカッパドキアに素晴らしいワインがあると、ワインを強く推奨されました。赤・白の両ワインを試飲して、たまげました。たんに美味しいというような域をこえた、気高い魂にふれたような感銘をうけたのです。ウド・ヒルシュの作でした。
 ワインは自然と人間が協力しあってできるのですが、このワインには両者の絶妙なバランスがあると感じました。ワインであって、ワインでない。人智を超えるという意味で、人間わざでないような、まさしく作品と呼ぶしかないワインが、この世にあったのですね。 
 感嘆。脱帽。敬服。
このように完成度が高くて個性あふれるナチュラルワインに出会った記憶は、最近ついぞありません。さすがに私たちが信頼し、心を寄せているジョージアの造り手は、目が高い。ワインの質を知って評価するだけでなく、ラシーヌの好みを知りぬいていたのです。

 そこで、ウド・ヒルシュのはなしに移ります。ドイツのケルンに人となり、大学で建築を学び、写真の撮影をつうじて自然保護の大切さを痛感し、WWA(世界自然保護連盟)の仕事にたずさわっています。ジョージアの復興というプラン作りにも加わり、ジョージアワインも熟知するようになりました。
 縁あってトルコはカッパドキアの近傍に古い石造家屋を手に入れたら、ワイン造りの施設が付いていたとか。この地が歴史的なワイン産地であるだけでなく、甕つくりの本場であり、今ではワインが造られていないと知り、自分もワインをつくってみようと思い立ちました。研究熱心なウドは、甕(キュップ)で仕込んだワインの可能性を探り、1200年前につくられた大型の甕など、各種の時代物の甕を入手し、入念な手入れをしました。たとえば、工夫をこらした再焼法による、完璧な衛生状態の実現。これには、名高い陶芸家であるパートナー、ハジェルさんの知恵もあずかっていたのではないでしょうか。
 他方ウドは、ブドウを探索し、高地に残っていた(なかには樹齢500年に及ぶ樹もあり、200年を上まわる)老いて曲がりくねったブドウ樹の可能性に目をつけます。しかも土壌が砂質だから、さすがのフィロキセラも近寄れない。このような各種の固有品種のブドウ果をもとに、科学者もどきらしいの実験精神にあふれるウドは、容量のことなるキュップでワインを試作。ブドウのワイン適性と、甕の働きを見きわめようとしたのです。
 ウドのワインがはじめてビン詰めされて市場に出たのが、2011年ヴィンテッジ。ジョージアのクヴェヴリワイン造りの仲間は、すぐさまその麗質を見抜き、わたしに教えてくれたのです。
 ワインはさまざまな難関を乗りこえ、陸路と海路をへてようやく日本に着きました。すでに定温倉庫で数カ月の休憩をおえて、みなさまにお目見えすることになりました。
 ウドさんのワインをご紹介できる喜びと誇りが、いま胸にたぎっています。
 トルコの地であらたな可能性をひらき、いきなりクオリティワインの高みに躍りでた
革命児ウド・ヒルシュ。最初の作品からしてすでに圧倒的な完成度と比類ない個性を備えたワインの登場は、見識の高い日本のワイン界をゆるがせること、疑いありません。
 この感激をともにわかちあうことを願ってやみません。

ワインについて
 トルコ国内では土着品種が30種類ほどは栽培され、ワインが造られていますが、国際品種も沢山植えられています。ウドの現在の目標は、土着品種ですでにワイン用と認知されているものからワインを造りつつ、まだ良い醸造法どころか正式名称すら確立されていない希少品種のなかから、ワインの好適品種を選んで認知させることで、保護していくことにあります。白用品種のケテン・ギュムレックもその1つです。

Keten Gömlekケテン・ゲムレク (ケテン・ゲムレク)白ワイン
Öküzgözü – Bogazkere 2012エキュツゲツュ=ボガツケレ エキュツゲツュ50%、ボガツケレ50% 赤ワイン

赤ワイン用品種であるオークスギュズとボガスケレの対等ブレンドは、トルコ国内でもよく見られます。オークスギュズは軽めで香りが華やかで、ボガスケレは味わいがしっかりしていて酸が低目です。 
 ウドは各地で見つけた甕を買ってきては設置し、約4500L分の甕を所有しています。赤ワインは屋外(屋根付きで扉なし)で醸造し、白ワインは家畜の飼料置き場だった場所に甕を設置し醸造しています。亜硫酸の添加は基本的に行わず、白ワインのみ瓶詰前のトータル量が15㎎/L以下ならば添加します。
 赤・白ワインとも機械で除梗し、味を見ながら取り除いた茎をマストに戻しています。果汁の醗酵は、赤ワインのばあい外気が温かければ1週間ほどで終わり、その後30%ほどの果皮を残し長期の熟成に入ります。

 初めてウドのワインを味わった時の印象は、驚きの一言でした。経験したことのない、静かで美しい味わいで、奥底に輝きを感じました。白ワインについては、思わず「アンフォラのル・モンラッシェ」という言葉がでてきました。赤ワインは、上品で、複雑で、優しく、細やかなニュアンスにあふれています。現地でのテイスティングと到着直後には、赤ワインについてはさほど魅力を感じませんでしたが、到着について2か月経過し、「古代の伝説の中で舞う妖精」を思うような味わいです。
                                        2015年1月 合田泰子

   
       
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