ギリシャ
ギリシャにおけるワイン造りのルネッサンス
――本格的なギリシャ・ワインを味わって、
イタリア・フランスから時代をさかのぼるワインの旅を楽しみませんか?――
いきさつ
2009年2月、ディーヴ・ブティユの折りのことです。旧知である『ルージュ・エ・ブラン誌』のフランソワ・モレルさんから、パリで開かれるギリシャワインの会に誘っていただきました。ギリシャワインといえば、これまでFOODEXのギリシャ観光協会・ブースなどで、無個性で近代的な味わいのワインしか飲んだことがないので、内心さほど期待してはいませんでした。約束の日、サンジェルマン・デプレに近い、ギリシャ・レストラン「エヴィ・エヴァンヌ」に出かけると、8人の造り手による21種類のワインが勢ぞろいしていました。
たとえばサントリーニ島のワインは…
最初にサントリーニ島産のハジダキス《キュヴェ15》を一口味わって、言葉を失いました。澄んだ味わいが深く、稀にみる上質な味わいのなかに固有品種の個性があふれるとともに、自然派ワインの美質を発揮していました。ここ、サントリーニ島の火山性テロワールに恵まれ、フィロキセラ禍にみまわれなかった土地では、古代からの品種のブドウが今なお栽培されています。ヴィーニュ・フランセーズの宝庫である当地では、ブドウは驚くほど樹齢が高く、強風から守るために、地上低くにヘビのとぐろ状に仕立てられ、もちろん有機栽培が貫かれていることなど、極上のワインが生まれる基本的な要素がすべて揃っていることを、その時初めて知りました。
ギリシャのワイン・ルネッサンス
1995年に出版されたジャンシス・ロビンソンの『ワイン・コース』《邦訳『世界一ブリリアントなワイン講座』塚原正章・訳/集英社文庫》によれば、
諸外国産ワインのテイスティング経験がある、野心的で一途な生産者に事欠かず、
彼等はギリシャもまた、ダイナミックな上質ワイン界に仲間入りできることを
実証しようと懸命である。
……現代のギリシャワインは、タヴェルナの食卓を賑わした懐かしいレツィーナ酒――
の範疇をはるかに超えている
と、紹介されています。近代的な大手のワイナリーの陰にこの十数年の間に、小規模の作り手が変身をとげていました。ギリシャでもワイン造りの「ルネッサンス」が進行中なのです。
以来、出張のたびに、パリのギリシャ・レストラン、「エヴィ・エヴァンヌ」、「レストラン・ロリヴィエ」、「マヴロマティス」などで、香り高いギリシャ料理とともに試飲を重ねてきました。パリ屈指の人気ビストロ・ワイン・バー「バラタン」でも、グラスで3種類のワインが紹介されています。ギリシャのワインと料理は、静かなブームを迎えているのです。
ギリシャワインを味わって、イタリア・フランスから時代をさかのぼるワインの旅を楽しみませんか。ヨーロッパのワインの源流の《いま》に触れて、驚嘆されることでしょう。
2010年11月