合田 玲英のフィールド・ノート

2013.8    合田玲英

《 ファゾーリ・ジーノ 》 訪問記
 1925年から家族が経営しているワイナリーを現在は二人兄弟で、畑と醸造、マーケティングに分かれて経営しています。お二人ともとても、忙しく、お話の時間はあまりありませんでした。


2010年に改装されたセラー
    


ラベルにもなっている2匹のガチョウ。
黒いくちばしがメスのぺネロペ。
黄色いくちばしがオスのウリィス。


 

 

春にアヴェーナという、根が深く背丈も腰くらいの高さまでくる植物の種をまき、暑くなるころに刈る。深く伸びた根は、ブドウの根とも接触し、根につく微生物同士が働きかけある。また、写真のように刈られた草が厚く積もり、雑草の勢いを抑えられる。ファゾーリ・ジーノでも同じように今年は病気に対する銅の散布量が多いらしく、畑の管理が大変そうです。畑は兄のアマーディオが10分だけだけど、と一緒に回ってくれました。畑は雹対策に、ネットが張られていました。

ガルガネガのパッシメントの様子の写真。

前から何故ガルガネガのパッシメントは吊るす生産者はいるのに、アマローネではやらないのかと思っていました。どうやらそれは、ガルガネガは茎が強く、乾燥後にも折れたりしませんが、アマローネ用の赤の品種は、吊るすと乾燥し切ったものから、切れてしまうそうです。

《 モンテ・ダッローラ 》 訪問記

 訪問した時は、6月も終盤になり、ブドウの房もかなり大きくなっていました。日光がよく当たるように、房の周りは除葉してあります。

当主のカルロは2年間、ワイン醸造学校でエノロジーを学んだ後、ヴァルポリチェッラで1995年にブドウ栽培、2年後にワイン醸造を始めました。当初から 有機栽培、もしくは自然栽培をすることを考えており、彼は一度たりとも化学物資を畑に散布したことがありません。化学物質の使用されない土地は、その上を歩くだけでも違いを感じられます。トラクターによる踏み固めも、もちろん関係ありますが、多様な植物の根や虫達によって細かく耕された土地はとてもしなやかです。トラクターがよく通り、綺麗に除草された畑の土は、粘土のようでベトベトとしていて、空気が入っていく隙間のないことが分かります。

一方カルロの畑の土は、彼が土を手に取って、泥団子を作るようにギュッと強く握りましたが、すぐにぼろぼろと崩れてしまいました。

約1メートルの土や砂の層の下は、石灰質。 カチカチに固まった石灰岩ではなく、ぼろぼろと脆く 崩れやすい石灰岩で、ブドウの根がより張りやすい。

 ブドウ畑のほかに1haのさくらんぼ畑を持っており、春の写真を見せてもらうと、桜が咲き乱れていました。さくらんぼ畑がブドウ畑と入り組むようにあって、「アマローネの特徴である、さくらんぼのニュアンスは、ここから来ているのかもね」とカルロ。ただ、一般に思われているアマローネのイメージである、重たい、カラメルのようなさくらんぼの香りは、彼の目指すアマローネやリパッソではなく、常に美しい酸味のある果実味をワインにもたせたいと言っていました。


 当初は、実家のセラーで醸造をしていましたが、2002年に現在の自宅兼セラーを畑の真ん中に建てました。

 「伝統的であるからいいワインが出来るということはない。けれど、近代的な農法、醸造法をしていて、昔のワイン造りで行われていなかったであろうことを比べると、たくさんのことに気づく」と、話す彼のセラーで象徴的だったものがあります。それは特注の発酵、熟成樽で、なるべくポンプを使わないで済むようにと、樽はフォークリフトで持ち上げることができる ようになっています。持ち上げた樽から移送先の樽へと、ワインはチューブを重力によってのみ、移動していきます。



 今の時期は、カルロがほぼ一人で畑の作業もセラーの作業もしていますが、11歳の長男はセラーでの仕事を時々手伝わされているようです(誤解がないように言いますが、喜んで笑顔で作業をしていました)セラーはとても清潔に保たれています。

 
モンテ・ダッローラのパッシメント(収穫したブドウの乾燥)小屋。収穫したアマローネ用のブドウを木の箱に入れ、3,4か月風通しのいい小屋で乾燥させる。箱は全て木製で、プラスチックとは違い病気に汚染された果汁が滴り落ちて、下の木箱のブドウを汚染せずに済みます。


 

 



ポニーのティット。

ブドウが色づくまでは、畑の中に放している。





合田 玲英(ごうだ れい)プロフィール:
1986年生まれ。東京都出身。

《2007年、2009年》
フランスの造り手(ドメーヌ・レオン・バラル)で
収穫
《2009年秋~2012年2月》
レオン・バラルのもとで生活
《2012年現在》
ギリシャ・ケファロニア島の造り手(ドメーヌ・スクラヴォス)のもとで生活中
《2013年現在》イタリア在住

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