『ラシーヌ便り』no. 91

2013.5  合田泰子

《合田泰子のワイン便り》

シャンパーニュ再訪
 先週ヴィニタリーからシャンパーニュ経由で日本に帰ってから、休む暇もなく再びフランスへ。今はブルゴーニュに向かう列車の中です。今年のフランスはいつまでも寒く、春が来ないまま夏になると聞きました。先週シャンパーニュに来たときは、氷雨が降り、どんよりとした空が垂れこめていました。でも昨日は、寒さが残るものの日射しが心地よく、緑に覆われる畑の色には、間違いなくとっくに春がきている喜びが感じられます。

 4月22日早朝、空港からシャンパーニュへ。この秋いよいよ、エルヴェ・ジェスタンとブノワ・マルゲ共作のシャンパーニュ2006年がリリースされます。そのお披露目として、プレス向けの発表が、ブノワ・マルゲのセラーで急遽催されることになったので、否応なく駆けつけた次第です。

折しもシャンパーニュでは、4月21日からTalents et Terroire タラン・エ・テロワール 、Terre et Vin テール・エ・ヴァン 、 Artisans du Champagne アルティザン・デュ・シャンパーニュという 、3つの大きなサロンの他にも、各地でメゾン独自の催しが開かれ、世界中からプロフェショナルが集まっています。シャンパーニュ版「栄光の3日間」とでもいうべきこの時にあわせて、ジェスタン=マルゲ共作の歴史的な会が、マルゲのセラーの2階で開かれました。

エルヴェが、デュヴァル・ルロワ時代に始めた、レクラパールとラヴァルからの買いブドウで作ったスペシャルキュヴェ 《 オータンシス 》 のアイデアを発展させ、マルゲのセラーで醸造されたシャンパーニュです。これまで、ほとんどその存在さえ明らかにされず、一部で数本開けられただけでしたが、この日は2006年から2011年までの6ヴィンテッジが勢ぞろいし、ヴァーティカルで紹介されました。マイケル・エドワーズ をはじめとするジャーナリスとワイン関係者の計30名を迎え、セラーでの2012年のヴァン・クレールの試飲から始まりました。

 それぞれのヴィンテッジの特徴は、あまりに控えめなため、実はエネルギーにあふれる酒質ゆえに若い順に固く閉じていて、なかなか本当の姿が現れませんでした。が、どのヴィンテッジのシャンパーニュも、グラスに注いで5~7分ほど経過すると、驚くような気品あふれる果実味が現れでて、優しい味わいで口中を満たしてくれます。




 ワインがおのずと美しく育つために、醸造過程でさまざまな阻害要因をとり除く工夫を施して、独創的なアイデアの実現にひたむきに努力する、エル ヴェ・ジェスタン。シャンパーニュでコンサルタントとして活躍してきた彼の仕事を集大成した特別な作品の日本でのリリースは、11月を予定していま す。本年10月末にはエルヴェが来日し、東京と大阪で発表会を開きますので、ご期待ください。

グルジア・ワイン第一便、ついに到着!!
 先月のラシーヌ便りでお知らせしましたが、グルジア・ワイン第一便の10種類のワインがついに到着しました。4月18日にオフィス1階の試飲室で、社員全員の勉強をかねた、内見会をしました。今回入荷したワインを味わっているのは、社内では合田だけなので、一体どのようなものが入荷したのか、全員ハラハラ・ドキドキ。ところがひとたび味わえば、身体に沁み入るような、おおらかで、不思議なエネルギーが感じられます。力強い一体感とでもいえば、いいのでしょうか。ヨーロッパ各地で、まるで流行のように作られているアンフォラ醸造と、いったいどこが違うのでしょうか。いろいろ考えてみると、長い歴史の中で、途切れることなくずっと地中に埋めた甕(クヴェウリ)仕込みによるワイン作りが、今日まで伝えられてきたことでしょう。 地中に埋められたクヴェウリと、それを取り囲む大地とともに、ずっと生きてきたワイン作りの原点、まさしくここにあり。地中に首元まで埋められたクヴェウリのなかで、大地とともに息づいてきたワインだけにしか表すことのできない、その深遠な味わいには、人智を超えた崇高さを感じ、まさしく「美味な百薬の長」を実感させます。すでに入荷していますので、5月終わりにはご案内の予定です。グルジア・ワインのワークショップをいたしますので、興味のある方は、どうぞおいでください。

合田 泰子

▲ページのトップへ

トップ > ライブラリー > 合田泰子のラシーヌ便りno 91