『ラシーヌ便り』no. 80

2012.06  合田泰子

 

 

1) ドイツ&オーストリア・ワイン お披露目試飲会 
 ドイツ&オーストリア・ワインをお披露目する会を、東京(5月9日)と大阪(5月18日)で催しました。それぞれ100名を超える方にご出席いただき、ありがとうございました。また、ラシーヌが参加した「ワイン東京」でもスタンド内に特別コーナーを設け、入荷済みであるドイツのクレメンス・ブッシュと、オーストリアのセップ・ムスター他3軒のワインを、ご紹介いたしました。開発者の言葉として、「この興奮と喜びをお伝えしたい」と案内に書きましたが、この試飲会は、ドイツとオーストリアの今を日本にお伝えする大きな意味があったと考えています。出席いただいた方々からも、に40銘柄ものリースリングを中心とした両国のワインを一堂にそろえて試飲できる機会はないので、とても勉強になったとのご意見をいただきました。このたびの東京・大阪試飲会では、[ドイツの5生産者]と[オーストリアの6生産者]をご紹介いたしましたが、年内にドイツから新たに、[モーゼル2生産者]と[ファルツ1生産者]が入荷いたします。このようなラシーヌの新たな試みの全容をつうじて、ドイツでは《モーゼル&ラインガウにしか表現できないリースリングの荘厳な味わいの世界》を、オーストリアには《本質的に正しくて美味なワインが多様な姿で存在すること》を、実感していただけると確信しています。なお、6月1日から一週間、ウィーンで開かれるVie Vinumを訪れます。新ヴィンテッジの確認と、新たなワインとの出会いを期待し、またオーストリア・ワイン全体の理解を深めてきたいと思います。


 

2)4月~5月イタリア出張のご報告
 今年4月のヴィニタリーにおけるラシーヌのテーマは、南イタリア産ワインを開発することでした。5月にはヴィニタリーで出会った造り手と、それ以外の新たな造り手を歴訪するため、カンパーニャとアブルッツォを訪ね、トスカーナを経由して帰国しました。Nanni Copeナンニ・コペ(2008年創業、カンパーニャ)、Cirelliチレッリ(2008年創業、アブルッツォ)、La Porta di Vertineラ・ポルタ・ディ・ヴェルティーネ(2007年創業、ガイオーレ・イン・キャンティ)の3社は、いずれも創立まもない造り手ですが、まぎれもなく個性的な実力派です。また、プーリアからは、「イタリアらしい気迫と創造力に富む、これぞイタリア・ワインの素敵さ」(J.ロビンソン)というべきプリミティーヴォを造る、パスクアーレ・ペトレッラのワインも7月に入荷します。

 

各ワインのご紹介

  • Nanni Copeナンニ・コペ (カンパーニャ) : 

                   《エレガントでフィネスに富む新たなカンパーニャ・ワインの登場》
 カンパーニャのナンニ・コペ社(Giovanni Ascione氏) が造るSabbie di Sopra il Boscoは、見事なバランスの堂々とした存在感があります。『エスプレッソ』を始めとする重要なプレスから、高い評価を受けているのもうなずけます(L’espresso誌2011;5bottiglie Eccellenza 18/20)。発酵はステンレスタンクですが、予想をまったく超えて、ステンレス発酵の単調さは皆無。新樽とのバランスもまた見事で、樽の嫌なニュアンスが全くなく、完成度が高くて、ただただ驚愕。造り手のジョヴァンニ・アシオーネは笑顔そのもので、まっすぐ前を見据えて話す、じつに頭脳的な人物です。 フィロキセラのいない特別地域の畑では、樹齢100年を超えるカッサヴェキア種を大切に育てています。冷涼な環境の畑からエレガントでフィネスに富むワインを作りだしています。

 

La Porta di Vertine (ガイオーレ・イン・キャンティ) : 
  《標高500mの畑から生まれる、クラシックで素晴らしく優美なキャンティ・クラシコ》
醸造は大型のコンクリート槽発酵、熟成は大樽という、理想的なクラシック製法です。「標高の高さに由来する、味わいの底にある冷涼感があり、酸が瑞々しく心地よい。石灰岩(shale 頁岩)の岩がひしめく土壌からミネラルに富んだ味わいが生まれ、サンジョヴェーゼらしい果実味が美しく広がる。素晴らしく優美で、かつ土っぽさがあり、タニックな骨格は筋肉質だが、香と味わいの中に繊細な花のような印象がある」―― これは、紹介されたあるプレスによる評価ですが、実際このとおりの味わいで、これほど上質なサンジョヴェーゼは滅多にお目にかかることがありません(往時のモンテヴェルティーネを思い起こさせます)。 2007年がファースト・ヴィンテッジ。素晴らしいサンジョヴェーゼの登場です。 

 

 

 

* Azienda Agricola Cirelli チレッリ社  《アブルッツォに新たな可能性の誕生》 

 ペスカーラ生まれのフランチェスコ・チレッリは、農業に興味をもち、2003年にアブルッツォのAtri村に22haの農地を買い、ガチョウの飼育、イチジク・オリーヴ・大麦・にんにくの栽培をする傍らでブドウを植え、2008年からワインを造っています。上級キュヴェは、野生酵母でもってコンクリートタンクと大樽で発酵、テラコッタで熟成させるという凝り方。明白なワインの理想像をもち、それに向かって全力で努力をしている若い醸造家です。これからが楽しみです。

 



 

Pasquale Petrerra(プーリア)

                      《ユニークで、フィネスを湛え、チャーミングで上品、プリミティーヴォの例外的な存在》 
他のプリミティーヴォとは異なり、ピノ・ノワール、または、最上の飲み頃の、イヴォン・メトラの味わいに通じるニュアンスを私は感じました。 造り手のパスクアーレ・ペトレッラは力強さを感じさせる、感覚の優れたとても感じのよい人という印象でした。こんな素敵なワインが、また一つ増えて、本当に嬉しいです。7月に入荷します。

 

3)【新発表~真打・登場~】
*4月に予告したMこと、ガンベラーラの新星《メンティ》が7月に入荷します。考え抜かれた栽培と製法の賜物であるワインは、「洗練された自然派」ともいうべき、優しくあたたかな味わいがあり、無類にきれいな仕上がりです。イタリアの自然派ワイン界は、メンティの登場で面目を一新したといっても過言ではありません。ソアーヴェ地区の東に隣接する畑から、かくも理にかなった各種のワインを、抑えられた情熱をもって秘かに育て上げてきた、造り手ステーファノ・メンティ氏に、満腔の拍手を贈りたいと思います。


 合田 泰子

 

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