『ラシーヌ便り』no. 78

2012.04  合田泰子

 

 

 3月初旬に、デュッセルドルフで開かれたPro Wien に初めて参加後、いったん帰国し、再び23日からヴィニタリーのためヴェローナに来ています。

 

*プロ・ワイン/イン・デュッセルドルフ
 ドイツ訪問は、昨年秋から数えて4度目となりましたが、ドイツ/オーストリア・ワインの新規プロジェクトを総仕上げする旅となりました。3月初旬は、つい10日前までドナウ河が凍るほどの大寒波がヨーロッパを襲い、その名残でとても寒さ厳しい北の街を経験しました。街の中心から地下鉄が会場入り口まで直結しており、チケットには期間中の公共交通機関のフリーパスが含まれて、運営・会場設営等すべてが機能的で、驚きました。また、鉄道の職員の人々の親切で懸命な仕事ぶりにも感心し、フランスやイタリアとの国民性の違いを大きく感じました。いずれにしても、プロ・ワインにはドイツだけでなく各国の重要生産者が集まり、機能的に運営されていたため、貴重な経験となりました。また、会場の試飲環境についても、塚原のエッセイに書かれているヴィニタリーのような問題はなく、個々のワインの微妙な味わいを感じ取ることができました。
 さて、ドイツのパビリオンには、有名な醸造所のワインが隣り合って並び、次々と試飲できるので、新世代のワインと老舗醸造所のワインとの比較ができ、この半年間の経験の確認としては絶好の機会となりました。人気の高い造り手は、昨年の時点で2010年は売り切れていましたので、2011年の樽からのサンプル試飲をまとめてできたのも好都合でした。いよいよ4月中旬に第一便の船が到着します。5月にはお披露目の試飲会を催す予定ですので、どうぞ多くの方々に出席いただけますようお願いいたします。



テキスト ボックス: プロ・ワインの会場にて  真剣な面持ちで話をする生産者

 

*ヴィニ・ヴェーリ/ヴィ・ナチュール
 3月24日から27日まで、2つの試飲会が催され、会場の移動も大変でしたが、親しいフランスやオーストリーからの参加者と話もでき、未知の優れたワインに出会うことができました。今年はヴィニタリーの会場内で、初めてVI VI T(Vigne Vignaioli Terroir by Vinitaly)が開催されたため、ヴィニ・ヴェーリ/ヴィ・ナチュールを離れてVI VI Tに参加した造り手もありました。このため両会の主催者側は、参加者の反応を心配していたようですが、ヴィニ・ヴェーリには相変わらず興味深いワインがたくさんありました。期間中ヴェローナ市内のレストランはどこも世界中から集まるワイン関係者で埋め尽くされますが、中でも深夜まで店の外の通りにグラスを持った客がひしめき合うBottega del Vino は最人気店。ヴィニタリー期間中は、ダル・フォルノや、ルーチェ、サシカイアなどがグラス・ワインでサービスされますが、バローロ/カッペッラーノ2006年も姿を初めて現していたのは、嬉しい驚きでした。
 3月初旬にヴェネツィアのレストランで出会ったとあるワインに惹かれ、ヴェローナ近郊の造り手をヴィニタリー直前に訪ねました。17世紀の農家の作業場めいた醸造所は、冷んやりとした澄んだ空気に満たされ、建物が呼吸していることが感じられました。森の側にある畑は冷涼で、もちろん灌漑もしていません。年若き生産者が、2001年に父親と仕事をするようになってからビオロジックに転換したためか、鷹・鷲・雉・うさぎなど様々な生物がいて理想的な環境が整っています。「何故、今まで、どの試飲会にも参加しなかったのですか」と尋ねたら、「ヴィ・ナチュールの人たちとは考えがあわず、ヴィニ・ヴェーリは新しいエントリーを受け付けていなく、ヴィニタリーは参加費が高すぎて縁がなかった。けれども、今年VI VI Tが設けられ、しかも出展料が安いので、初めてヴィニタリーに参加することができた」という答えが返ってきました。  
 若さに似ず、しっかりとした考え方と理論がみごとに栽培・醸造を貫いており、それに基づいて造られる自然な醸造のワインには、優しさと芯のある確かな味わいが満ち溢れています。陽のしずむ夕方の訪問時、教会のカリオンが響く美しい村に春の訪れを感じ、幸せな思いでいっぱいになりました。夏前には、お目見えしますので、どうぞ楽しみにお待ちください。

 

 合田 泰子

 

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