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『ラシーヌ便り』no. 71

2011.9  合田泰子

《合田泰子のワイン便り》

厳しい暑さも、だいぶ落ち着いてきました。皆様お変わりありませんか。ヨーロッパでも、局地的な豪雨があり、どこもかしこも、天候が荒っぽくなってきています。地球規模の天候不順がおきているのですね。  第2回フェスティヴァンの準備が、始まりました。昨年、会が終わって「大変だったけど、楽しかったね、来年はもっといい会にしよう」と話し合って、年を越えてもう早9月です。楽しんでいただいているお客様たちを見て、私たち出展者も本当に楽しく会を終えることができました。2回目は、よりよい内容にしようと、実行委員会は盛り上がっています。年に一度の大規模で本格的な自然派ワインのお祭り。ですから、多くの方に、自然派ワインの本当の魅力をお伝えできる楽しいお祭りをめざして、準備を始めています。前売りチケット¥6000(当日券¥7000)は9月末から販売です。詳細は、ホームページで随時ご案内申し上げます。多くの方々のご参加をお待ちしています。



久しぶりのボルドー訪問


ワインの仕入を携わるようになって以来、ボルドーのワインを仕入れたことがほとんどありませんでした。理由は、オープンマーケットの価格競争に巻き込まれるような、商材としてのワインと少量生産のワインとは異質のものであること。それほど興味を惹かれるワインに出会わなかったので、これまで積極的に探してこなかったこと、でしょうか。探せばあったのでしょうが、評価の高いものの多くは、新樽風味が強い、グラン・ヴァンもどきが多く、また、自然派グループのワインには、ワインとしての美味しさを見出せませんでした。唯一、何か一つボルドーをということで、ラ・トゥール・フィジャックを5年前から少量ずつ輸入してきました。エレガントで、大変バランスのよい味わいは好評で、コンディションのよさを高く評価をして使っていただいているお客様が増えてきました。それに、ボルドーとて変化の波を免れないはずだし、あるいは見落としていたかもしれない小さな傑作があるかもしれない。というわけで、もう少し本格的にボルドーを見直そうということになりました。
1987年にボルドーに滞在したときのつてと、造り手側からの紹介のつてをたどり、5月と6月のヴィネクスポの期間にボルドーを訪問してきました。 久しぶりにボルドーを訪ねて、黒く染まっていた古い石造りの建物が白く洗われ、街全体がすっかり明るく陽の光を反射していたことに驚きました。1987年9月、毎日のように雨が降り、小さなアパートで4歳と1歳の子供と暮らし始めた時に感じた、重くたちこめる空気とは全く異なった印象でした。当時は、ガロンヌ河岸に並んだ黒く染まった巨大な建物は、ローマの遺跡に圧倒されるのとは違った、でも陰鬱な印象を受けました。2007年に市外区域が世界遺産に登録されましたが、それにあわせ、この10年間に街全体の大掛かりな整備が行われたのでしょう。「川を見下ろすバルコニー」として造られた壮大なロワイヤル広場と証券取引所は、20年前は、夕方になると人通りが少なく、暗くて近づきたくなかった地域でした。メドックと右岸の高額ワインのプレスティージュを永遠に保つために、「ワインの世界の首都」として街全体が巨大なテーマ・パークとして生まれ変ったのでしょうか。初夏の陽を受けて輝くボルドーの街は、90年代以降の新しい市場に向けて新しく造られた街のように思えてなりませんでした。
ラ・ルネッサンス・デ・アペラシオンと、ビオの展示会に所属していた造り手には、興味深いものはありませんでしたが、2月のミレジム・ビオに出展していたグラーヴの造り手シャトー・アルデンヌと取引を決めました。その他は、有機栽培ではありませんが、除草剤、化学肥料を使用せず、野生酵母での発酵、酸化防止剤の使用レベルといった観点から、サン・ジュリアン、マルゴー、ポイャック、サンテ・ミリオンから選んでいきました。結果として、クラシックな造りで完成度の高いセレクションになったと思います。 順次、秋に入荷いたします。




ボルドーのおすすめレストラン  その1 Au Bonheur du Palais (ボルドー市内)


昔から、「ボルドーにはいいレストランがない」とよく言われています。 今回は、一週間ほど滞在するので、積極的にどのようなレストランに人気があるのか、リサーチしてみました。複数のワイン関係者に聞いて、全員に薦められたのがAu Bonheur du Palais。パリで「中華料理とはいいがたい中華料理」に懲りているので、期待しなかったのですが、ゴー・エ・ミヨの「間違いなく、アキテーヌ最上の中華料理。蒸し料理の火の通し方は素晴らしく、お店は活気にあふれ、必ず予約すること。 ボルドーの人たちはなんと幸運なことか。本物の料理人による、本物の中華料理が楽しめるのだから」というおすすめに惹かれて行ってきました。料理は、すべてが同じつけあわせ(生の白菜の辛味甘酢ソースあえ)で、広東料理をうたっているけれどベースの味付けがどれも四川風味の味付けで、料理ごとの変化がないですが、化学調味料の嫌な味はなく、フランスで食べる中華としたら、申し分ないところです。
驚いたのは、ワインリストです。30代の女性がワインを選んでいると言っていましたが、例えば、Champagne はというと、Krug, Krug Vintage, Jacques Selosse, Billecart-Salmon Rose, Egly-Ouriet(ヴィンテッジ違い10種類以上), Alsace:Zind Humbrecht, Ostertag,  Loire:Richard Leroy, Cotat, Daguenot, Bourgogne:Leroy, d’Auvenai, Lafon , Coche-Dury , Leflaive, Languedoc:Barral,Lagrange de Pere,   Rhone:Henri Bonneau、Provence:Trevallon といった具合。 フランスの中華としては、室内はシンプルで、奇妙な中国風内装はなく、小さなテーブルにおかれた「おすすめ食前酒」と書かれたカードには、Krug 375ml またはBillecart-Salomon ロゼグラスシャンパーニュ。好みは別にして、このクラスのリストは、フレンチでもほとんど見かけることがないレベルで、その合間にJean Foillard やValet があるのには感心してしまいました。もちろん、どのテーブルもワインが空いていて、隣の席のアメリカ人のグループは、Krug、Coche-Dury, Haut Brion を4人で楽しんでいました。私は、Richard Leroy のAnjou Blanc でとても満足したディナーでした。帰りに気がつくと、Jean Foillard が仲間6人で盛り上がっていましたが、「いやー、ここは最高だね。ワインと中華料理がこんなに楽しめるところは他にはないよ」と上機嫌でした。



その2 Le Lion d’Or (サン・ジュリアンの南)


11 Route de Pauillac, 33460 Arcins, France +33 (0)5.56.58.96.79  
ボルドーでこれほど素敵な食事を楽しんだことがないほど、感激したお店でした。古典的な、肉を中心とした地方料理のお店で、勢いがあって、フランスの田舎ならではの風味豊かな味わい。地元のなじみ客が多いためか、とても暖かで、フレンドリーな雰囲気でした。スペシャリテは、温かなテット・ド・フロマージュ、素材の良さと、的確な料理法、この一皿を味わうために、前後の食事を抜いてもいいほど見事な一皿です。 サーヴィスの年配の女性の微笑みが素敵だったこと、好きなワインがあって、お料理と楽しむことができたこと、今もお店に広がる各テーブルの明るく幸せな雰囲気が蘇ります。今までこの店を知らずして、「ボルドーにいいレストランはない」などと思い込んでいたことを反省です。ボルドー市内からは遠いですが、メドックに行ったおりには、強くおすすめします。 。




その他:ボルドー市内


Le Gabriel 


10 Place de la Bource 33000 Bordeaux tel: 0556300080
http://www.bordeaux-gabriel.fr/

Bourse (ブルス)広場の歴史的建造物にあります。1階はバー、2階がビストロ、3階が一つ星のレストラン。2階のビストロは眺めがよく、ワインリストは、手ごろなボルドー・ワインのセレクションがよく、料理も大変おいしい。



7èm péché (セッチエム・ペッシェ)

http://7peche.fr/

2009年オープン、昨年一つ星獲得をしたドイツ人の若いシェフのお店。シンプルなテーブル、クロスはなく、カジュアルですが、モダンな料理です。ワインリストは、頭が痛いですが、ゴー・エ・ミヨでは「個人的に何度でも行きたい店」と評され、地元の食いしん坊の間で予約のとれない人気店です。私は、ビストロ・ル・ガブリエルの方が好みです。

さて、仕事がなくても、わざわざもう一度行きたいお店は、メドックのLe Lion d’Or。ここで、味わった魂のこもったワインが11月に入荷します。50年以上前は、ボルドーにもこのような人間味のある、温かな味わいのワインがたくさんあったのだろうと思います。生きている化石というところでしょうか。到着が本当に楽しみです。

10月には、恒例の秋の大試飲会があります。10月5日(水曜)大阪、10月13日(木曜)東京
この時期は、試飲会ラッシュですので、どうぞ早めにご予定に入れておいてください。お目にかかるのを楽しみにしています。

合田 泰子

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