2010.09 合田泰子
《合田泰子のワイン便り》
今年ほど、秋の訪れが待ちどおしい夏は、初めてではないでしょうか。農作物への深刻な被害は、ワインという農業加工品に携わるものとして、他人事には聞こえません。お寿司やさんで聞いた話ですが、鰹なども今年はどんどん北に移動しているとか。海面温度が高く、漁場が全く異なってきているということです。地球温暖化を防ぐための、二酸化炭素排出の削減に向けて、努力していくことの大切さを痛切に感じています。
恒例の夏のシャンパーニュ試飲会は大勢の方にご出席いただき、ゆっくりとテイスティングをしていただくことができました。お暑いなかをお越しいただき、本当にありがとうございました。定番のジョゼ・ミシェル/カルト・ブランシュは、品切れのためご迷惑をおかけし、申し訳ありません。次回入荷のロットは、ドザージュをドライにしていただきました。9月15日に通関が切れる予定です。
いよいよ、収穫の季節が訪れますが、ロワール、アルザス、シャンパーニュ、ブルゴーニュからの知らせですと、成育はすこぶる順調で、ブドウに病気もないようです。このまま雹や嵐にみまわれずに収穫を迎えられるよう祈るばかりです。
さて、今日は大切なお知らせです。
本年11月27日(土)に、Festivin (フェスティヴァン)という、
素敵なワイン祭りが開かれることになりました。
Festivin【フェスティヴァン】は
自然なワインのフェスティバル。
自然なワインが、世界中から集まれば、
造り手さんも、インポーターさんも、酒屋さんも、レストランさんも、配送屋さんも、
お肉・お魚・八百屋さんにパン屋さん、たくさん飲む人も、少し飲む人も、
会場のスタッフも、あなたも私もそのお友達も。みんな飲みにきます。
そうすれば、自然とおいしいものも集まって。
みんなで飲んで、みんなで食べれば、やっぱり自然と『お祭り』です。
ウェブサイト開設準備中 http://www.festivin.com/
主催は「勝山晋作とその仲間たち」。大勢の方に参加いただけるよう、大規模なスペースがあるスバルビル恵比寿303で開かれます。営利目的ではないので、入場料はすべて運営費に使われます。勝山さんを中心に、HP担当の鈴木さん(サルシッチャさん)、自然派ワインがあふれるレストランの方々、それぞれアイデアを出し合いながら、6月から準備が着々と進んでいっています。参加インポーターは20社余り。幹事会社のひとつであるラシーヌも、社員全員でブースに立つ予定です。この日一日は、インポーターの枠を超えて自然派ワインの魅力を分かち合い、より多くの人たちに知っていただくために、楽しい催しの実現に向けて張り切っています。
勝山さんは1980年代にマルセル・ラピエールやグラムノンを日本に紹介された先駆者です。1993年に六本木でオープンされた「祥瑞」(しょんずい)は、日本の「自然派ワインバー」の原点といっても過言ではありません。以来、祥瑞で自然派ワインを知って、自然派ワインの熱烈なファンになっていった人は計り知れません。
私見ですが、あらためて90年代に始まった自然派ワインブームを見つめなおしてみますと、2000年代前半にピークを迎え、今はやや誤解と混乱を残しながら、静かながら堅調なファンが定着してきたように思います。造り手たちについては、この数年間に新進気鋭の造り手が登場し、有機栽培による畑の改善がよりよい効果を発揮する一方で、造り手の腕にもますます磨きがかかり、目をみはるばかりの質の向上が見られる造り手もいます。「心地よく、楽しいだけのワイン」から「堂々とした美しいワイン」の世界に入ってきた造り手が増えてきたと言えるのではないでしょうか。
他方では、名ばかりの「自然派」ワインや、商業的な「ビオ」「ビオディナミ」生産者がいたり、自然派ワインの扱い方をまだ充分に心得ない業者の方もいたりして、市場の混乱に拍車をかけているようです。一時、特に南仏でもてはやされたマセラシオン・カルボニック過多の醸造法も、ブームが終わってきたようです。もちろん、亡くなった偉大な造り手もいて、寂しい思いもありますが、今の日本にはほとんどの自然派ワインが輸入されており、優れた品質とコンディションのワインを選ぶことができる、淘汰の時代になってきたと思います。苦労と厳しい労働の結果実るブドウから、バクテリアの悪い活動との闘いから生まれる本来の自然派ワインは、造り手の魂そのものです。
私たちラシーヌも、この催しを機会に、多くの方々に造り手のメッセージをお伝えしたいと思っています。参加する人が絶対に損をしない催しです。9月15日から、チケット(入場料¥6000、2部入れ替え制)の販売がネットで始まります。 こぞってご参加いただきますよう、お願い申し上げます。