2009.10.28 合田泰子
9月から10月にかけて、各地で試飲会を催させていただきました。お忙しいなかをご出席いただきました方々には、あらためてお礼申し上げます。東京では、昨年の試飲会の反省をふまえ、10月20日、21日の2日にわたって実施いたしましたが、予想以上の参加をいただき、運営方法に多くの課題が残りました。ふだんお取引をいただいていない方々にも多く出席いただきましたが、とりわけ若い世代の方が多くご来場くださいましたので、感慨もひとしおです。おたがいに今後、長くお取引関係を続けることができますよう、せいいっぱい努力してまいりたいと思います。
今月、フランス便no.100、イタリア便no.50のコンテナが入荷します。コンテナ番号は、ラシーヌ創立以来の連番なのですが、思いがけずフランスとイタリアとも、きりのよい番号のコンテナがそろって入荷することになりました。創業当時のことを思い出すと、これまた感慨で胸がいっぱいになります。ようやく、ここまで仕入れを続けてくることができました。そこで、これまでの皆様への感謝をこめて、11月と12月はささやかな感謝フェアーをさせていただきます。お問い合わせを心よりお待ち申し上げております。
新しい造り手とも、旧いお付き合いの造り手とも、毎年、新鮮な気持ちで出会いを積み重ねてゆくことで、内容を充実させていくことができると思います。現在のポルトフォリオに至るまでの出会いと経緯には、一人一人の造り手といろんな思い出があります。特に重要な造り手とは、本当に劇的な出会いがありました。中でも、エドアルド・ヴァレンティーニ、ジャン・フランコ・ソルデラとは、最初の訪問から10数年たってからお取引いただくことができました。故人となられたエドアルド・ヴァレンティーニは今も、作品ともいうべきワインを通して、判断がぶれそうなときいつも原点にたちかえらせてくれます。昔、塚原とバートン・アンダーソン著「イタリア 味の原点を求めて、至高の食材12」(白水社刊)を訳しました。その中で、エドアルドは次のように述べています。
「自然の温度で、長く時間をかけて発酵させることが、必要不可欠なんだ。あわただしく作ったワインは、それだけ寿命も短い。(……)昨今ではステンレスなどの合成素材に頼り、人工的な環境条件を設定する生産者が多い。遠心分離機や急冷・加熱装置、窒素ガス充填貯蔵法とか。こういう一時しのぎの便法は、量産型の低価格ワインにしか向かない。この手のワインの大半は、生体診断のアナロジーでいえば、死んだワインなんだ」。生涯、ブドウ栽培家(ヴィニャイオーロ)であることを貫いたエドアルドのワインについて、著者バートン・アンダーソンは、「ヴァレンティーニのワインと、よその多くの自然主義者のワインが隔絶する点は、どこだろうか。まさに気品というか、アロマ、風味、触感(テクスチャー)のもつ品位の有無であって、非凡ともいえる美質がある。(……)時間の経過とともにかほどの奥行きと優雅さを身につけるワインは、絶えてない。」
ファイン・ワインとはどうあるべきかと、この視点で見直すと、どのように判断すべきか、私は原点にもどって考えることができるように思います。
~バレンティーニのワインにはハートがこもっている~
わたしたちは、自らに問いながら、ブルゴーニュを訪ね続けてきました。この秋、ラシーヌのポルトフォリオに、5人の造り手が加わりました。その作業を通じて、特別な方(コンサルタント)とは、やはり十数年前に出会いがありました。が、このたびようやくビジネス関係を結ばせていただくことになりました。訪問の約束の数日前、ヴァカンスに出かける彼女に偶然ボーヌからの列車の中で出会い、再び約束の前日、パリからの帰りの彼女に列車の中で会いました。「これは、運命なのかしら?」。その彼女、ベッキー・ワッサーマンについては、次号で詳しくお話したいと思います。
「タンニンはやわらかく、ミネラル風味が豊かで優雅な味わいがし、香りが長く保たれ、色合いはソフトで、鮮やかな輝きや強烈な色調とは無縁」
この表現は、「アンジェロ・トンディーニ・クァレンギ」が著書「自然と情熱の間にて」の中でジャン・フランコ・スルデラのワインについて、表現している言葉です。そのようなピノ・ノワールをお届けできるよう努力してまいりたいと思います。
合田 泰子