『ラシーヌ便り』no. 47

2009.07.27  合田泰子

《合田泰子のワイン便り》
―― 「ありがとう」 は、 ありがた迷惑 ――

 戻り梅雨のような、はっきりしないお天気が続き、各地で大雨による災害が報道されていますが、お変わりございませんか。東京では、昨日から本格的な厳しい暑さが始まりました。
 さて、今回はつい最近の出来事をご報告させていただきます。

 《アリス・エ・オリヴィエ・ド・ムールのアリゴテ》
  ご存知のように、アリス・エ・オリヴィエ・ド・ムールは、 ラシーヌのフランス篇ポートフォリオを代表する重要な造り手です。チャーミングで冗談好きのアリスと、ディドロ風の知的風貌をおびた、寡黙だけれど笑顔が素敵なオリヴィエ。本当に二人とも頭がよくて、素晴らしい人柄です。二人はボーヌの醸造学校での同級生でした。1994年から二人で、おばあさんの家の地下にある小さなセラーでワイン造りを始めました。ワイン造りにおける理想のカップルが送りだすワインは、毎年ファンを魅了し続けています。

            (オリヴィエ・ド・ムール)

 暑い夏には、アリゴテは率直で活き活きとした自然な味わいで、アペリティフに楽しんでもよいし、シンプルな魚介料理はもちろん、和食、中華に抜群の相性を発揮します。お値段は¥2,600と、お手ごろながら、基本に個性と高いクオリティがあり、決して安っぽいワインではありません。

ところで、この10数年というもの、ここの出荷は春先なのですが、私たちは毎年11月と2月の二回に分けて、先払いをしてきました。もちろん、生産量はすくないのですが、可能な限りの量を分けていただいており、これはワインが素晴らしく、大勢のファンの支持があるおかげもあります。二人はいつも、「日本のマーケットがなければ、私たちは、安心して作りたいワインを造ってくることはできなかった」と言っています。

                 (アリス・ド・ムール)

《驚愕のネーミング》
 ところで、一昨日、アリス・エ・オリヴィエから突然、「ア・リゴテ」のネーミング変更について、メールが届きました。要はまず、今年もアリゴテ2009がAOCを得ることができず、ヴァン・ド・ターブルになったとのことですが、これは毎年のように起こることなので、異とするに足りません。が、それだけでなく、誰もが楽しんでいたA Ligoter「ア・リゴテ」の名称と、ユーモアあふれるラベルもまた、使えなくなったのです。「ア・リゴテ」も 品種に近い発音であるため、許可を得られなかったからだとか。出荷も迫り、二人は「今まで私たちを支えてくださった日本の皆様への感謝をこめて」と、“A Ligato-o”『ありがとう』という名称でラベルを印刷し、7月22日に出荷したという連絡でした。びっくりした私たちは、二人の気持ちを考えるとこのネーミングの反対するのは心が痛みましたが、やむをえず次のような手紙を送りました。

《アリス&オリヴィエへの手紙》
 「日本人の支持に対する感謝の気持ち」を表現という発想には恐縮しますが、この種の言葉遊び(ダジャレ)は、あまりsophisticate されているとは思えません。また、自然派のワインのなかには、日本語で冗談まがいの名前をつけたワインが出回っていますが、まじめな愛好家からはヒンシュクをかっています。フランス語ではともかく、日本の文化では(類似した発音で連想をつなぐ)言葉遊びは、『ダジャレ』と呼ばれ、軽薄な行為とみなされているからです。あなたのワインは、楽しさや快活さと同時に、高いクオリティを備えた、品格のあるワインであると、私たちは思っています。そのようなワインに、ダジャレのネーミングはふさわしくありません。わたしたちはあなたのアイディアには賛成できませんし、これまであなたのアリゴテを支持してきた方も、賛成するとは思えません。」

《決着》
 ところで、一昨日、アリス・エ・オリヴィエから突然、「ア・リゴテ」のネーミング変更について、メールが届きました。要はまず、今年もアリゴテ2009がAOCを得ることができず、ヴァン・ド・ターブルになったとのことですが、これは毎年のように起こることなので、異とするに足りません。が、それだけでなく、誰もが楽しんでいたA Ligoter「ア・リゴテ」の名称と、ユーモアあふれるラベルもまた、使えなくなったのです。「ア・リゴテ」も 品種に近い発音であるため、許可を得られなかったからだとか。出荷も迫り、二人は「今まで私たちを支えてくださった日本の皆様への感謝をこめて」と、“A Ligato-o”『ありがとう』という名称でラベルを印刷し、7月22日に出荷したという連絡でした。びっくりした私たちは、二人の気持ちを考えるとこのネーミングの反対するのは心が痛みましたが、やむをえず次のような手紙を送りました。

(現在のラベル:“A Ligote”『ア・リゴテ』) (幻のラベル:“A Ligato-o”『ありがとう』)
                

  さて、どのような名前で到着するかは、次回のラシーヌ便りでお知らせいたしますので、どうぞお楽しみに。暑さ厳しい毎日が続きますが、どうぞお疲れがでませんようにお元気でお過ごしください。

合田 泰子

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