『ラシーヌ便り』no. 38

2008.8.28  合田泰子

 厳しい暑さもようやく峠をこえ、秋の気配が朝晩、心地よい気候になってまいりました。夏もそろそろ終わりと思うと、ホッとしますね。ラシーヌも私の頭の中も、既に秋のワインシーズンのことで一杯。今月お知らせすべきことが、山のようにありますので、目次を挙げてみました。

1.大ニュース:カーゼ・バッセ『ペガソス』IGTトスカーナ新発売

2.新着ワインのお知らせ

3.ヴィンテッジ情報~ヌーヴォー/プリムール

   1)マコネ・ボジョレ地区:8月の大雹害の状況
   2)個別状況① ドメーヌ・ド・ラ・マドーヌ 被害を免れて順調
   3)個別状況② フラール・ルージュ 過去最良の出来
   4)個別状況③ ティエリー・ピュズラ 問題ないが、ソーヴィニョンの生産量・減へ

1.大ニュース:カーゼ・バッセ『ペガソス』IGTトスカーナ新発売 [速報]

カーゼ・バッセから話題作、IGTトスカーナPegasos「ペガソス」2005が初めてリリースされます。サンジョヴェーゼ100%、7500リットルの大樽で熟成されますが、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ・リセルヴァとの違いは、大樽での熟成期間が16ヶ月短いことです。カーゼ・バッセからの新発売の連絡に対し、ラシーヌから質問したところ、文章で次のような回答を得ましたので、お知らせします。
a) ペガソスのポジショニングは、ソルデラそのものです。つまり、ペガソスはソルデラの異なった表現作であって、当ワイナリーの基本理念にしたがい、ブドウ畑とセラーのなかで、同一の価値観と自然なプロセスを守っています。ペガソス・ソルデラとブルネッロ・ソルデラとの唯一の相違点は、ペガソスは大樽での熟成期間が16ヶ月短いことです。別の言い方をすれば、ペガソスは、ブルネッロのうちでビン詰めの用意が速く整った大樽を指しております。

b) 私たちはこれまで、ロッソ・ディ・モンタルチーノという名称は、イメージに欠けるばかりか、人々から好意を得ることにも失敗した、と常々考えてきました。それだけでなく、サンジョヴェーゼは、必ずオーク製の大樽で長期の熟成をすべきであるというのが、私たちの考え方なのですが、これはロッソ・ディ・モンタルチーノの必須要件ではないのです。

c) ペガソスとインティスティエティとは、同じコンセプトのワインです。両方とも、特定のヴィンテッジ(つまり、そのヴィンテッジの、気候とブドウ畑の状況)を表現したワインであって、ソルデラ・ブルネッロと比べれば短い期間で熟成に到達したものなのです。ですから私たちは、インティスティエティと同じく天馬(翼を生やした馬)の姿をラベルに用いることに決め、インティスティエティと同じコンセプトであることを強調するためにペガソスと命名したのです。

なお、ペガソス2005の発売は2008年10月、希望小売価格は30,000円の予定です。
詳しくは、来月のご案内をお待ちください。

2.新着ワインのお知らせ~イタリアの新規取扱い生産者を中心に~

 今年度ラシーヌは、〈イタリアワインのポートフォリオのさらなる充実と再構築〉を最重要テーマとして、各地で開発を進めてまいりました。その結果、本年イタリアから7人の造り手のワインが、新たにラシーヌのリストに加わることになりましたので、その全体像をここにお知らせいたします。各生産者のワインは、実力はむろんのこと個性にあふれ、イタリア各地の秀逸な多様性を存分に楽しむことができます。秋の試飲会に出品いたしますので、ぜひご試飲ください。
《イタリアの新規取扱い生産者リスト》
【ピエモンテ】サラッコ(アスティ:5月入荷済み)
【キアンティ・クラッシコ】カーザ・フラッシ、サヴィニューラ・パオリーナ(ともに入荷済み)
カステッロ・デッラ・パネレッタ (9月末入荷)
【ヴェネト】ボルゴ・アンティコ (プロセッコ:9月末入荷)
モンテ・ダッローラ (ヴァルポリチェッラ:9月末入荷)
【オルヴィエート】バルベラーニ (9月末入荷)

 さて、8月に入荷しましたポマールのルジューヌも、おかげさまで大好評です。社内テイスティングにおきましても、スタッフ全員から笑みがこぼれました。色調は淡く、適度にタニックで、奥のほうからゆっくりと果実感が立ちのぼり、優しくて丁寧な味わいが、正統派ブルゴーニュの本来の姿を思い起こさせてくれます。ワインの価格が控えめのため、ユーロ高でブルゴーニュ・ワインの高騰のご時世に、なんとも貴重な存在です。まだお飲みになっていない方は、早めにお試しください。

3.ヴィンテッジ情報

 1)マコネ・ボジョレ地区:8月の大雹害の状況

 2007年に続き、2008年ヴィンテッジについては、残念ながら朗報はあまり届いていません。クライヴ・コーツhttp://www.clive-coates.comのニュースによれば、8月7日夜、テニスボール大の雹がマコネからボジョレにかけて襲来し、大きな被害を及ぼしたとのことです。早速、現地に問い合わせたところ、次のような報告が届きました。
 [8月7日の雹/嵐の被害の状況について]
 お尋ねの雹害の件ですが、雹の害をもっとも酷くうけた地区はサン=タムールで、80~90%のブドウが失われました。同時に葉もひどく傷めつけられたために、残ったブドウが樹から十分なエネルギーを得られないだけでなく、光合成が不十分なためにブドウが完熟しない見通しです。ジュリエナでの被害も70%に達し、ブドウの成育問題はサン=タムールと同じ状況です。シェナスは雹の影響を受けましたが、その程度は全二者にくらべればずっとマシです。嵐はヴェレゾン(ブドウ果の成熟が進み、果実と果梗が色づくこと)の開始時期を襲ったため、ブドウの収穫量だけでなく質そのものも低下しました。
 同じ雹の嵐は、マコネ地区の南部だけを襲いました。レイネ村にあるサン・ヴェランならびにその周辺と、プイィ・フュイッセの最南端に位置するシャントレ村 (プイィ・フュイッセ協同組合の本拠地があり、常時ではないがしばしばテロワールが劣りがちとなる)が、被害をこうむりました。シャントレ村は、シャルドネが色づき始めるまさにその時に害を受け、収量の30%を失いました。とはいえ、サン=タムールとジュリエナに比べれば、ブドウの収量とワインの質の点で小さな被害にとどまると思われます。 なお、シャントレ村以外のプイィ・フュイッセ地域では、フュイッセ、プイィ、ソリュトレとヴェルジッソンの各村では雹害はほとんどゼロでした。

 2)個別状況① ドメーヌ・ド・ラ・マドーヌ 被害を免れて順調

~ ドメーヌ・ド・ラ・マドーヌ ジャン・ベレール~
 私たちの ドメーヌ・ド・ラ・マドーヌは、ル・ペレオン村にあります。マドーヌは、シャントレ/サン・タムール/ジュリエナを襲った8月の雹とは別の雹に襲われました。ル・ペレオン村にあるマドーヌに害を与えた雹/嵐は、サン=タムールより早い時期に襲来しました。7月の始めに襲った雹は、ヴェレゾン(ブドウ果の成熟が進み、果実と果梗が色づくこと)が始まるずっと前の時期であったため、収穫量は10~15%減りましたが、光合成(ブドウの成熟のエネルギー源となる)に要する、葉の量と質には損害はありませんでした。
 この雹はマドーヌの畑が位置する斜面で、上部斜面の低区画部分を主として襲いましたが、ヌーヴォーのブドウはこの区画からは作られません。マドーヌのヌーヴォーは、斜面のあまり低くない区画のブドウから作られますが、この区画は雹にあまりやられなくてすみました。しかし、最終的にヌーヴォーがどの区画のブ ドウで作られるかは、ブドウの味と、発酵中のタンクの味次第で決められます。
 マドーヌ(ル・ペレオン村)を襲った嵐は、同時にレニエ/フルーリー/モルゴン/シルーブルの村々を襲いました。けれども、これらの村での被害はほとんどなかったため、この嵐は報道されませんでした。なぜなら、損害の規模は、収量の減少や質の低下というより、ほとんどグリーン・ハーヴェストで意図的に収量を下げた場合のレヴェルだったからです。
以上の報告によって事実はクリアーになり、マドーヌ・ヌーヴォー2008の質についてのお尋ねやご心配にはお答えできたことと思います。

 3)個別状況② フラール・ルージュ 過去最良の出来で、10月末出荷の見込み

~フラール・ルージュ/ジャン・フランソワ・ニックより~
 嬉しいお知らせです。 ジャン・フランソワの楽しく、軽やかなプリムールのご案内です(10月末出荷)。当初、今年の天候はルシヨンも難しそうなため、ジャン・フランソワのプリムールを見送ろうかと思っていたのですが、それを覆す朗報です。「レッド・オクトーバー」で今年のヌーヴォー・シーズンを明るくスタートしませんか。

8月21日 こんにちは。ジャン・フランソワです。 収穫は一週間前から始まりました。今朝、「オクトーブル」仕上げ用のグルナッシュを収穫しました。先日お話したように、ブドウは、健康そのもので素晴らしいです。この地域はフランス中で大雨をまぬがれた唯一の地方です。ブドウの実はまったく病気がなく、よく熟しています。質の高さについて最終的な結論を出すのに、あと10日ほど待たなくてはいけませんが、果汁のクオリティの中にすでに香りの高さが見て取れます。私は今までに調子よく「今年はすごくいい出来だ」なんて言ったことがないので、「2008ヴィンテッジは素晴らしい年だ」と言っても、私の言葉を信じられるでしょう。乞うご期待!!!

 スペインに近いこの地は、ジャンシス・ロビンソンがいうように「ワインが、フランス語よりもスペイン語を話す」ような具合で、南仏の他の地域とはまったく異なります。まさに灼熱の太陽光線がブドウを焦がし、スペインの風を実感します。低い収量から生まれるワインには、南のワインの単調さはなく、ジャン・フランソワは個性あふれる面白いワインを次々に生み出しています。ですから、ヌーヴォーも一味違います。健康なブドウだけから実現できる、ヴァン・ナチュールのピュアな味わいと、低収量のブドウだけが実現できる奥深さがあり、うまさと楽しさがあります。何杯もおかわりしたくなる飲み心地に人を誘う、とても自然な味わいをそなえています。
 赤いラベルには、黒い字で『オクトーブル』(10月)とだけ表示されています。映画のタイトルを引用するのが好きなジャン・フランソワですから、1990年映画化されたショーン・コネリー主演「レッド・オクトーバーを追え」を踏まえているのだと思います。真っ赤なラベルの「レッド」プラス「オクトーバー」だからです。みなさまにこの『オクトーバー』を追いかけていただきたい、という願いなのでしょう。

 4)個別状況③ ティエリー・ピュズラ 問題ないが、ソーヴィニョンの生産量・減へ

~ティエリー・ピュズラより~:

5月と6月は日照の少ない日が続き、6月23日にプイィ・フュメからサンセールにかけて激しい雹にみまわれ、深刻な被害がありました。トゥーレーヌ地域はソーヴィニョンが春先の遅霜のため収量が10%ほど少ないのですが、ワインの質に影響はありません。8月になって好天が続き、ピノ・ノワール、ガメ、ピノー・ドニスは、いずれも順調に育っています。

 ソーヴィニョンの収穫量が少ないため、今年のソーヴィニョンのヌーヴォーは、数に限りがあります。予約をお急ぎいただくよう、お勧めします。

 まだまだ残暑が厳しい毎日ですが、十分に休養をとって秋に向けてエネルギーをためたいと思っています。皆様もどうぞお疲れが出ませんように。

合田 泰子

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