『ラシーヌ便り』no. 35

2008.6.3  合田泰子

《合田泰子のワイン便り》

 ミャンマーのサイクロン禍に続き、四川省での大地震と厳しい災害が続きました。被災者の方々の苦しみ、悲しみ、絶望を思うと、本当に心が痛みます。亡くなられた方々の冥福をお祈りするとともに、一日も早い救助活動と公平な援助活動がなされることを、願ってやみません。ミャンマーに支援をしようとしても、今の状況では、支援物資が被災者に届く保証がありません。確かに届く情報をご存知の方は是非教えてください。日々困難なく過ごすことができることの幸せを、深く考える毎日です。

さて、今月のコンテンツは少し欲張っていますが、次のとおりです。
1) 5月の催しを終わって
2) カーゼバッセ社 ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ・リゼルヴァ・ソルデラ2001を味わって
3) あらためて、ワインのコンディションについて
4) 新着入荷

1) 5月の催しを終わって

 5月21日福岡で、2年ぶりにクライアント様向けの試飲会を開きました。多くの方にご出席いただきありがとうございました。酒販店の方々のお話では、自然派のワインについては、年々ワインがきれいに落ち着いてきていることと、レストランの方々の関心が高くなり、和洋のジャンルと無関係に問い合わせが増えてきているということでした。福岡の活気あふれる美味なレストランで、たくさんの方がワインを楽しんでいただいていることを実感して帰ってきました。大阪では、5月31日にラシーヌとしては初めての試みで、消費者の方々を対象とした、試飲会をいたします。消費者の方に、ラシーヌの全体像を知っていただき、楽しんでいただくための、ささやかな「お客様感謝デー」です。東京でも年内に行う予定です。追ってホームページで詳細をご案内させていただきますので、ふるってご参加ください。

2) カーゼ・バッセ社 ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ・リゼルヴァ・ソルデラ 2001を味わって

 ご承知のように先月、ソルデラ2001が入荷いたしました。到着直後であるにもかかわらず素晴らしいコンディションで、一同感動しました。カーゼ・バッセでは、1999年から2000年にかけて、新しいセラーが順次完成していきました。このセラーは、鉄の網にくるまれた石の壁が支える、古代ロマネスクのカテドラルを思わせるような環境で、5年分のヴィンテッジで満たされた大樽が並んでいます。ジャンフランコの工学的な革新と伝統への愛情が体現された理想そのものというセラーです。
 現地でご本人にお伝えしたのですが、2001年は以前のヴィンテッジと比べ、若いうちから近づきやすくなり、調和と優雅さに充ち、洗練された味わいがある、と感じました。その理由は「セラーと環境を通じて、あなたが追求してきたエコシステムの成果ではないか?」と尋ねましたら、次ぎのような答えをいただきました。
[答え]
 私は同じ方法に従い、同じルールを尊重しながら、ワインを造ってきました。たしかに、次のような理由で、ワインは毎年、特有の個性を身につけるにいたります。

・気候の相違

・ブドウの樹齢(古い樹から、より良いワインが生まれる)

・毎年毎年、私は前進をしている

・土壌からビン詰めにいたる生産プロセスのあらゆる局面において、私の知識が増え続けている。

・イタリアでもっとも優れた大学いくつかとの共同プロジェクトから学び、新しく異なった観点と知識を得ることが出来た(フィレンツェ大学のヴィンチェンツィーニ教授には、システマティックで定期的な化学的&微生物学的な分析を依頼。ピアチェンツァ・カトリック大学では、フレーゴニ教授とブドウの樹のウォーター・ストレスに関する共同研究をおこない、スリコ教授はブドウの樹の病理学を研究)。

 5月に入荷しましたワインは、完売いたしました。ありがとうございました。7月に少量ですが再入荷いたします。

3) あらためて、ワインのコンディションについて

 今さら、お話することではありませんが、ソルデラ2001を味わって、あらためてワインのコンディションについて感じたことをお話したいと思います。ソルデラ・リゼルヴァ2001にあわせて、同じく蔵出しでテイスティング用に分けていただいた1994,1998, 1999とともに、以前から個人的に所有していました1995を、同時に垂直試飲しました。
 1995は2002年にイタリアの知り合いから分けてもらったもので、2003年11月から寺田倉庫で保管していました。5つのヴィンテッジの垂直試飲で各3本をあけましたが、1995だけが明らかにコンディションが劣り、私たちは驚いてしまいました。ソルデラのワインは元来、強さを秘めた、しなやかで繊細優美な味わいです。一般のブルネッロ・ディ・モンタルチーノの力強いイメージとはまったく異なったスタイルです。が、4点の蔵出しワインとは違って、1995には、熱劣化したピノ・ノワールにみられる、「鰹節風味」が香りの奥に感じられました。イタリアで知りあいのさる生産者のセラーで管理されていたとはいえ、蔵を出てからリーファー輸送されるまでの期間、イタリア国内における温度変化によって、デリケートな味わいとバランスがこれほどまでに影響を受けるのかと、深刻に考えさせられました。もし、垂直試飲でなく、1995だけを飲んでいたら、明確にその差を感じなかったかもしれません。
 並行輸入のジェローム・プレヴォーやミアーニなどをネット販売で見るたびに、残念な気持ちになります。数の限られたワインですから仕方ないかもしれませんが、並行で輸入された出所不明のワインが、単に「売りやすい人気商品」として、「本来の姿から劣った状態」で流通することは、造り手にとっても消費者にとっても不幸なことです。私たちは、ダメッジを受けたワインの価値はゼロだと考えています。せめて、弊社がご紹介するワインについては、コンディションにいっそうの注意を傾けて、お届けしたいとあらためて思いました。

4) 新着ワイン

 ジョゼ・ミシェル、リシャール・シュルラン、ドメーヌ・レキュ、スペインのパナロスなど、弊社の定番アイテムが長く品切れしていまして、ご迷惑をおかけしました。シャンパーニュにつきましては、現地で年間(4月から3月)に出荷できる数が決まっているため、比較的に数量があったはずのジョゼ・ミシェルとシュルランも、年度末には品切れしてしまいました。5月から6月にかけてコンテナが6本入荷しています。デセンディエンテス・ディ・ホセ・パラシオスの新ヴィンテッジもようやく到着しました。新着案内を注意してご覧いただくよう、お勧めします。なかでも特に注目していただきたいのは、新しくラシーヌのポルトフォリオに加わった、パオロ・サラッコとダルヴィオ・ペラン2005です。
 3月にご案内しましたように、サラッコの当主パオロ・サラッコ(44歳)は、モスカート・ダスティの名手として熱狂的に愛され、格別な扱いを受けている造り手です。一言でいえば、「センスが良い」味わい、幸せになる飲みものです。土曜日の昼下がりなどに単独で優雅にグラスを傾けたり、デザートの友またはデザート代わりに味わうというやり方が、私のお勧めです。ティータイムのしゃれた飲み物や、アペリティフとしても、おおいに楽しめますし、桃やイチゴなどのフルーツとの相性も抜群です。
 ダルヴィオ・ペランのシャサーニュ・モンラシェ・ルージュ レ・シャンブル2005は、まず味わってみてください。2005年という特別なヴィンテッジという理由だけでなく、なぜ、素晴らしい仕上がりになったのか、秘密があります。後ほど営業におたずねください。皆さんのご意見を楽しみにお待ちしています。
 梅雨に向かいます。百日咳がはやっているようですが、どうぞ皆様お元気でお過ごしください。

合田 泰子

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