『ラシーヌ便り』no. 34

2008.5.1  合田泰子

《合田泰子のワイン便り》

 4月2日から15日まで、ヴィニタリーの開催時期にあわせて、主としてトスカーナを訪ねてまいりました。いつ訪れてもイタリアでは、ワインも食べ物も熱気あふれるおいしさに魅了されてしまいます。地元の人々に愛されるトラットリーアから、シェフの才能あふれる驚くべき料理が登場する田舎のリストランテまで、クラスが異なっても上手なお店はいずれも、新鮮かつ最上の素材を選びぬき、香りが深くて力強い料理を堪能させてくれます。そのため帰国後は、イタリア熱にうかされるような日々が続くのですが、今回もまたこの熱病は当分治まりそうにありません。

 というわけで(?)、ラシーヌの今年のテーマは「イタリア」です。現在は下記の各州で造り手をご紹介させていただいていますが、イタリアワインのセレクションの充実と、プロモーションにより力を入れたいと準備を進めてきました。
 現在のポルトフォリオを地域別の生産者数で見ると―
ピエモンテ(カッペッラーノ、アルターレ、トリンケーロなど7社)、フリウリ=ヴェネツィア・ジューリア(ミアーニなど3社)、アルト・アーディジェ(2社)、ロンバルディーア(1社)、トスカーナ(カーゼ・バッセ、チャッチ・ピッコローミニなど5社)、アブルッツォ(1社)、マルケ(2社)、ラツィオ(1社)、カンパーニャ(1社)、シチリア(2社)。なお、隣接するスロヴェニアでは2社です。
 ラシーヌのイタリアワイン・セレクションの方針は、「個性と魅力にあふれ、イタリアらしい気迫と創造力にとむワインを選ぶこと」です。その原点にもどり、ピエモンテに劣らず、トスカーナのいっそうの充実を中心として、現在ポルトフォリオの組みなおしをしていますが、途中経過をお知らせします。
 まず、5月より次の地域で、新しい造り手が加わる予定です。
ピエモンテ州:モスカート・ダスティ《パオロ・サラッコ》ほか1社
ヴェネト州:ヴァルポリチェッラ《モンテ・ダロラ》ほか1社
トスカーナ州:キアンティ・クラッシコ(新たに複数社)

キアンティ・キアンティ・キアンティ

 極上のキアンティ・クラッシコがどれほど素晴らしいか、あらためて言うまでもありません。ひところ騒がれた多くのスーパー・タスカンも、風土の特徴に根ざしたキアンティ・クラシコの健全な発展ぶりに比べて、近年はやや劣勢の観が否めないようです。
 栽培地区/畑の向きや日照/併用品種の割合などの違いにより、クラッシコのゾーンでは様々な表情があらわれます。個人的な好みでいえば、優雅にあふれる気品に満ちた昔のモンテヴェルティーネ、驚異的な骨格とフィネスを備えた長熟型のサン・ジュスト・ア・レンテナーノ、芳醇で温かな優しさ、豊かなブケにあふれるイル・パラッツィーノ、キアンティ・ゾーン北限のルーフィナ地区から生まれる、熟成とともに細身ながら、洗練されたしなやかな味わいに成長をみせたかつてのセルヴァピアーナが、私のお気に入りです。
 「生産者の世代が変わればワインも変わるのは、どこの地域でも同じ。ならば、私たちの知らない名手がいる可能性も常にある」というわけで、新たな造り手を求めて、この2ヶ月ばかりキアンティ・クラッシコ三昧という毎日でした。選んだ複数の造り手はいずれも、サンジョヴェーゼ100%または、マルヴァジーア、コロリーノ、カナイオーロを混醸してつくるクラシックなスタイルです。優美でピノ・ノワールのようなかぐわしさを放つワインもあれば、サンジョヴェーゼの非凡な深さを体現する堂々とした味わいの長熟なスタイルをもつもの、親しみやすくてハーモニーが美しく、優雅なスタイルのワイン、とサンジョヴェーゼのもつ非凡で、変幻自在な可能性を楽しませてくれます。7月にはご案内できますので、どうぞお待ちください。

 また、8月より、月に一度、ラシーヌのイタリアン・セレクションをより深く知っていただくための「ワーク・ショップ」(レストランで働く方を対象とさせていただきます)を始める予定で、詳細は追ってご案内申し上げます。特にイタリアワインの勉強を始めたばかりの若い世代の方々のご参加を歓迎いたします。

合田 泰子

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