『ラシーヌ便り』no. 25

2007.8  合田泰子

 ようやく梅雨が明けました。と同時に、本格的な暑さが到来しはじめましたが、お変わりありませんか。

ティエリー・ピュズラ来日試飲会
 7月下旬にティエリー・ピュズラが再び来日し、おかげさまで盛況のうちに試飲会を終えることができました。ご出席いただきました方々、ご協力いただきました酒販店の皆様には、心よりお礼を申しあげます。

 来日中ティエリーは、さまざまなインタビューやご質問をいただきました。興味深い発言をご紹介します。

ティエリー語録より
「僕は、ピエール・オヴェルノワの次の言葉が好きだ。土地(畑)は、親が残してくれたものでない。次の世代、子孫から借りているのだ。だから、健全な畑を未来に残す責任がぼくらにある。」

 「ヴァン・ナチュールの作り手でお金持ちの人は誰もいない。手間がかかって、高く売れるわけでもない。造りたいという強い情熱だけが、ワイン造りを続けていく原動力なんだ。」

 「10年ほど前は20人ほどだったヴァン・ナチュールの作り手が、今では200人を超えている。それぞれは相変わらず少ない生産量だけど、ヴァン・ナチュール全体の生産量は増えている。フランスでは、ヴァン・ナチュールのブームは終わった。もやはブームではなく定着したんだ。今の勢いや流れは、変わらない」

 「決して大きな生産者になって、何十万本ものワインを売りたいなんて思わない。ワイン造りはある意味で孤独な仕事だけれど、ネゴシアン・ピュズラでは、ブドウを栽培している人たちと信頼関係を築くという点で、学ぶことがたくさんある。本当に僕の村の周りには素晴らしいテロワールの畑があって、いい栽培をしている人たちもいるのに、そのブドウが大手メーカーに売られ、その価値にふさわしい醸造がされていない。いろいろなキュヴェを一度に造るというのは、何十もの鍋で一度に料理をするようなものだ。大変だけれど、このブドウでワインを造りたいというエモーションがわきあがってくるから、いくつものワインを造りたいと思うんだ。」

 「本当にすごいワインを造ろうと思ったら、人生が二度、三度いるだろう。一年に一度しかない醸造のチャンスで、一度しかない人生だから、いつも真剣だ。いいワインができたとき、自分の経験の足りなさ、まだ何も知らないと新しいことに気づく。そしてもっともっといいワインを造ろうと思う。」

 「ヴァン・ナチュールを造ることはリスクがある。だけど僕はリスクが好きだ。タンクに入れ、コンピューター制御にまかせ、セットしたらベッドに行って眠るなんて、考えただけでもごめんだ。」

 リスクを恐れず、ぎりぎりのところで判断してワインを造るからこそ、ティエリーのワインにはいつもみずみずしい感覚と緊張感がある味わいが生まれるのだと思います。 また、初めの数ヶ月は不安定でも、熟成とともに見事に美しいハーモニーの中にまとまっていき、待っていれば必ず応えてくれるティエリーのワインの面白さが、ティエリーその人のようにファンの心をとらえて離さないのだと思います。これからもますます素敵なワインを造り続けると信じています。

新着便
先月末に通関がきれた、重要なワインが入荷しています。
イタリア便:ベナンティ、ボルゴ・デル・ティリオ
フランス便:ドメーヌ・デュ・ムーラン、シュレール、レオン・バラル
スペイン便:パラシオス、アタウタ 
ラングドックの新規取り扱いペシゴも是非おすすめです。昨日オフィスでテイスティングしましたが、到着直後ですが、マクマホンのムルソー・レ・メ・シャヴォー2003は、クラシックな厚みのある味わいとヴァン・ナチュールの美しい飲み心地がとけこみ、この秋が楽しみです。

9月には、お待ちかねのアリス・エ・オリヴィエ・ド・ムールのア・リゴテ2006が届きます。
どうぞご期待ください。

合田 泰子

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