『ラシーヌ便り』no. 83

2012.09  合田泰子

 

  

《合田泰子のワイン便り》

 

Ⅰ.近況など…
1.シルヴァン・ソーのヴァン・プリムール、世界初登場
今月から、ヨーロッパ出張を再開です。ロワールを訪ね、パリ経由でラングドック・ルシヨンへ。9月中旬には、初めて入荷するシルヴァン・ソー初のヴァン・プリムールの最新情報をお伝えできると思います。ワイン名は、“Tout beau tout neuf ! ” まっさらの洋服を来て「こんにちは」とやってきた孫に、おばあちゃんが「まあまあ、新しいおべべ、とっても素敵ね」といったニュアンスの言葉だそうです。日本語訳では、べべ(フランス語の「赤ちゃん」と日本語の「着物」)の二重の意味に引っ掛け、戯れに「可愛いベベ」としました。

 

2.ラシーヌのドイツワイン、いよいよ全貌があきらかに
さて、オーストリアワインとドイツワインについては、コンテナ第二弾がすでに到着し、大きな反響をいただいています。「中欧ワイン・シリーズ」第3弾のコンテナでは、いよいよお待ちかね、ドイツの本命が9月に到着し、ほぼ全容が明らかになります。ファン・フォルクセン、エヴァ・フリッケ、ダニエル・フォレンヴァイダー、ロレンツとクレメンス・ブッシュ2011といった面々です。そして、ザールの若獅子アダムは、一便遅れて10月中旬の入荷です。 また、オーストリアからの第3便も到着します。5月に東京、大阪で催しましたお披露目会で、「新たな世界が開けた」と、大勢の方々から絶賛いただいた実力派ぞろいです。

 

3.クレメンス・ブッシュの進展
すっかりお馴染のクレメンス・ブッシュ。第一便のリースリング・トロッケン2010は、瞬時になくなってしまいました。2011年、ドイツは天候に恵まれ、素晴らしく健康なブドウが収穫でき、この十年間で最上の作柄でした。今回入荷するリースリング・トロッケン2011は、澱引き直後のSO2添加は従来どおりですが、4月の訪問時にテイスティングして話し合った結果、SO2を加えないでビン詰めをすることを快諾してくれました。2月に来日したおり、ラシーヌのオフィスで、また都内のワインバーで、「日本のヴァン・ナチュールの質の高さと、隆盛に眼を見張った、こんなマーケットがあるなら、喜んで条件が許せば、ヴァン・ナチュールのキュヴェを私も作りたい」と語ってくれたクレメンス。なかでも、クルトワのラシーヌ2004は彼にとって未経験の深い感動をもたらしたようです。 どんな仕上がりで、到着するか今から待ち遠しいです。 

 

Ⅱ.ファン・フォルクセン、初来日へ
モーゼル最上の畑の古樹から、テロワールを反映した偉大な辛口ワイン
ザールの騎士、ファン・フォロクセンのローマン・ニエヴォドニツァンスキー が来日します。

  • 主な来日日程: 10月5日・京都セミナー、10月9日・東京セミナー

 

昨年、第2回モーゼル探訪時に訪問した
「ファン・フォルクセン醸造所」。パリからリュクセンブルグへ出て、車でモーゼルまで1時間足らず。ヴィルティンゲン村の教会前に建つ元イエズス会の修道院が、醸造所です。一階の居間に通され、オーナーを待つこと半時、壁に飾られた古いヴィンテッジの銘酒や、世界中のコレクターアイテムの高額なワインの数々の空き瓶を見て、時間を過ごしました。オーナーは40代前半と聞いていましたが、現れたローマン・ニエヴォドニツァンスキーは、若々しく、金髪の長髪を後ろで結び、待たせたことを詫びながら、急いで帰ってきたことを全身で表しながら部屋に入ってきました。まあ、なんと背が高く、早口で話す人だろうと思ったのが第一印象。ザールのワインがどれほど優れた産地で、素晴らしい畑が今も残されているか、かつてはボルドーの五大シャトーよりも高額で流通していたこと、戦前は、トロッケンかベーレン・アウスレーゼ、またはアイスワインが造られていて、その他のカテゴリーは、戦後になって造られるようになったことなどを一気に説明しました。鋭い眼差しで、相手をまっすぐ見据え、ていねいに自分の考えを伝えるローマン。時間は、あっというまに過ぎました。

 9月に、A.J. アダム、クレメンス・ブッシュ、ほか5軒の造り手を訪問していましたので、ドイツワインに対する今までの経験や知識が全く役に立たないことは承知していましたが、目の前にあらわれたワインは、「高貴なリースリング」そのものでした。偉大なテロワール、誠実で自然な栽培と醸造、そして確かなワイン造りの腕がそろって初めて実現される味わいです。冷涼な地で、弱く長い日差しのもとゆっくりと熟成したリースリングから生れる味わい、とりわけ自根ブドウから造られるワインからは、気高く荘厳な世界が広がり、感動で満たされました。

 

 

 

 ファン・フォルクセン醸造所は、モーゼル上流ザール地域のヴィルティンゲン村にあります。所有する畑のほとんどが重要なグラン・クリュで、シャルツホーフベルク、その西隣の斜面にブラウンフェルス、ミリヒベルグ、ゴッテスフース(アルテ・レーベン)といったザール地方最上の、古樹が植わる畑を所有しています。トリアー大学でワインのマーケティングを研究していたローマン・ニエヴォドニツァンスキーが、ワインを造ることを決意し、ファン・フォルクセン醸造所を購入したのは1999年。母は、ドイツ最大のビール・コンツェルンであるビットブルガーの創業者の娘で、父はそのビール会社の重役。ローマンは豊富な資金力のもとに設備投資をおこない、名声を失墜していた醸造所を建て直しました。ゲルノート・コルマン(醸造家)と手をくみ、2000年のファースト・ヴィンテッジで高い評価を得、2007年にVDP加盟を認められ、またたくまにモーゼル最上の評価を得ています。 ゆるぎない信念と理想を実現するために妥協せず、この数十年に定着したワイン造りの常識と決別し、保守的な地元の同業たちの意見をものともせず、100年前のザールの栄光の再現に向け突き進んでいるように思えます。



初入荷ですが、2010年ヴィンテッジは現地で昨年春に
完売のため、2011年ヴィンテッジが入荷します。9月はシーファー・リースリング、ザール・リースリング、ヴィルティンガー・ブラウンフェルス・リースリングのスタンダード3種類がリリースです。他のグラン・クリュ6種類(Scharzhofberger、Goldberg、Volz Riesling、Scharzfohberger Pergentsknopp、Altenberg Alte Reben、Gottesfub)は、秋にビン詰めのため、入荷は12月の予定です。

 

 ローマンは、初めての来日を大変楽しみにしています。
10月5日京都、10月9日東京でセミナーをいたします。
セミナーではバックヴィンテッジを用意いたします。
是非ご参加ください。尚、新生ファン・フォルクセン醸造所の
誕生と、ワイナリーの詳細については、北嶋裕さんのモーゼル便り(2003年9月と10月の記事)をご参照ください。

 

2003年9月:http://homepage3.nifty.com/mosel2002/page006.html
2003年10月:http://homepage3.nifty.com/mosel2002/page032.html

合田 泰子

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