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社員リレー・エッセイ 11 尾崎 那美子(営業部)

「思い出の味」

いつも優しくしっかり者、頼りになる徳茂さんからこのリレー・エッセイのバトンを貰いました。ラシーヌ営業部の尾崎那美子です。『4週間で達成できる開脚』の本を実践してかれこれ3ヵ月目になります。成果は秘密です。
 もう2月直前で寒さも少し落ち着いてきましたが、冬の季節になるといつも懐かしく思う風景があります。真っ白に積もった雪景色です。高い建物はなく、一軒家が立ち並びその家々から車、道路、一面が真っ白。そこは広大な森を開拓した土地ならではの大きな木々が家の庭先に堂々と並び、その雪景色の美しさをさらに圧巻たるものに見せます。そこは日本ではなくカナダの広大な雪景色です。私の思い出の地はカナダ、ケベック州モントリオールという町です。今回はその町について話したいと思います。
 ラシーヌ入社前に1年ほど滞在しておりました。移民の国カナダでもモントリオールという町は少し違います。ご存知の方も多いと思いますが、モントリオールが位置するケベック州の公用語はフランス語です。ケベック州の人たちは、基本的にフランス語。若い世代の人は英語も話すのですが、フランス語しか話せない人は珍しくありません。ただケベック州の最大都市であるモントリオールという町は、英語とフランス語が入り混じった不思議な街です。町を歩いていると、フランス語やら英語やらが飛び交います。お店に入ると、「Hi, Bonjour!!」、もはや英語とフランス語を混ぜた挨拶言葉になっています。
 言語だけではなく、街並みも2面性を持っています。イギリス領になる前のフランス領土であった、その時代を感じる街並みも残っており、石造りの住宅、数多くの教会、特に歴史的建造物が残る場所をVieux- Montreal (古いモントリオール)と呼び、石畳の道が続くそこは、私のお気に入りの散策コースでした。彼らが話すフランス語も、「私たちは古いフランス語使っている」と言い、時には「私たちのフランス語はフランス人に伝わらないの」と冗談げに言います。例えば「week-end」や「parking」フランス人はそのまま英単語を使うが、彼らはフランス語で「la fin de semaine」「arret」。そんな会話から、彼らには少しフランスへの憧れ、またはコンプレックスがあるのかと思えば、フランス文化が大好きで、フランス旅行も大人気です。カナダに渡り移った歴史的背景を持ち、その自分たちのルーツと密接に関わりのある文化を特別に感じ、守ろうとする意識がとても高いのだろうと、会話の中で感じました。
 そんなカナダ生活で、思い出の味が私にはあります。ですが、最初に正直に言います。モントリオールの郷土料理というものは、これといってあげられるものはありません。カナダと言えばメープルシロップですね。でもそれを主役にした名物料理はなく、パンケーキやクレープに合わせて普通においしくいただきます。他にあげられるとしたら、プディンと呼ばれるものがあります。フライドポテトにグレービーソースと粒状のチーズをかけた、カロリーたっぷりのファーストフードです。日本で見つけたら必ず食べますが、それを他の人にお勧めし強要するかというと・・・といったところです。
 私にとって思い出の味は、滞在中ずっとお世話になったカナダ人夫婦と食べた料理です。その夫婦は友人を介して紹介してもらったので、本当の家族のように接してもらいました。お菓子製菓会社で出会って結婚した、そんな二人はデザートが大好きです。お母さんは料理好きというよりお菓子作りが大好きでした。彼女はレシピ本に忠実に従い、夕飯の支度でも材料の分量は絶対で、大雑把な私と違い、細かく一つ一つの分量を計る姿がかわいらしく、ほほえましかったのを覚えています。数あるデザートレシピの中で私が最も好きだったのは、旦那さんの好物と同じ「ブルーベリータルト」です。前日に生地を作って寝かせ、翌日に焼くという2日がかりの行程。しかもタルト8枚。一般家庭のしかも二人暮らしの家では驚く量だと思います。私がいなかったとしてもそのくらい焼くそうです。本当にシンプルなレシピで、タルト生地の上に、ブルーベリーを乗せて砂糖をまぶして焼くだけ。食べるときに少し温めブルーベリーのソースが滴るところにバニラアイスを添えるのが、私の定番の食べ方です。帰国してしばらくたった今、必ず同じレシピで作りたいと思っているのですが、昨年はブルーベリーの量が足りずコンフィチュールを作るにとどまりました。今年こそはタルトを作ろうと思います。
 もう一つの思い出の味は、私がその二人の家にやってきて初めて共にする夕食や、1年過ごした思い出の話をしながら名残惜しく、いつまでも食べ続けた最後の夕食、そんなちょっと特別な時に食べたのが、スイス料理の「フォンデュ・シノワーズ」でした。カナダでもスイス料理が一般家庭でも愛されているようです。日本でいうしゃぶしゃぶのように、お肉を細いフォークに巻いて、小鍋で煮立たせたブイヨンまたはコンソメスープにくぐらせ、好みのソースを付けて食べます。シノワーズ(中華)と言われる料理だけあって日本人にとっても馴染みのあるアジアンテイストになっています。おそらく楽しく食卓を囲む日本の鍋というところでしょうか?その特別な場面場面で口にしたものが、楽しかった記憶と一緒にとても印象に残っています。
 滞在中に二人と一緒に食べた思い出の味の数々、正直に言うと健康的ではないものもありますが、ときどき無性に食べたくなります。例えば昼食にクレープを作ったり、手作りハンバーガーをやってみたり、簡単なものですが気づいたら作るようになっていました。メープルシロップも常備します。どちらかと言うと私の食に対する興味は、より自然の恵みから生まれる、そのままの新鮮な食材の素晴らしさにあって、時にはそれを生かして絶妙な味わいを作り上げる職人の技とでもいうべき作品の数々に感動することが多いです。今では、ときどきカナダの思い出の味わいを好む自分に気づき、この経験を大切にしていこうと思います。
 このへんで、ワインに関連した話も少しさせて下さい。カナダの輸入酒類は酒類管理委員会(LCB)という機関が一元管理しています。ケベック州においてはSAQ(Société des Alcools du Québec)という会社がそのLCBにあたります。実際お酒を買える酒屋と言えば、SAQ店舗のみ。どのお店も取り扱うワインの銘柄は似たようなものです。私が働いていた日本食レストランの日本人シェフが言っていました。「扱いたい日本酒があっても、輸入が絡むとまずはSAQを通さないといけない。融通が利かないんだ」と。輸入システムのルールや法律に縛られている状況があり、日本の市場との違いを改めて感じました。国によってさまざまなのでしょう。私たちは好きなものを輸入することができ、世界から見てもワインの銘柄は、国問わず覚えきれないほど多種にわたり存在します。またその動きも激しく、若手生産者が造る新しいものから、歴史的に長く存在するものまであります。そのような恵まれた環境下で、しかもワインという自分の好きなものを扱い、日本の市場に紹介していくという仕事に携わっていることに改めて喜びを感じます。
 海外での生活モントリオールの思い出の地や思い出の味についての経験談を話しましたが、逆に日本の文化、日本の郷土料理を誰かに伝える、家の味を代々伝えていくなど、も大事だと思っています。滞在していた期間は、一緒に巻き寿司や日本料理を作り紹介することもしましたが、振り返ると彼らにしてもらったことの方が多いと思います。今となっては、モントリオールは遠く、日々の忙しさを言い訳に少し疎遠になってしまっていると感じる自分がいます。お世話になった人たちに、改めて感謝の気持ちと彼らのお陰で今があるということ、時には私の近況を伝えていこうと思います。昨年のクリスマスに、お世話になったホストファミリーの二人には日本の扇子をプレゼントしました。今年は何にしようか、まだ少し先の話ですが、あれこれ考えているこのごろです。

 次は、こんな妹がいたら溺愛です。フレッシュな馬場タイムさんにこのリレーを渡したいと思います。

「-25℃のある日 Greenfield Park,Quebec」

 

 

 

 

 

 


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