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社員リレー・エッセイ ⑥北澤 陽平 (業務管理部・営業部)

「ワインと私について」

 安西さんからバトンを受け取った、北澤陽平です。今年1月に入社しました。現在の業務内容は主に、営業(ホヤホヤです)と、在宅勤務されている安西さんの営業サポートです。現在24歳。人生経験もみなさまにお話しできることも少ないので、なぜ私が今ここにいるのかをお話ししたいと思います。

 私は昨年まで山梨におり、大学では醸造の勉強をしていました。お酒を飲み始めのころは、ワインは少し苦手でした。ワインはいつも冷蔵庫から出したての冷えた状態で飲んでいたので、赤ワインも白ワインも酸っぱくてキンキンするものがワインなのだと思っていました。100均のワイングラスに注がれた紙パックのワインが不味すぎて、どうしようもないくらい結露していたのは、忘れられない思い出です。

 いつのまにかワインを好きになったのは、友人のおかげです。酒好きの集まりを勉強会と称し、お金を出し合ってワインをたくさん飲みました。第一回の勉強会はいまでも覚えています。雨のなか取りに行った半額ピザを片手の、シャルドネ勉強会でした。4人だったのでなんとなくワインは4本、もちろんただの宴会になりました。週一回の開催で会場は友人宅、会費は先輩後輩にかかわらず1人3000円。なので、人数によって飲めるワインの値段が上下します。幹事のセレクトでテーマが変わり、高いワイン1本とスーパーのワイン2本だけの会もありました。

 季節や体調、味に関わらずワインを毎週飲んでいたら、いつの間にか日常にワインがあるようになりました。なんとなくですが、卒業後はワインにかかわることができる仕事っていいな、と考えていました。ワインにかかわるには、つくる、飲む、提供する、いろんな道があると思います。私は理系の学科でしたので、発酵メカニズムや品質管理を主に学びました。その点では他の人たちよりも、つくり手になる道が開けているように感じました。

 大学卒業後は、山梨の小山田幸紀氏のドメーヌ・オヤマダで研修をしました。学生のころからお世話になっていた方で、ワインの成分の発生経路などの科学的なことに詳しい、ワインのプロフェッショナルです。農業とワインづくりに思想と哲学を持って取り組み、自社畑のブドウのみで醸造する、とても素晴らしいドメーヌです。そこで、ワインがつくられる一年間を知るために畑に通い、学びました。一年とは、ブドウにとってはどの仕事も一回分の経験でしかなく、とても短い期間です。ワインは一年に一回しか仕込むことができません。しかしその一回で学ぶことはとても多く、次の一回のために準備をしなければいけません。

 春から夏にかけて生育の著しい時期に、同じ畑に一週間後に行くと、新梢が伸びて全く別の畑になっていたり、雨の降った後の畑に行くとブドウが膨らんでいたりと、同じ時間は二度とありません。山梨は、気温が高い時には40度近くまで上がります。一日に水を5リットル近く飲むときもあり、人間にとっては常に過酷な状況でした。山梨はまた湿度も高く、ブドウは病気になりやすいのですが、ボルドー液の散布や笠かけで対策できています。作業量はその分多くなりますが、その分だけブドウは健全に生育します。ワインづくりのほとんどは農業であると、つくづく実感しました。

 今の私にとって、ワインを知ることは自分を知ることであると思っています。飲むことも売ることも新しい発見ばかりです。どこでどのようにつくられて、どうやって飲めばおいしいのか――それを知ることが今の私に必要な経験として蓄積されていきます。

 ワインを飲んでいると、ものすごい感動に出会うことがあります。その数だけそこに技術と経験と歴史があり、それをいつ、どこで、誰かと飲む機会を与えるお手伝いをするのがインポーターの仕事であると思い、今は一年間の契約でラシーヌにいます。ワインを大勢でわいわい飲むのは楽しいですが、一杯目は一人で向き合う時間を少しでも取って飲むことが、一番楽しいと思う飲み方だと思います。

 今年から東京で一人暮らしにはいりましたが、家賃は山梨にいたころの1.5倍、広さは0.7倍です。太陽や風、空気、水など、自然の恩恵を十分に受けることのできないこの劣悪な環境は、私の体を蝕みます。東京で暮らすことを少し夢見ていたので、いろいろと難儀することはありますが、そのマイナスを補えるほどの幸せがこの都市のどこかにあると思いつつ、ワインをみなさまにお届けしたいと思っているこのごろです。

 

 次回は期待の新入社員、仕入部の高橋雄輝くんにお願いします。


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